アート

図書館で偶然見つかった楽譜から多声音楽・ポリフォニーの起源が明らかに

By pjbishop93

誰しもが親しんでいる音楽を構成する3つの重要な要素は、「旋律(メロディ)」「拍子(リズム)」「和音(ハーモニー)」の3つであるとされています。このうち、複数の旋律が1つの音楽を作り上げる多声音楽(ポリフォニー)は9世紀ごろに始まった比較的新しいものとされていたのですが、イギリス・大英図書館で偶然見つかった資料からは従来の説よりも100年以上前からポリフォニーが使われ始めていたことが浮き彫りになってきました。

Chance discovery casts new light on origins of polyphonic music | Music | The Guardian
http://www.theguardian.com/music/2014/dec/17/polyphonic-music-fragment-origins-rewritten

Discovered: 1,000-Year-Old Manuscript Is The Earliest Known Piece Of Polyphonic Music - Dedicated To Boniface, Patron Saint Of Germany - MessageToEagle.com
http://www.messagetoeagle.com/polyphonicmusicmanuscript.php#.VJRiQsDs

ポリフォニーの歴史については諸説あり、世界の各地で発生していたために不明な点も多いとされているのですが、現存している最古の資料としては西暦1000年前後にイギリス・ウィンチェスター大聖堂のために書かれた2声音楽の楽曲集「Winchester Troper」が最古のものとされてきました。

そんな中、従来よりも古い資料を発見したのは、アメリカのセント・ジョンズ・カレッジの大学院生で大英図書館のインターン生として勤務しているジョヴァンニ・ヴァレッリさん。ヴァレッリさんは古い時代の記譜法を研究する専門家なのですが、ある日、大英図書館に所蔵されている西暦900年前後に書かれた聖者の肖像を描いた写本を目にした時に、ページ下部に楽譜が書かれていることを偶然に発見。そしてさらに、それがポリフォニーによる合唱曲であることを突き止めたそうです。

その楽譜がこちら。現代で広く用いられている「五線譜」とは全く異なる「Eastern Palaeofrankish」という記譜法で書かれており、専門家であるヴァレッリさん以外には判読できなかったというのも理解できます。


この楽譜をもとに再現された歌唱がこのムービー。単純に主となる旋律に3度・5度の和音を乗せるものではなく、独立しつつも絡み合うメロディラインが特徴的と言えそうです。ポリフォニーの発生に大きな影響を与えたとされるグレゴリオ聖歌にも通ずる雰囲気が感じられます。

Antiphon to St Boniface - YouTube


さらにこの楽譜を現代の5線譜に近い形で書き直した楽譜がこちら。音符の縦線がないために音の長さがわかりにくいのですが、ムービーを見ながら眺めるとその意図が理解できるかも。


発見された古い楽譜とその作曲者の詳細は不明だということですが、前述のEastern Palaeofrankish」という記譜法から推察すると、現在でいうところのドイツ北西部・デュッセルドルフ近郊の修道院で作曲されたものではないかと考えられています。また、歌の内容は8世紀にフランク王国にキリスト教を伝えた宣教師・殉教者である聖ボニファティウスをたたえたものになっていることもその説を裏付けるものになりそうです。

今回の発見により、ポリフォニーの起源は西暦1000年ごろの「Winchester Troper」をさらに100年さかのぼる西暦900年ごろということになりそう。西暦900年ごろと言えば、日本では平安時代まっただ中の頃で、「かぐや姫」の竹取物語が記された時代であることを考えると、日本と西洋の文化の違いが非常に興味深く感じられそうです。

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in アート, Posted by darkhorse_log

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