サイエンス

キノコの菌根ネットワークに「サイバー犯罪」や「アンチウイルスソフト」が存在

By Ghita Katz Olsen

地上に生えているキノコの多くは菌根菌と呼ばれる菌類で、菌根を土の中に張り巡らし、生えている付近の植物の根にくっついて、栄養素やエネルギーを交換して共生していることが今までの研究から判明しています。「地球のナチュラルインターネット」と呼ばれることもあるキノコと植物の共生ネットワークの中では、人間が使用しているインターネットで起こっているのと同じようなことが発生しています。

BBC - Earth - Plants talk to each other using an internet of fungus
http://www.bbc.com/earth/story/20141111-plants-have-a-hidden-internet

キノコの菌根ネットワークを簡単に言うと、キノコが菌根を介してリン酸や窒素を植物に供給し、その代わりに植物から光合成により生産した炭素化合物を得ているというものです。これだけならキノコと植物が菌根を介して共生しているだけに思えるのですが、さまざまな研究からインターネットで言うところのアンチウイルスソフトやサイバー犯罪のようなことが菌根ネットワークで発生しているということが判明しています。

By sunphlo

2010年に華南農業大学のRen Sen Zeng博士が率いる研究チームはキノコとトマトを使った実験を行い、キノコとトマトをつなげる菌根ネットワークに悪性の物質が送られてきた場合、植物がネットワークを介して付近に生えている別の植物に化学物質を送って警戒信号を発していることを発見しました。実験は菌根ネットワークにつなげるトマトとそうでないトマトを育て、夏疫病を引き起こす菌類を与えて経過を見守るというもの。その結果菌根ネットワークにつながったトマトの方が、夏疫病による被害が抑えられ、Zeng博士は「なぜ夏疫病の被害に違いが出たかというと、夏疫病にかかったトマトからの防御信号を別のトマトが受け取り、夏疫病に対して防御作用がある化学物質を活性化させたからだと考えられます」と結論づけました。

By Scot Nelson

2011年にはアバディーン大学のDavid Johnson氏がソラマメとキノコ、アブラムシを使った実験を実施したところ、アブラムシの攻撃下にあるソラマメが菌類ネットワークを介して警戒信号を発し、信号を受け取ったアブラムシの攻撃下にないソラマメが攻撃から身を守るための化学物質を活性化させたことが判明しました。トマトやソラマメが菌類ネットワークを使って警戒信号を送ることは、インターネットにおけるアンチウイルスソフトと似ています。

しかしながら、菌類ネットワークが善いことばかりに使われるとは限りません。光合成を行うために必要な葉緑素を持たない植物の1つであるPhantom Orchid(ランの1種)は、光合成により生産される炭素化合物を菌類ネットワークを介して別の植物から盗み、自身に与えることがわかっています。しかも、炭素化合物が自身にきちんと適合している、つまり「自身にとって必要である」と判断した場合のみ、Phantom Orchidは盗みをはたらくとのこと。まるでネット上で繰り広げられるサイバー犯罪のようです……。

By Tab Tannery

生き物が作り上げたネットワークの中で、インターネットと同じような事象が起きているというのはなかなか興味深いものがあります。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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