90年前に現代の技術をことごとく予見し「SF」の未来を切り開いた人物とは?

宇宙船や空飛ぶ車など、SF作品で描かれた技術の一部が徐々に現実のものになってきていますが、今日においても多様なSF作品が作り続けられています。20世紀には偉大なSF作家が数多く存在しましたが、WeWantToLearn.netが「SFの第一人者は誰か?」ということをまとめています。
Beginnings of SF | WeWantToLearn.net
http://wewanttolearn.wordpress.com/2014/10/05/beginnings-of-sf/
今から110年前の1904年に、ルクセンブルク生まれの発明家にして起業家であるヒューゴー・ガーンズバック氏はアメリカに移住しました。そしてラジオや電話といった「近い未来に発表されるであろう」発明品に魅了されたガーンズバック氏は、今はまだ実用化されていないものの情報を集め始めます。これが後にいう「サイエンス・フィクション」、SFの始まりです。
無線機の販売事業を行う中でアメリカの一般大衆が科学にうといことを知ったガーンズバック氏は、1908年に「Modern Electrics(現代の電気工学)」という雑誌を出版し、テクノロジー分野での新しく革新的な物事や、電子機器に関する幅広い発明を紹介しました。その後5年にわたって雑誌を出版し続けることで、ガーンズバック氏は「このような雑誌が科学を理解し知識を深めるのに役立つ」と確信。SFへの道を開き始めます。

1913年、ガーンズバック氏は「現代の電気工学」を「Electrical Experimenter(電気の実験者)」と改名。科学的な記事を掲載する一方で、自身の小説を含んだSFについても扱い出します。彼の作品の1つとして1925年に発刊された、27世紀のテクノロジーを描く「ラルフ124C41+」は、後のSF作家たちに大きな影響を与えることになりました。

ラルフ124C41+は文学的に低く評価されるのですが、小説に登場するアイテムはどれも妥当性のある「未来の技術」ばかり。植物を急成長させる農場や、電気自動車、ソーラーパネル、レーダー、テレビとチャンネルの切り替え、テレビ電話、人造の食べ物、大陸を横断する航空業務など、先見の明としか言えないほど、現在において実際に使われている技術が90年前の小説にわんさか出てくるのです。その中には睡眠学習装置や人の考えを記録する装置、空中都市といった現在まだ実現していない技術もあります。
これが作中で登場したソーラーパネル。

主人公のラルフが宇宙カプセルに入ろうとしているところ。

重力無効デバイスを使って地上6kmに浮かばせた都市、「Vacation city」

発刊当時、ラルフ124C41+はあまり注目を浴びませんでしたが、ガーンズバック氏には長期的な計画がありました。そして1926年にガーンズバック氏がSFだけに焦点を絞った「Amazing Stories(驚くべき物語)」を出版すると雑誌は大当たりし、人々の思考を科学の探求に向かわせることできたのです。
イラストレーターのフランク・R・パウル氏による人目を引くイラストを表紙に用いて、「海底二万里」を書いたジュール・ヴェルヌ氏や「黒猫」のエドガー・アラン・ポー氏の作品を再版という形で掲載し、オリジナルの作品も載せることで、Amazing Storiesは1920年代を代表する雑誌にまで成長。これによって「サイエンス・フィクション」という言葉が広く知られることになりました。

1929年を過ぎるとAmazing Storiesの出版社は何度も変わり、SF作品のジャンルが多様になって複雑な内容のものが増加してくると、人気は落ち始めます。しかし、SF黄金時代を築いた1人であるジョン・W・キャンベル氏と並んで、ガーンズバック氏が20世紀を代表するSF世界の偉大な編集者であるということは今日においても認められるところ。そのため、SF界における著名な賞「ヒューゴー賞」は彼の名前にちなんで名付けられているというわけです。
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