かつての恐竜化石密猟の天国・モンゴルで貴重な化石を守った取り組みとは

アジア大陸の中央に位置する国・モンゴルは、乾燥した大地がもたらす「恐竜化石の宝庫」として知られています。数多くの化石が非常によい状態で発掘されるために研究者の注目を集めているわけですが、同時に盗掘の被害が続出して貴重な財産が失われるという危機にも直面しています。そんな盗掘・海外持ち出しに対し、国家レベルでの取り組みが行われています。

Mongolia dinosaur fossils: Oyungerel Tsevedvamba fights poaching of stolen paleontological specimens.
http://www.slate.com/articles/health_and_science/new_scientist/2014/09/mongolia_dinosaur_fossils_oyungerel_tsevedvamba_fights_poaching_of_stolen.html

2012年5月、モンゴルの文化・スポーツ・観光省のツェデブダンバ大臣は、ニューヨークで開催されたオークションに全高約2.5メートル、全長約7.3メートルの恐竜の化石が出品されたことを聞きつけました。その化石は、モンゴルで発掘されたティラノサウルス・バタール (Tyrannosaurus bataar)のもので、ほぼ全身が非常に状態よく保存されているもの。実際に生きていたものだと体重は約4～5トンという恐竜の中でも最大級に属する肉食恐竜の一種で、その名が示すとおりティラノサウルスに近い種類の恐竜に分類されています。

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約7000万年前に生息していたと考えられる恐竜の化石だったわけですが、これを知った大臣は同国のエルベグドルジ大統領に電話を入れてオークション出品の事実を報告し、対策を取ることを要請。それを聞いた大統領の当初の反応は「いったい何の恐竜の話をしている？」というものでしたが、大臣の説得の結果、オークションの出品者に対して法的措置が取られることになりました。

モンゴルでは以前から、化石の盗掘と国外持ち出しが多く行われてきました。モンゴルのように乾燥した土地は死んでしまった個体の保存に適しており、同国にあるゴビ砂漠などは世界でも有数の恐竜化石の産出国となっています。恐竜そのものの化石はもちろん、巣の中にいた恐竜の赤ちゃんの化石なども発見されています。

By Frank Black Noir

また、世界中でもゴビ砂漠の化石は注目を集めており、日本の国立科学博物館でも特別展が開催されていたこともあります。

特別展「大恐竜展」ゴビ砂漠の驚異- 国立科学博物館 (注：終了済み)
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2013/daikyoryu/

しかし、以前のモンゴルではこのような化石に対する保護意識が低かったと大臣は語っており、その結果として科学的、歴史的に貴重な化石標本の盗掘が横行し、国外への流出が後を絶たなかったと言います。

その問題を解決するために取られた対策は、やはり「教育の充実」だと大臣は語ります。対策が功を奏したのか、近年のモンゴルでは古生物学への関心が高まりを見せており、「民間や警察機関などさまざまなレベルで保護意識が高まることで、貴重な財産の流出に効果が現れ始めている」と大臣は語っていました。

なお、オークションに出品されていた化石は105万ドル(当時のレートで約8300万円)という価格で落札されていましたが、モンゴル当局からの訴えを受けてオークションから約1か月後にアメリカ当局の差し押さえを受けています。その後の2013年5月にはモンゴルへと返還され、同国のレーニン博物館で展示されています。

また、イギリス人と共謀してニューヨークのオークションに化石を出品したエリック・プロコピ氏は、この「ティラノサウルス・バタール」をはじめとする複数の恐竜化石をモンゴルからイギリス経由でアメリカに密輸した件などで起訴を受け、2014年6月には禁固3か月の有罪判決が言い渡されています。

恐竜の化石を密輸した男に禁錮3月 米　写真1枚　国際ニュース：AFPBB News
http://www.afpbb.com/articles/-/3016860