取材

東芝とSanDiskによる最新フラッシュメモリ工場「東芝四日市工場」の竣工・起工式を見学してきました


東芝が2013年8月から建設を進め、東芝とSanDiskが「NAND型フラッシュメモリのパイオニア」として生産・販売を行う設備の導入を進めてきた東芝四日市工場・第5製造棟(第2期分)が竣工し、生産を開始しました。また、三次元構造のNAND型フラッシュメモリ(3Dメモリ)の専用設備となる新・第2製造棟の建設が開始され、竣工・起工式と工場見学などが行われたので、現地に行って見てきました。

東芝:プレスリリース (2014-09-09):東芝四日市工場の第5製造棟(第2期分)の竣工及び新・第2製造棟の起工について
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2014_09/pr_j0901.htm

SanDisk Corporation - 東芝四日市工場の 第5製造棟(第2期分)の竣工及び新・第2製造棟の起工について
http://newsroom.sandisk.co.jp/manual-releases/2014/9/2014-09-09

東芝四日市工場に到着。写真に写っているのが「第5製造棟」の建屋で、向こう側半分が新たに竣工した第2期の部分となっています。


近くで見ると非常に巨大な建物。横に停められている自動車が非常に小さく感じられます。


報道陣も多く集まっており、注目の高さが感じられました。


上空から見るとこんな感じで、少し明るくなっている建物の右奥部分が第2期の部分となっています。


取材日には第5製造棟(第2期分)の竣工と、新築される第2製造棟の起工セレモニーが行われました。会場の仮設会場も立派なテント。


テント内では、工場で生産される製品のサンプルが展示されていました。


チップの心臓部となる15nmプロセス・直径300mmのシリコンウエハや……


ウエハの製造ラインで輸送や保管に用いられるFOUP(Front Opening Unified Pod)の設備などが展示されていました。


そんなメモリが使われる各種製品も展示。


GIGAZINE編集部でも使っているエクストリーム プロ コンパクトフラッシュのシリーズや……


エクストリーム プロ SDHC/SDXCカードなど。


手軽に使えるUSBフラッシュメモリ


SSDなどのサンプルが展示されていました。


四日市工場は環境や周辺地域に配慮した工場づくりが進められているとのことで、木で作られた各種表彰パネルなども展示されていました。


滞りなく神事が執り行われ……


続いて第5製造棟の前でテープカットが行われました。


東芝代表取締役社長・田中久雄氏、在日米国大使館公使・ジェシカ・ウェブスター氏、サンディスクコーポレーションCEO・サンジェイ・メロートラ氏らによるテープカットの様子はこんな感じでした。

東芝四日市工場・第5製造棟第2期分の竣工記念テープカットの様子


そしてこちらが公開された第5製造棟内部の様子。クリーンに保たれた施設では最新の15nmプロセスを用いた製品の量産が進められており、9月末には最初の製品が出荷される予定とのこと。


FOUPに収められたシリコンウエハが続々と生産されて行くことになっています。


今後、両社はスマートフォンやタブレット、エンタープライズサーバ向けSSDなどを中心に需要が増加傾向にあるNAND型フラッシュメモリの生産を強化して行くことになっています。

◆2014年9月9日 13:45追記
また、当日は2016年完成予定の新・第2製造棟の建設のために取り壊されている第2製造棟の様子も見学できました。


工場壁面のみ残し、あとの部分はきれいさっぱり解体されてしまっています。


第2棟は天井の高い4階建ての施設であったそうで、重機と並べても圧倒的なサイズ感。


もちろん作業現場には立ち入り禁止です。


取り壊しに使用されている大量の重機


アームの先には解体用の油圧ブレーカなどが取り付けられています。


カラーもそろった大小の重機が勢ぞろい。


高所作業用のゴンドラもこっそりと。


間近で見るとド迫力の建屋は更地になるまで解体され、最新設備が導入される工場に生まれかわることになっていました。


◆2014年9月9日 19:45追記
工場見学、祝賀会に引き続き記者会見が行われました。

東芝 代表執行役社長 田中 久雄氏
本日は東芝四日市工場 第5製造棟2期分竣工式と新・第2製造棟起工式にお越しいただきありがとうございます。当社では今後のストレージ事業の最重要拠点が四日市工場で生産されるNANDメモリであるととらえ、サンディスクコーポレーションとの協力体制のもとで全力を尽くしてまいります。日本の半導体産業は衰退産業ともいわれることもありますが、四日市工場は世界最先端の半導体工場と自負しております。携帯電話からスマートフォン、タブレットなど、時代の最先端に採用されてきたNANDメモリで今後も拡大が見込まれる旺盛な需要に対応してまいりながら、新たに建設を進めて行く新・第2製造棟で生産予定の3Dメモリの足場を築いてまいりたいと考えております。


SanDisk Corporation プレジデント兼CEO サンジェイ・メロートラ氏
本日はこの場所に参加できて喜んでおります。SanDiskは1988年に創業して以来、フラッシュメモリストレージのパイオニアとして市場をリードしてまいりました。SanDiskは2000年に東芝と協業を開始し、2002年には協力して四日市工場で生産を開始し、以後11世代にわたる半導体の進化を共にしてまいりました。新たに生産を開始した第5製造棟 第二期部分での15nmプロセステクノロジーおよび2016年に生産開始予定の3Dメモリのテクノロジーをもとに市場で圧倒的な先進性を発揮して、今後10倍に拡大するとみられる市場でリーダーシップを発揮まいりたいと考えております。


セミコンダクター&ストレージ社 社長 成毛 康雄氏
一昨年以降マーケットの動向は上向きを見せ、また為替の環境もよかったために2013年度は好調な実績を収めることができました。2014年度のNANDマーケットは若干の需要の緩みがみられますが、夏以降には新しいスマートフォン機器の登場もありマーケットはまだまだ拡大基調です。当社ではNANDメモリ市場の広がりを売上につなげていきたいと考えており、2016年度には営業利益3000億円を実現したいと考えております。この分野に対しては、年間2000億の投資を継続しており、2本年度は新・第2製造棟において新しいクリーンルームの建設を着工しております。

今年度は世界最新の15nmプロセス、そしてさらに3Dメモリに続く計画が進んでおります。また、ストレージ事業としては従来のメモリ事業に加え、コントローラ技術を上乗せしたSSDなどの事業を強化し、さらに保存したデータを処理するために適したNANDを使ったシステムを開発してデータセンタ向け事業の新規領域へと拡大を図ってまいります。


引き続き、報道陣との質疑応答が行われました。

・日本経済新聞 ヤマダ
15nmの競争力について:他社では3Dメモリ事業を活性化させる動きもみられますが、今でも東芝の進める15nmプロセスには勝機はあるとお考えでしょうか?また、御社において3Dメモリ事業が開始されることの意味合いをお聞かせください。

・田中社長
まだまだ15nmメモリにはコスト面・供給力の面でも競争力があると考えております。また、第5製造棟2期部分が竣工し、今後は15nmの生産を行っていまいります。東芝のなかで15nmは大きな柱であり、2017年には10倍の規模になると考えておりますので、東芝のなかでも重要な事業であると捉えております。

3Dメモリ事業は将来の東芝グループを支えられる事業の1つであると考えており、注力していく分野であると捉えております。一方で、ボラティリティの高さを懸念する声があるのも事実ではありますが、事前ほど市場の動向に左右されるような状況ではなくなりつつあります。


・フリー記者 オハラ
サンディスクのメロートラにCEOにお伺いします。サンディスクのグローバル戦略における意味、そして競合するサムスンとの関係をどのようにお考えでしょうか。新しく買収したSSDメーカー・Fusion-ioの件を含めてお答えください。

・メロートラCEO
第5製造棟では既存の能力を使って15nmを作って行きます。また、最もコストが低く、競争力があるものと考えています。15nmNANDは世界先進の技術であり、この技術を使いながら技術を進化させてまいります。第5製造棟2期と、2016年竣工予定の新クリーンルームで市場におけるリーダーシップを発揮してまいります。

また、Fusion IOの買収は完了しており、企業向け分野におけるサンディスクのポジションが高まるものと考えております。2015年には、10億ドル(約1兆円)を超える売上を狙いたいと考えております。

・NHK ノグチ
円安の影響はいかがでしょうか?6年ぶり106円台をマークしたわけですが、経営への影響は?また、四日市では新たな雇用があまり生まれないとのことですが、どのようにして対応しているのでしょうか。

・田中社長
東芝グループ全体ではプラス方向のインパクトがあります。事業によってはプラスマイナスがあり、半導体、社会インフラ輸出関連についてはプラスサイド、日本への輸入事業に関してはマイナスですが、トータルではプラスの結果となっています。ただ、中期的には円安に振れすぎると材料、燃料が高騰するので急激な円安を危惧しているので、中期的に見ると必ずしもプラスではないと捉えています。

新工場のクリーンルームの中はコンピューターの自動制御で生産が行われ、人間のオペレーターは少ない状況です。現場の人間はコンピューターを使って生産計画を立て、機材のメンテナンスを行います。工場での働き方が変わってきており、弊社では現場の自動化を推進しています。今の四日市工場では50%が製造の分野、残りは技術・開発となっており、さらに製造の半分は技術職です。昔の工場とは違う流れになっておりますが、今後もその方向で考えています。

・ロイター ムライ
第5製造棟の竣工と、新・第2製造棟立て替えはNAND事業における対サムスンとの戦いのなかでどのような意味があるのでしょうか。

・田中社長
第5製造棟は、世界最先端の工場です。15nmを世界に先駆けて生産したのは東芝であり、それを世界に先駆けて行うことをご理解いただきたいと考えています。他社との関係に関しては、数を追い求めるのではなく、市場の動向、全体の環境を見て市場と対話しながら生産量を見極めてまいります。全世界におけるビット成長率は30~40%と見積もっており、これに合わせて生産を行い、15nmの生産、そして今年度中には3D NANDメモリのめどを立てて世界のBig2として戦っていきたいと考えております。


・産経新聞 コガネザキ
サムスンとの競争についてお伺いします。いつぐらいにシェアトップになりたいか、意気込みをお聞かせください。

・田中社長
確かに戦ってはいますが、必ずしも市場でのNo.1、シェアトップにこだわってはおりません。やみくもにシェア拡大、ボリュームの拡大を狙うと市場の混乱、売価ダウンなどの問題を招くため、当社ではヘルシーな成長、確実な利益を最大の主眼点と捉えております。

・日経BP オオタ
NANDのパートナーシップは成功していますが、ディスクリート事業、システムLSI事業についての展望をお聞かせください。また、大分工場は稼働率含め苦しい状況であると思いますが、今後はNAND以外の協同や売却はあるでしょうか。

・田中社長
大分工場についてはそれなりの競争力がでてきたと考えておりますが、まだまだ厳しい状況は続いていると考えます。車載用LSI、電力、白色LEDなど絞った製品展開、Googleの自作スマホ「Project Ara」に搭載されるブリッジICなど期待できる分野もあります。大分工場の存続に関しては、これまで進めてきた構造改革が成功しつつあると考えており、事業の売却、工場閉鎖は一切考えておりません。むしろ、より競争力のある事業展開を進めて行きたいと考えております。

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