サイエンス

バクテリアが体を清潔に保ってくれてシャワーいらずの「バクテリアミスト」を1ヶ月間使うとどうなるか

By jamelah e.

体を清潔に保つために、シャンプーで頭を洗ったり石けんで体を洗ったりして汚れを落とすわけですが、バクテリアを体にすり込むことによって清潔さを保ち、シャワーが不要になるというミストスプレーが開発されています。実際に、このバクテリアミストスプレーを使い続けるとどうなるのか、ニューヨーク・タイムズの記者が1カ月使用して、その結果を報告しています。

My No-Soap, No-Shampoo, Bacteria-Rich Hygiene Experiment - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2014/05/25/magazine/my-no-soap-no-shampoo-bacteria-rich-hygiene-experiment.html


バイオテクノロジーのスタートアップAOBiomeは、不潔な未処理水などにいるという、アンモニアを酸化させるバクテリア「ニトロソモナス・ユートロファ(Nユートロファ)」を何十億と含有するミストスプレー「AO+」を開発しました。AOBiomeの科学者によると、Nユートロファは汗などに含まれるアンモニアを食べて亜硝酸塩と一酸化窒素に変換してくれるので、AO+を使うことで、洗剤・デオドラント剤・抗炎症剤を体内に取り込んだのと同じ状態になり免疫力を高めることができるのだとのこと。

そこで、ニューヨーク・タイムズのジュリア・スコット氏が、バクテリアを体にすり込んで4週間を過ごした経験を語っています。実験を開始するためAOBiomeを訪れたスコット氏は、「Nユートロファ」を生きたまま安定させるため冷蔵保存されていたAO+を受け取り、「1日に2度バクテリアミストで頭皮・顔・体の皮膚を湿らせる必要があること」「無害であること」といった説明を受けました。説明を担当したMITの化学エンジニアでAO+を開発した男性は、なんと「12年間シャワーを浴びていない」と明かしました。

By Kol Tregaskes

AOBiomeは抗菌作用を持つバクテリアを皮膚に加えるというアイデアから、長期的な医学の可能性を研究していますが、薬物療法として扱うには10年以上かかるアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を得る必要があるため、「化粧品」として素早くリリースするプロジェクトが進行中です。AO+はFDAが定義できていない「プロバイオティクス」製品として売り出される予定で、スピロス・ジャマCEOは「ユーザーは数カ月後に石けん・デオドランド・モイスチャークリームが不要であることに気付くでしょう」と話しています。

そんなジャマCEOは数年前から週に2回石けんを使用するのみで、取締役会のジェイミー・ヘイウッド会長は月に1、2回石けんを使用し、シャンプーは年に3回しか行っていないとのこと。12年間シャワーを浴びていない開発者の男性は、時々アカを落とすためにスポンジバスを使用するとのことですが、スコット氏は「彼らに対して視覚的・嗅覚的に不潔な印象は全く抱かなかった」と驚いています。

実験を開始したスコット氏は、1日に2度、水のような質感のバクテリアミストを吹きつけるのみで、数日間石けんを使っていないにも関わらず、友人や同僚に体臭を指摘されることはありませんでした。髪の毛は脂っぽくなってしまいましたが、開始1週間の実験はおおむね成功となりました。もともと、乳酸菌を使ったモイスチャークリームなど細菌を利用した化粧製品はいくつか発売されています。化粧品メーカー・ロレアルは乾燥・敏感肌のためのビフィズス菌の1種を使う治療法に関する特許を取得しており、ランコムの製品に使われています。AO+は生きたバクテリアを肌で培養するのが特徴的とのこと。

By Umberto Salvagnin

2週間時のスコット氏の皮膚テストによると、バクテリアの様相は大多数のアメリカ人と同じ程度。増殖し過ぎていることはありませんでしたが、皮膚上からは何百もの未分類のバクテリアも発見されたとのこと。その頃にはスコット氏の髪の毛は脂で覆われて見た目にもわかるほどになっており、脇からは玉ネギやマリファナの臭いがすると他人から指摘されたため、「AO+を石けんの代用品として使うことを後悔し始めた」とコメント。彼はその期間、脇を締めて歩いてパーティなどの誘いは断るほどだったそうです。

By Rach Hutchinson

AO+を使用して4週間がたち実験は終了。スコット氏は激臭ではないものの体臭がありましたが、足には不思議と全く臭いがなかったとのこと。皮膚は柔軟で滑らかになり、常にサウナの後のような浸透感な肌へと変化。毛穴も実験開始前に比べて小さくなったという結果になりました。このデータは濃縮したAO+による糖尿病性潰瘍や皮膚病の治療薬などの開発に役立てられ、FDA承認のための臨床試験にも使われる予定です。

毎日のシャワーが不要だった実験が終了すると、スコット氏は「バクテリアを洗い流すことにあまり乗り気ではない自分がいることに気付いた」と話しています。その後の1週間は普段通りシャワーを浴びたところ、皮膚テストではNユートロファはほとんど見つからず、1カ月かけて自らの皮膚に形成したバクテリアのコロニーは消えてしまったとのことです。

By Steven Depolo

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in メモ,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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