取材

カンボジアの秘境で50人の坑夫に混じって宝石を掘ってきた


いつの時代も老若男女を魅了してやまないのが宝石ですが、カンボジアの秘境にはここでしか採れない「ラタナキリブルー」という宝石があります。その青い輝きに誘われて、堀りに行ってきました。

はじめまして!第二代世界新聞特命記者を襲名しました雑色啓晴(ぞうしきひろはる)です。日本では理科教師をやっていました。子どもにウケる「理科ネタ」を探して世界一周中です。前任の清谷に代わりこれから1年、僕を含めた4人の世界新聞特命記者が週代わりで旅ネタをお届けします。よろしくお願いします!

僕は今、カンボジアのラタナキリ(ピンク印の辺り)という町に居ます。「ラタナキリ」は現地の言葉で「宝石と山がある場所」という意味だそうです。ここでは、高価で取引される「ラタナキリブルー」という宝石が採れるというので、僕も一攫千金を夢見て掘ってきました。

より大きな地図で ラタナキリ を表示

◆10時間かけてラタナキリへ
アンコールワットのあるシェムリアップから向かいました。バスを4台乗り換え……


バスのまま小型船に乗り……


はるばる10時間かけてやってきました。着くころにはこうなります。


ラタナキリの街です。ラタナキリ州の住民の80〜90%が、先住民である少数民族です。


◆ゴムの木とカシューナッツの秘密
ラタナキリブルーの発掘現場へは、ここからさらにバイクで1時間ほど移動します。街のバイクタクシーに頼めば、1日20ドル(約2000円)でどこへでも連れて行ってくれます。今日はよろしく!


出発して間もなく何やらトラブルです。前途多難です。


30分ほど走り、ゴムの木のプランテーションへちょっと寄り道。ハイ、ここ見てください!


伸びまーーーす!


近年、カンボジアにはゴムの木のプランテーションが増えています。実際、ラタナキリの町を抜けてから、延々とゴムの木が道の両脇に続きます。理由はお金になるから。植えて3年~4年経ったゴムの木は1日あたり2リットル前後の樹液を生み出し、だいたい400円くらいの価値になります。1本でこれなので、数千本、数万本あると考えるととんでもないです。

ゴムの木の隣には、なんとカシューナッツの木が!


この果物の種子の部分が、僕らが食べているカシューナッツなんですよ。


果肉の部分も食べられます!噛んだ瞬間に果汁が溢れ出て、リンゴのような爽やかな味でした。


種子の部分はこんな感じ。かじって無理やり殻を開けてみましたが、


こうなりました……。口の中のしびれが30分ほど続きます。


Wikipediaの「カシューナッツ」の記事によると「生果には、アナカルディウム酸やカルドールなどの刺激成分、また青酸配糖体であるアミグダリンなどの毒物を含むため、食材として用いる場合には、これらの成分の高温加熱による除去処理(いわゆる『飛ばす』工程)が必要となる」そうです。

むやみやたらに、落ちてるものを口にするのはやめましょう(笑)。

◆ラタナキリブルーはどこだ!?
1時間ほど走り、またカシューナッツ林に入ると何やら地面がデコボコしています。


林を越えても、なおデコボコは続きます。これはすべて抗夫がラタナキリブルーのために掘った穴を塞いだものだそうです。


そしてこちらが、採掘場です。


バイクがあちらこちらに並びます。50人ぐらいの抗夫達が、それぞれの領域でラタナキリブルーを採掘しています。


彼らはまず、このような穴を二日かけて掘ります。その後、地下で1人の抗夫がこのバケツを受け取り、堀った土を入れます。


この穴なんと、地下12m!梯子はありません。両側に穴を掘り、それを伝って上り下りします。


では、僕も宝石探しに挑戦!


12mは危ないということで、たかだか3m程度の穴だったのですが、それでも登るのに一苦労。


ふぅ、やっと登り切りました。全身真っ黒です。隣の女の子の目が痛い(笑)。


話を採掘工程へ戻します。バケツに土を入れたら、この手製の機械で巻き上げます。


その後は選別作業です。彼らには日当などはありません。いいものを見つけた時だけ中国の企業が買い取ってくれるそうです。


そして、運がいいとこんな石が見つかります。僕も頑張って採掘してみましたが、結局見つかりませんでした。


仕方なく、僕が買う意思表示をしたら、こんなにも人が集まってきました。


このように太陽に透かして、中に傷や割れがないかチェックします。


結果、ドライバーの勧めもあり2つ購入しました。2つで約5500円。


1つで良かったんですが、この虹色の干渉に惹かれてしまい、もう一つ手を伸ばしちゃいました。金に困ったら、欧米人に2倍の値段で売りつけようと思います。


「ラタナキリブルー」といいつつ青くない気がしますが、この石を加熱処理するとちゃんとこのように青くなります。色が濃いもののほうが値段は高いようです。この写真の大きくて濃いものは1万5千円程度で売っていました。ネットで買う価格の3分の1くらいでしょうか。


ラタナキリブルーは、ジルコンという鉱物です。一般的にジルコンは処理によって様々な色を発しますが、青色だけはここラタナキリ産のジルコンでないとダメなんです。それゆえ、ラタナキリブルーという名前が付けられ高価な値段で売られています。

また、ジルコンはそれ自身が生成された時代がわかる特別な鉱物でもあります。その性質を使って、最近とても面白い研究結果が発表されました。今までは地球誕生の後、地球が冷え固まり生物が住めるようになるまで約10億年のスパンが必要とされていましたが、その説が変わるかもしれません。

世界最古・44億年前のジルコン結晶体から明らかになってくる太古の地球 - GIGAZINE


最後に、抗夫の方々と写真を撮っていただきました!皆さんももし、ラタナキリブルーを手に取ることがあれば、この記事を思い出していただければ嬉しいです。


文・取材:雑色啓晴
http://zoshiki.com/wp/

監修:世界新聞
http://sekaishinbun.net


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in 取材, Posted by logc_nt

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