取材

世界に1つしかないカップヌードルを作れる「インスタントラーメン発明記念館」に行ってみました


終戦直後の大阪の闇市で、ラーメン屋台に並ぶ人の行列を見て「もっと手軽にラーメンを作れたら」との思いを抱いたという、日清食品株式会社の創業者安藤百福氏は、1958年に大阪府池田市の自宅裏庭に建てた小さな研究小屋で、どこの家庭でもあるありふれた調理器具を使って日夜研究を重ね、お湯をかけて密閉するだけの袋入り即席麺「チキンラーメン」の開発に成功しました。その後安藤氏は、世界初のカップ麺「カップヌードル」を開発するなど、日本の食文化に大きな影響を残しています。

そんな安藤氏の業績を記念したのが「インスタントラーメン発明記念館」で、チキンラーメンを開発した研究小屋が再現されていたり、世界に1つだけのオリジナルカップヌードルを作れる体験工房もあるとのことなので、実際に行ってみました。

インスタントラーメン発明記念館
http://www.instantramen-museum.jp/

インスタントラーメン発明記念館は阪急電車宝塚線「池田駅」から徒歩5分の距離にあります。

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阪急電車宝塚線「池田駅」は阪急梅田駅から急行で約20分。


池田駅には、駅の至る所にインスタントラーメン発明記念館への案内看板があり、道に迷う心配はありません。


池田駅の満寿美町方面出口から外に出て、東の方に歩いていくと「インスタントラーメン発明記念館まで、あと300m」と書かれた看板を発見。


ラーメンチェーン店の博多一風堂の前を通り、インスタントラーメン発明記念館に向かってテクテク歩いて行きます。


阪急宝塚線池田駅から歩き始めて5分後、大きな建物が見えてきました。こちらが、インスタントラーメン発明記念館です。


インスタントラーメン発明記念館の前では、多くの人たちが銅像と一緒に記念撮影を楽しんでいます。


大勢の人が記念撮影をしていたのは、日清食品株式会社の創業者であり、「チキンラーメン」と「カップヌードル」を開発した安藤百福氏の銅像。


安藤百福氏の銅像が掲げているのは、世界で初めて商業的な成功を収めたインスタントラーメンのチキンラーメンです。


銅像の反対側には安藤百福氏が生前に住んでいた家があり、現在は管理会社によって管理されているとのこと。


安藤百福氏の銅像の前を通り過ぎ、インスタントラーメン発明記念館の入口に到着。


インスタントラーメン発明記念館の開館時間は9時30分から16時までで、休館日は火曜日となっており、入場料は無料です。


インスタントラーメン発明記念館の中は、子どもから大人まで多くの人でにぎわっていました。


入館してすぐ左には受付があり、こちらでお土産を購入したりできます。


こちらがお土産コーナー。


お土産コーナーには防災備蓄用の「チキンラーメン保存缶」「カップヌードル保存缶」や……


チキンラーメンのふた付きマグカップなどのお土産を購入できます。


お土産コーナーを後にして、早速展示室に入場。


展示室に入場すると、まず目に飛び込んでくるのは、日清食品から販売されたカップヌードルなどの数々のインスタントラーメンが壁に大量に展示された「インスタントラーメン・トンネル」


インスタントラーメンは天井にまでみっしりと展示されています。


インスタントラーメンはただ展示されているのではなく、発売された年代順に並んでいます。年代順に並んでいるインスタント食品の中でも一番最初に展示されているのは、安藤百福氏が1958年に開発に成功したチキンラーメン。


1958年当時に販売されたチキンラーメンのパッケージはこんな感じ。


チキンラーメンの次に発売されたのは、「即席冷し 千金蕎麦」です。千金蕎麦と書いて「チキンソバ」と読むとのこと。


続いて発売されたのは「即席 チキンラーメン +プラスカレー」


冷麺のインスタントラーメン「チキンラーメン ニュータッチ」も展示されています。


1963年には「日清焼そば」が発売されます。


1963年から今に至るまで、日清焼そばのパッケージに大きな変化は見られません。


1968年には「出前一丁」の販売がスタート。


岡持を持つ「出前坊や」のイラストもほとんど変わりなし。デザインというのは時代に合わせて変化するものですが、同じデザインのパッケージを50年以上使い続ける商品はなかなかありません。


1971年には世界初のカップ麺となった「カップヌードル」が登場。


現在でもスーパーやコンビニなどで売られている「日清のどん兵衛」と「日清焼そばU.F.O. 」は1976年から販売スタート。


1992年にはレトルトされた生タイプ麺である「日清ラ王」が発売されました。


2010年の年末年始限定商品の「HAPPYにゅうYEAR MILK チキンラーメンビッグカップ」や2007年に限定発売された「フライパンでつくる 日清焼チキン」など、現在は販売されてない珍しいインスタントラーメンまで展示されています。


こちらは日清食品から2013年現在発売中であるインスタントラーメンの数々。これだけ多くの種類の商品が販売されていることに驚きです。


インスタントラーメン・トンネルの隣には、安藤氏がチキンラーメンを開発した当時の研究小屋が再現されていました。


安藤氏が自宅の裏庭に建てたという研究小屋の中では、チキンラーメンを開発するのに実際に使っていた調理器具を展示。


安藤氏は、失敗を繰り返しながら研究を続け、妻である仁子夫人が天ぷらを揚げているのを見て、麺を油で揚げて乾燥させる「油熱乾燥法」を思いつきます。


安藤氏は製麺機やまな板など、ありふれた道具を使い研究を重ねてチキンラーメンを開発したのです。


2005年に朝日新聞に掲載された写真からは、安藤氏が再現された研究小屋で麺を打っている姿を確認できます。


展示室の他の場所では、次々に開発されている新しい形のインスタントラーメンについて詳しく解説されていました。


こちらは、2005年7月に宇宙飛行士の野口聡一さんがスペースシャトル「ディスカバリー号」に登場した際、一緒に宇宙に持って行った「スペースラム」という世界初の宇宙食ラーメン。野口さんは「びっくりするほど地球の味が再現されている」とスペースラムを称賛するコメントを残しています。


展示場を抜けると、大勢の人が列を作っているのに遭遇。みなさんが並んでいるのは、オリジナルのカップヌードルを作れる「マイカップヌードル ファクトリー」で、インスタントラーメン発明記念館でも一番人気の施設です。


この日は日曜日ということもあり、なかなかの混雑模様。


列に並んで進んで行くと、オリジナルカップヌードルの作成行程が説明されていました。


オリジナルカップヌードルを作るには、300円のカップを買って手をきれいに洗います。


次にカップを自分の好みにデザイン。


カップのデザインをしたら、カウンターで麺をカップにセットして、スープ・具材を選んで包装します。


最後にエアパッケージに空気を入れて完成です。


完成したらこんな感じになるとのこと。


説明を読んでも、どのようにカップヌードルを作るのか想像できないので、実際にカップを購入して作ってみることにします。


まずは300円のカップを自動販売機で購入。


購入したカップは、何も入っていない空の状態です。


カップの側面には何もプリントされていません。


カップを購入したら説明通りに、手をきれいに洗います。


手を洗ったら、カップを自分好みにデザイン。大勢の人がカップにお絵かきしている姿はとても楽しそう。


用意された色とりどりのマジックでオリジナルのカップを作ります。


カップにGigazineのロゴを描いてみました。


カップのデザインが終わったら、カウンターへ。


カウンターでは、まずカップに麺を入れてもらいます。大きな機械の上に次々と流れ込んでくる麺。


デザインしたカップをスタッフに手渡すと、カップを麺にカポッと逆さまにしてかぶしてくれます。なぜカップを麺にかぶせるのかというと、麺を上からカップに入れてしまうと時間がかかり、工場での大量生産に向いていないからとのこと。この方法は、どうやったら素早く麺をカップに入れられるか悩んでいた安藤氏が思いついたもので、カップラーメン作りを通して、アイデアの重要性も学ぶことも可能です。


カップが機械の上にセットされたら、ハンドルを時計回りに回転させます。


クルクル


ハンドルを6回ほど回したら、カップが上向きになって、麺のセットは完了。


次に、スープと具材を選びます。スープは、「カップヌードル」「シーフードヌードル」「カップヌードル カレー」「チリトマトヌードル」から1つを選択。


具材は「エビ」「コロ・チャー」「タマゴ」「ネギ」「カニ風味カマボコ」「コーン」などのおなじみのものから、「ひよこちゃんナルト」「ガーリックチップ」「インゲン」「チェダーチーズ」「キムチ」など珍しいものもあります。


スープはノーマルの「カップヌードル」を選択。次に具材を選ぶわけですが、40種類もある中から4つだけ選ぶのはある意味試練です。どんな組み合わせが合うのか、熟考したいところですが、後ろには多くの人が並んでいるので、サッと決めてしまいます。むしろ、ここに来るまでに具材を決めておくと、スムーズに進みます。


せっかくなので、普段は目にしない「ひよこちゃんナルト」と……


オーソドックスに「ネギ」


「タマゴ」を選択。


「コロ・チャー」も捨てがたいところですが……


4品目には本日の特選素材である「イカ」をチョイス。選んだ4種類の具材をカップに入れたらこんな感じになりました。


スープと具材を選んだらアルミキャップでフタをしてもらいます。


続いてシュリンクフィルムと呼ばれる透明の袋にカップを入れ専用の機械に通します。


機械の反対側から出てきたらオリジナルカップヌードルの完成です。


完成したカップヌードルはオリジナルのエアパッケージに入れて持って帰ることが可能。


エアパッケージはこんな感じ。


エアパッケージにカップヌードルを入れて、シュコシュコ空気を入れていきます。空気を入れすぎると、エアパッケージが破裂する可能性があるので注意が必要。


これでオリジナルカップヌードル作成の全行程が終了です。開始から完了までは約30分かかりました。


エアパッケージに入れて持ち帰れば、作ったカップヌードルがかばんの中で壊れてしまうという心配もいりません。


一息ついていると、ショーケースに並べられたカップヌードルを発見しました。


ショーケースの中には、世界中で売られているカップヌードルが展示されています。こちらは、メキシコのカップヌードル。メキシコでは、エビのフレーバーが人気で、ハバネロやレモンで味付けしたものもあるそうです。


ブラジルでは、日本のカップヌードルより塩味の濃いものが好まれており、クリーミータイプのカップヌードルも人気。


麺をすする習慣がないヨーロッパのカップヌードルは、麺の長さを日本のものの半分にしています。


インドでは、「マサラ」と呼ばれるスパイシーなカレー味が人気で、タイでは「トムヤムクン味」が好評とのこと。海外で販売されているカップヌードルは、その土地独自の味に調節されており、日本のものとはまた違ったおいしさを味わえそう。


こちらは安藤氏の所蔵物など展示している「安藤百福の軌跡」


展示されているものの中に「iPod nano」を見つけました。96歳になっても好奇心旺盛だった安藤氏は、iPod nanoを愛用していて、移動中の車の中で「モーツァルト」や「宝塚歌劇曲集」などを聞いていたとのこと。安藤氏が、iTunesを使いこなしていたかどうか、も非常に気になる点。


安藤氏は、チキンラーメンやカップヌードルの開発による功績から多くの賞を受賞してきました。


2006年に刊行された米タイム誌アジア版の60周年記念特集「60年間のアジアの英雄」において、安藤氏は「食の革新者」としての功績により、日本人のアジアの英雄13人の一人に選ばれています。


安藤氏が世界に残した多大なる功績に感動した後、2階へ上がると大勢の人たちが何かを作っているところに遭遇。


こちらはチキンラーメンの手作りを体験できる「チキンラーメンファクトリー」で、小麦粉から製麺、そして油で揚げるところまでチキンラーメン作りの全てを体験できます。チキンラーメンの手作り体験は公式サイト、もしくは電話での予約が必要、料金は小学生以下の子どもが税込300円、大人が税込500円です。


館内は広すぎることもなく、かといって狭いわけでもないので、3時間あればゆっくりと余裕を持って全てを見て回ることが可能。インスタントラーメン発明記念館は、カップヌードルの体験工房や展示物を通して、普段何気なく食べているインスタントラーメンに安藤氏が苦労を重ねて考案したアイデアが詰まっているのを実感でき、また、発明の素晴らしさを感じられる博物館になっていました。

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in 取材,   , Posted by darkhorse_log

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