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ディズニープリンセスの大きな瞳に隠されたアニメの歴史とは?

by Joe Shlabotnik

アニメのヒロインである女性は大きな瞳や豊かな髪を持ち美しく描写され、ディズニーアニメにおいてこれらの特徴は顕著です。「もしアリエルの瞳が大きくなく、通常サイズだったら人々は今のようにアリエルを愛せただろうか?」ということで、ディズニープリンセスの大きな瞳に秘められたディズニーアニメの歴史をThe Atlanticがまとめています。

The Psychology of Giant Princess Eyes - Olga Khazan - The Atlantic
http://www.theatlantic.com/health/archive/2013/11/the-psychology-of-giant-princess-eyes/281209/

実際に通常サイズの目を持つディズニープリンセスたちはどんな感じになるか?ということで、BuzzFeedが実験しています。まずは「リトルマーメイド」のアリエル。


「アラジン」のジャスミン。


「美女と野獣」のベル。


また、メリダとおそろしの森の主人公メリンダは一度デザインが変更され、より細いウエストと豊かな髪を得たことがあります。左が映画のメリンダで、右がディズニーによってリデザインされたもの。


ディズニー映画に出てくるプリンセスの是非は長い間論争となってきましたが、アニメ映画の主人公である少女は「かわいい女の子」が多いことは否定しがたい事実です。この点について「アニメ映画のプリンセスがなぜ大きな目、小さな顎、短い鼻をしているのか?」といういくつかの研究が出す1つの答えは「それがまるで傷つきやすく無垢な赤ん坊のようだから」ということ。その証拠としてベビーフェイスの特徴を持った人は聡明に見られず、取っつきやすいと思われ、裁判において有罪になる確率も低いのです。

近年のディズニープリンセスたちはより勇敢で大胆になってきましたが、彼女たちの見た目は上記の特徴が強調され面白いほどそっくりです。以下はtumblrで作成されたディズニープリンセスの顔を使った作品ですが、プリンセスたちの顔の造形がどれほど同じか、ということがよく分かります。


Brenda Chapmanさんはメリダとおそろしの森の監督の一人ですが、彼女はキャラクターの見た目をより現実的にしようとして批難されたとのこと。Chapman監督はTIME.comの取材に対し「みんなは私が彼女のママを大きく作りすぎてると思ったの。私は彼女のママを現実にいるような中年の女性にしたかったから、それがフラストレーションだった」と語りました。

ではなぜディズニーは女性の目の大きさや腰の細さなど、美しさを強調するのでしょうか?


これについてTinker Belles and Evil Queens: The Walt Disney Company from the Inside Outの著者であるSean Griffinさんは「ディズニーがどたばた劇の作り手からある方向性を持ったプロデューサーになったのは、ヒット作の後を追ったことが理由です」と説明します。

ディズニーにおける初期のヒロインはカボチャの馬車に乗って王子のもとに向かうことを夢見るブロンドの女性のようなタイプではありませんでした。1920年のディズニーアニメに出てくるのは元気のある生き生きとしたアリスという5歳の少女。アリスは女優ヴァージニア・デイヴィスさんによって演じられた短編映画「アリスコメディー」シリーズの主人公で、映画はデイヴィスさんの様子をムービー撮影し、それをキャラクターたちであふれるアニメ世界の映像と組み合わせるという手法で作られました。そして作品の中で主人公のアリスは絶えず警察沙汰に巻き込まれ、権威に挑戦していたのです。

AC1 アリスコメディー Alice's Wonderland (1923) ディズニー - YouTube


例えば1924年の「Alice Gets in Dutch」という作品ではアリスがアニメ世界で気むずかしい教師と対決し、1925年の「Jail Bird」ではパイを盗んで刑務所に行き、刑務所暴動に参加していました。

Alice Comedies-Alice Gets in Dutch (1924) - YouTube


物語は教室の風景から始まり……


アニメの世界に入ったアリスは、アニメキャラクターと化した教師と対決。大砲を持ち出します。


「何を使うの?」と問うアリスに猫のキャラクターが差し出したのはカイエンペッパーという唐辛子。


大砲につめて勢いよく息を吹きこむと……


敵の陣地にいた教師たちが唐辛子まみれ。


くしゃみが止まりません。


しかし1930年代にアメリカ政府が新しいプロダクションコード(映画製作倫理規定)を出すと、ディズニーはどたばた劇のトーンを落とし、高潔さや良心の呵責をアピールしはじめます。雑誌には「ファミリームービーガイド」という記事が掲載され子どもに「有害な」映画を見せないように親に忠告し、ディズニー映画はこの市場に喜んで参入。ジャーナリストたちはディズニーをファミリー・エンターテイメントの確かな源として奨励し始めました。

その頃のウォルト・ディズニーはアメリカ家庭における神話の作り手だと考えられていました。その健全さの美学はディズニーのオフィスにも浸透し、会社としてのディズニーも自身をハリウッドよりも純粋なものとしてブランド付けようとしました。会社にはドレスコードがあり、男性はコートとネクタイを着用。女性はズボンの着用を禁止され、既に描き上げられたイラストのインク仕上げとペインティング以外のクリエイティブな作業につくことができなかったとのこと。女性は物理的に男性と切り離され、女性がいる部門は「女子修道院」というあだ名で呼ばれました。1937年に作られたディズニー・アニメーション・スタジオ用のプロモーションビデオでは「何百人ものかわいい女の子たちが居心地のよい建物の中で骨折って働いています」と描写され、実際に女性がセルロイドのシートを使ってトレースやカラーリングを行っている様子が映されています。

How Walt Disney Cartoons are made - YouTube


ディズニーに勤める女性の姿。


ディズニーで働いた経験のあるLeonard Mosleyさんは伝記を書いており、その中で「飲み騒いだりもしないし、セットから声を上げたり、異性のメンバーを好色な目で見たり、いかがわしい行為もしない」とオフィスの様子を記述しています。

そして自身のブランディングと同時にディズニーはよりリアルなアニメのスタイルとして「生命を吹き込む魔法」を売り込みだし、モラル・コードと新しいリアリズムが白雪姫と7人の小人やピノキオ・バンビを初めとするディズニー映画の「黄金期」を作りだします。ウォルト・ディズニーは仕事を通して伝統的なアメリカの価値観を強固にしようと試み、彼の描く女性は結果的にアクションの面でも外観の面でもよりトラディショナルになりました。

また40年代、50年代にディズニーは教育的なアニメーションの製作も開始し、思春期直前の少女たちは学校で「The Story Of Menstruation(月経の物語)」というアニメを見たとのこと。

Walt Disney The Story Of Menstruation - YouTube


少女はディズニーと一目でわかる絵柄。


アニメはカラーなのですが、子宮が描かれている部分はモノクロで、血は白で表現されています。


これが女性の体の断面図。


The Curse : A Cultural History of Menstruationの著者Janice Delaneyさんはこのアニメーションを「ディズニーの世界では経血は赤ではなく雪のような白さで、膣の図画は女性の体ではなくキッチンシンクの断面図のよう」と書き、無菌培養のディズニー文化が現実の汚れた面を打ち負かしているとしています。

40年代や50年代初期にはセックスやコメディー要素の強い暴力を取り入れた実験的作品も作られましたが、商業的に成功したのは「シンデレラ」や「眠れる森の美女」に代表されるような異性愛規範性を持つファミリームービーでした。そして1966年にウォルト・ディズニーが亡くなった時、彼の「すべての人の偉大な教育者」としての評判は確固たるものとなったのです。

ディズニーアニメ21作品を対象とした研究では「魅力的なキャラクターは高い知能を持つように見え、攻撃性は低く、モラルと善行を重視する。さらに肉体的に魅力的なキャラクターは映画のラストで肯定的な結末を迎える」ということが明らかにされました。ディズニーは今も女性の美しさを強調した道徳的なおとぎ話にフォーカスを置いており、それに対し「アニメーションの女性は美しくなければいけないのか?」という問いが投げかけられています。しかし「世界中の誰もが奇跡だと思うほどに美しい」といった一節を物語の随所に散りばめたグリム兄弟の物語を対象とした研究で、女性の美しさを強調した物語はそうでない物語よりも語り続けられる(PDFファイル)ということが分かっているのもまた事実なのです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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