サイエンス

バーチャルな世界で牛になると人はベジタリアンになるのか?

By Lockheed Martin

スタンフォード大学のVirtual Human Interaction Lab(VHIL)は、コンピューターによって創られた仮想世界を体験できるバーチャルリアリティプログラムを使って、牛の世界を仮想体験させることで、被験者の牛肉摂取量を減らすという実験を行いました。

If You Know How a Cow Feels, Will You Eat Less Meat?: Scientific American
http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=if-you-know-how-cow-feels-will-you-eat-less-meat


実験の内容は、牛になった参加者は牛追い棒でつつき回され、最後には仮想世界に再現された屠殺場に追い込まれることで食用になる牛の気持ちを体感する、といういささか衝撃的なもの。実験後、牛になった参加者たちは1週間に食べたものを記録されました。この研究はまだ終了しておらず、人々は本当に肉を食べなくなるのか?ということはまだ明らかになっていませんが、参加者のコメントによると、「本当に自分が牛だと感じた」、「屠殺場に追われたときはとても悲しかったし、これで死ぬんだなと思った。最後に牛追い棒でつつかれたときは本当に本当に悲しかったよ」と、被験者が牛に共感している様子が分かります。

By IFPRI -IMAGES

牛肉1kgを生産するために必要な穀物量は10kg以上と言われており、牛肉消費量を減らし、そのかわりに野菜食を増やすことは食料問題の解消につながると考えられています。つまり、仮想世界で牛になることによって食料問題を解決できるかもしれない、というのがこの実験の背景にあるテーマなのです。

By Frapestaartje

このような仮想体験を通じて、人間の行動様式を変化させようという試みはこれまでも行われてきました。例えば、VHILは他にも「仮想世界で木を切り倒させる」という実験を行っています。木を切り倒した被験者は、その仮想体験を思い出すことで紙の使用量を減らしたと言っています。

New virtual reality research - and a new lab - at Stanford
http://news.stanford.edu/news/2011/april/virtual-reality-trees-040811.html


この実験の様子がよく分かるムービーはこちら。

Virtual Reality changes Real-Life Behavior - YouTube


実験の参加者はこのようなヘッドマウントディスプレイを頭に装着します。


これで参加者の視界には、あらかじめプログラムされた3Dの仮想世界が広がるという仕組み。


さらに、画像にある金属の装置(hapic device)を握ることで、チェーンソーで木を切り倒す感触まで体験できます。


参加者の視界はこんな感じ。3Dで再現された木をチェーンソーで切ります。


音だけではなくチェーンソーの振動も伝わってくるため仮想世界とはいえ非常にリアルです。


木が切り倒されました。


仮想世界で木を切り倒したあとの参加者は、「不思議な感じだ。木を切り倒したのに、そんな木は(現実には)存在しないなんて……」と困惑気味です。


今回の実験を行ったCody Karutzさんは、「仮想世界で木を切り倒すという経験は、現実世界でとる自分の行動がどれだけ環境に影響を与えるかについて考える第一歩になるのです」と語ります。


スタンフォード大の研究者たちは、牛の世界を体験した人が肉食を減らしたり、木を切り倒す体験をした人が紙の消費を控えたりするのと同様に、人々が仮想体験によって「日々の生活での行いが気候変動にどれだけ影響を与えるのか?」ということを考えるようになる可能性があると期待しているようです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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