取材

コロンビアでは「貧富の差」の中にも全体的な力強さを感じた


マフィア、麻薬、殺人、誘拐というと、今ならメキシコのイメージが強いかもしれませんが、それと同じくらいコロンビアを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。長い内戦の末に治安状況は世界最悪で、昔ならコロンビアを旅するなんて想像もできませんでした。ただ、最近の政府は治安対策にも力を入れて、たくさんの観光客がコロンビアを訪れています。そういう状況なので、自分も南米はコロンビアからのスタートになりました。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。「貧富の差」が内戦の原因とも言われてるのですが、自分が旅した限りではそこまで酷い印象はありません。先進国ではありませんが、途上国とも違った光景が、コロンビアには広がっていました。

◆メデジン
コロンビア第二の都市メデジンでは、富裕層の高層ビル群と貧困層の住宅街が共存していました。メデジンの市内交通は谷となる南北に鉄道、山となる東西には何本かのロープウェイが運行しています。興味があったのでロープウェイで、標高の一番高い駅まで行ってみました。危険だったら素通りするつもりでしたが、これまでの街と同じ雰囲気。「大丈夫だろう」と駅を降りて少し歩いてみます。煉瓦で組み立てた頼りない住宅が立ち並ぶ場所は、生活感があって賑やかでした。お店も普通に並んでいます。危ない目には遇いたくないので、人気のない所は見ていませんが。

谷底に広がるメデジン市街。


ニョキニョキと立ち並ぶ高層ビル群。


高層ビルがある場所は緑も多く静かなエリア。


メデジンを南北に結ぶ市内交通の鉄道は先進国のよう。


鉄道から山の斜面を駆け上がるロープウェイに乗り換えました。


こんな感じのゴンドラで運ばれます。


「Santo Doming」の駅がこのラインの終点。


巨大な装置が動いてました。


駅から眺めた景色。反対側の山の斜面にも街が広がっています。


立ち並ぶ家の奥に薄っすら見える谷底の市街。


斜面に沿って建てられた煉瓦の家々。


生活感の溢れる街並み。


階段。


ちょっとした繁華街。ここの食堂で昼ごはんを食べました。


壁画。


お馬部隊。


平坦じゃないバスターミナル。


急勾配を滑るように走っていくバス。


斜面だから雨水も勢いよく、流れていきます。


ロープウェイのゴンドラの上から斜面を見渡して。


スラム街とも形容されますが、普通のコロンビアの街ってこんな感じですしね。


よく見ると荒さも目立ちますが、それでもそこには普通の生活がある気がしました。


メデジンのセントロ付近にはサイクリングロードも。


人々で賑わう商業地区。


メデジンの繁華街には、この土地出身の芸術家「ボデロ」の作品が展示されています。


ぽっちゃりした姿で表すのが彼の芸術。ユニークな彫像がたくさん並んでいました。


◆他の都市は
「貧富の差」という固定観念で、首都ボゴタに降り立つとそのように感じました。時が止まったかのような古い高層ビルが立ち並ぶ中心部。ただ走り出してみると、コロンビアという国が見えてきます。ボゴタからメデシンに向かう際に、アンデス山脈を登らないといけなかったのですが、どんな田舎でさえそれなりの家が建ってました。電気も通っていて、テレビもあるみたい。コロンビアでは中米のように、トタンやブリキの家々が並ぶ光景を目にすることがありませんでした。メデジンにしろ「貧しくても生活が成り立つ」といった印象を受けました。コロンビアの内戦に「左翼ゲリラを支持する貧しい人々」といった知識があったのですが、幹線を離れた僻地だと状況も変わってくるのでしょうか。

首都ボゴタ(Bogota)のカテドラル(大聖堂)


繁華街。


白で整えられていたポパヤン(Popayan)のセントロはヨーロッパのよう。


セントロの広場が森のようになっていました。


峠を越えた盆地に広がるパスト(Pasto)の市街地。それまで山しかなかったのに、いきなりこんな景色が現れました。


標高約2500mになるパストのセントロ。アンデスの山々とは別世界です。


エクアドルとの国境の街はイピアレス(Ipiales)


イピアレスのセントロ。標高約2900mというのに、10万人を超える人々が住んでいます。


尾根の道沿いに、並ぶ家々。


メデジンへ向けて上っているとCocornaという町が眼下に。道路からは3kmくらいの距離がありました。


Cocornaの次に出てきたSantuarioという町は幹線沿い。町レベルになれば、安宿も食堂も揃っていて旅がしやすいのがコロンビアでした。


ここも尾根に沿って、民家が並んでいます。


峠を越えたらコロンビア中部の都市ペレイラ(Pereira)を通過。


コロンビア南部で泊まった標高約2000mのChachaguiという町。斜面に碁盤目の町が引っ付いてるので、歩くのも大変でした。


イピアレスの手前Tanguaという小さな町。


写真で振り返ってみても、どの街の家も平均化されています。メキシコのように、コンクリートと茅葺の家が並ぶ景色なんてありません。コロンビアよりメキシコの方が、富裕層であれ貧困層であれ、幅があるようでした。

コロンビアでは絶望的な貧困は感じませんでしたが、治安は危険な中米と大差ありません。檻を通してやりとりする商店。街なかでみかける物乞いに、奇声を発する壊れた人も。交差点の信号停止した車を相手にジャグリングなどの曲芸を披露して、お金を集めているのも日常でした。内戦が終結しつつあるというのに、犯罪件数が未だに高い水準なのも怖いところです。

コロンビアの最後はイピアレスの郊外にある教会の見学に行ってきました。


世界一美しいとも称される「ラス・ラハス教会」。ちょうど日曜日なので、ミサ(礼拝)をやっていました。宗教熱心な国なので、地元の人たちで賑わっています。


下からのアングル。


上からのアングル。谷底から張り出すように、建てられた教会。


◆コロンビアの力強さ
中国やケニアなど経済が活発な国ほど、安宿が多いと思っています。たくさんの地元の人たちが泊まるからこそ、宿の値段が下がるという理屈です。逆にセネガルや東ティモールなんかは大変でした。この旅の経験からすると、コロンビアにおける安宿の充実は群を抜いています。一定規模の町にあるのは当然で、ふとした集落であったり、辺りに何も無い場所にも宿が出てきて助かりました。それと同じことが食堂にも言えます。コロンビアの食事情は、前回の記事にさせて頂いたのですが、食堂も宿と同様に豊富で助かりました。走りながら普通の民家にテレビも凄いと感じたのですが、少し人が集まる食堂には液晶テレビです。こういった感じで、コロンビアの力強い点をまとめてみます。

アンデス山中の集落で泊まった食堂を兼ねた宿。


峠のてっぺんにはガソリンスタンドと、これまた食堂を兼ねた宿がありました。宿はワイファイ付き。


食堂もそうでしたが「牛、豚、鶏」が必ずある食スタイル。これも生産から流通まで確立されている証でしょう。


お肉屋さんにも「牛、豚、鶏」の3種類が描かれています。


道路には料金所が設けられていて、通行料が徴収されています。その額も普通車で7000ペソ(約350円)とコロンビアでは一食に相当する金額。ただ、バイクは右脇から払わずに抜けることができます。自転車も。車とバイクで負担が違う仕組みもよくできていました。


路面の悪い区間もありましたが、整備されていた区間だと、このように快適なアスファルト。


道路上では治安対策の一環として警察・軍による検問が行われていました。


活気に満ちていたボゴタの商業地区。


たくさんの物で溢れています。


サイクルスポーツも盛んな国で、週末となればロードレーサーが何台も山を登って行きます。コロンビアではサイクルショップも充実していました。


シマノやキャットアイといった日本メーカーのパーツも。


街をぶらぶらしていたら、携帯のアクセサリーショップで、液晶や基盤といった部品が売られているのを発見。


何かあっても自分たちで、修理をしてしまうんでしょうね。


スーパーマーケットは普通に普及していたのですが、コストコのような倉庫型のハイパーマーケットまであって度肝を抜かれました。


会員制ではなかったので、自分も買物できました。この「ALKOSTO」という店、調べてみるとコロンビア各地に店舗を展開しています。


コロンビアといえばコーヒーも有名です。


みんな飲んでいます。安宿にもフリーコーヒーが置いてありました。


ネスカフェのコーヒー豆もコロンビア産。


そんなコロンビアコーヒーは、こんな斜面で作られていました。


コーヒーに限らず、コロンビアの農業は大変です。パッチワークのような山。


こんな所を耕すなんて。


斜面に作られた稲妻のような道。


コロンビアの力強さは通貨ペソにも表されています。Wikipediaの「ペソ」の項目には

慢性的なインフレで減価は目立つものの、独自単位として1810年に導入されて以来一度もデノミを経験していない通貨。

という記述があります。インフレーションで大きくなった数字の桁を省くデノミネーションは、南米ではほとんどの国で行われています。エクアドルはスクレから米ドルに、ブラジルはクルゼイロからレアルにと通貨そのものが変更されることも。近年では2008年ベネズエラでデノミが実施されました。こうして比較してみると、コロンビアのペソの強さは際立ちます。

◆コロンビアの人たち
峠の頂上にあった食堂で盛り上がった男性たち。


メデジンを抜けた峠の頂上(約2450m)で、仲良くなった地元のサイクリスト。日曜日なのでトレーニングに来ているようでした。


オフロードバイクを積んだ車が停まって……


道脇での1枚。南米を南下するスコットランド人のチャリダーを捕まえて少しだけ一緒に走りました。


カリ手前で泊まった町で地元の人たちと。誰かが冗談で赤いシャツの男性を「モラレス(ボリビアの大統領)」と言って大爆笑。しかも彼はエクアドル人というから何が何やら。楽しいひと時でした。


食事をしたレストランの少年。携帯で写真を撮らせてあげたので自分も一枚。「誰の携帯なの?」と聞くと「自分のだよ」というから驚きです。


誕生会で箱ワインをまわして、盛り上がっていた青年たち。浮かれるのもいいけれど、やるときはやってくれよ。「コロンビアはいい国だった」と伝えた自分の気持ちは、嘘なんかではないのだから。


ベネズエラ、エクアドルの反米左翼国家に挟まれているのにも関わらず、親米を貫く姿勢にアメリカ型の貧富の差が激しい社会を想像していたのですが、実際に旅をしてみるとそこまで酷い感じではありませんでした。お金を使う人たちがいるからこそ、貧しい人たちでも食にありつけるのは事実で、どんな国であれ経済発展と格差是正のバランスには頭を悩ませています。南米ではブラジルに次ぐ約4500万人の人口を抱えているからこそ、海外からも熱い視線が送られています。実際にメキシコ資本のコンビニ「OXXO(オクソ)」が上陸もしていますし。内戦も終結しつつある今、上手くバランスを取って更なる発展へと進んでいって欲しいものです。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
)

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in 取材, Posted by logc_nt

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