サイエンス

コーヒーとビールは一体どちらが想像力を豊かにする作用があるのか

by VictorNikolai Vassiliev

コーヒーを飲むと目が覚めたり、集中力が増したりするので、朝や仕事の前にコーヒーを1杯飲むということはよくあります。反対にビールを朝から飲むことは少なく、学校や仕事が終わった後に飲んでリラックスすることが多いです。コーヒーとビールは一見まったく逆の作用があるように思えますが、一体どちらの飲み物がよりクリエイティブになれるのか疑問に思ったカナダのミカエル・チョーさんが自身のブログに独自に調べた結果をまとめており、興味深い結論に至っています。

Coffee vs. beer: which drink makes you more creative? — What I Learned Today — Medium
https://medium.com/what-i-learned-today/f7fcb3b786b1

カナダのモントリオール在住のチョーさんはコーヒー党で、ブログに書く内容を決めていないときはいつもコーヒーを飲んでから、書き始めていたそうです。しかしながら、モントリオールでは最近バクテリアが水道水に漏れてしまい、数日間誰も水を飲むことが許可されないという事件が発生。チョーさんはコーヒーを作ることができず、何かで代用できないか考えたところ、ビールを飲むことにしました。ビールを飲んだチョーさんは、コーヒーとビールを飲むと、どちらがよりクリエイティブになれるのか、ふと疑問に思ったとのこと。

By Coal Miki

科学的見地から見ると、脳内に残っている過去のアイデア同士がつながって新しいアイデアが生まれることをクリエイティブ、または創造性と言います。脳内で古いアイデア同士をつながらせる働きをするのが、アデノシンのような神経伝達物質で、エネルギーを全て消費してしまうとアデノシンがアデノシン受容体とひっついてしまうため、古いアイデア同士の接続を遅くしてしまうとのこと。

いったん体内のエネルギーが少なくなると、アデノシンは脳にもっとゆっくりしなさいと警報を出します。そのため、仕事や運動の後にはエネルギーを大量に消費して脳が通常のスピードで働かないので、疲れたと感じるわけ。エネルギーは休憩しないと戻ってきませんが、秘密の武器を持っていれば話は別だと、チョーさんは言います。

By Harald Groven

チョーさんは疲れていてもコーヒーを飲むと集中力が増し、会話にも詰まらなくなり、すらすらと言葉が出てくるそうです。コーヒーに含まれるカフェインは、アデノシン受容体をブロックし、アデノシンが受容体にくっつくのを防ぐ作用があります。エネルギーを消費するとアデノシン受容体とくっついているはずのアデノシンが、カフェインの作用によってくっつかないため、脳はまだまだたくさんのエネルギーが余っていると勘違いしてしまいます。

また、アデノシン受容体がカフェインによってブロックされると、脳内にグルコースドーパミングルタミン酸のような神経の運動を活発にさせる物質が、いつも以上に働き出します。このため、コーヒーを飲むと元気が出たり、集中力が増すそうです。

By Oberazzi

その反面ビールに含まれるアルコールは集中力や周囲への注意力が落ちますが、創造性が豊かになるのを手助けしてくれると、チョーさんは言います。

イリノイ大学が行った実験の結果アルコールの意外な作用がわかっています。実験は、男性40人に創造力を測る言葉ゲームをしてもらい、そのスコアを計測するというもの。言葉ゲームは、最初に提示された3つの単語に単語を1つくっつけて、別の言葉にするというもので、例えば「Pit(穴)」は「Arm(腕)」「Peach(桃)」「Tar(タール)」にくっついて「Armpit(脇の下)」「Peachpit(桃の種)」「Tarpit(タール抗)」になります。被験者の男性40人のうち20人にビールを2杯飲んでもらい、アルコールを摂取したグループとそうでないグループにわけて実験が行われました。

この実験では、事前にビールを飲んでいたグループは酔っ払っていないグループよりも問題を40%多く解けたという結果が出ました。

また、別の実験では、飲酒したグループとそうでないグループの2つに分けられた18人の広告クリエイティブディレクターたちに、トピックを渡して、3時間以内でできるだけたくさんのアイデアを考えてもらうというもの。実験の結果、飲酒したグループは酔っ払っていないグループより多くのアイデアを考えついただけではなく、ベスト5のアイデアのうち4つを生み出しました。

アイデアを思いつく瞬間を意味する「Eureka Moment」について研究していた神経科学者によると、耳の少し上にある脳内の上側頭回という部分が活発に動いている時にEureka Momentは発生し、また、Eureka Momentが起こる5秒前に、上側頭回の動きを活発にするアルファ波が大量に出ているとのこと。アルファ波の放出量はリラックスしていると増えることがわかっているので、散歩中やシャワー中、またはトイレでリラックスしているときに、新しいアイデアを思いつくことの説明がつくという訳です。チョーさんによると、アルコールのリラックス作用が、Eureka Momentが起こる時と同じ現象を上側頭回に起こし、創造力を豊かにするとのこと。

By Saad Faruque

反対にコーヒーは、創造力を豊かにするわけではなく、集中力や作業スピードを上げるので、アイデアを思いつこうと試行錯誤する作業には向いていません。ただ、思いついたアイデアを実行する力を助けてくれる作用はあります。ですので、あまり思考を求めない作業をする場合、コーヒーはビールよりも効果を発揮するはず。ビールはどちらかというと、考えてアイデアをひねりだすという作業にむいているようです。創造力という点だけでコーヒーとビールを比べると、ビールのほうが想像力を高めるのに向いていそうですが、実際にはどちらの飲み物も、本来なら眠ったり、休憩したりすることで自然に起こるはずの化学変化を脳内で起こさせるので、チョーさんはコーヒーやビールが想像力を高めるために飲む特効剤と考えるべきではない、としています。

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in サイエンス,   , Posted by darkhorse_log