コミケ準備会などが「児童ポルノ禁止法案」に反対する理由まとめ、アニメ・マンガ・CGなどにも影響大

by Maddie Keating

コミケ準備会がアニメ・マンガ・CGなどをも視野に入れた「児童ポルノ禁止法案」に対して反対の立場を取ることを表明しました。最大のポイントは、現実世界の実態としての被害が存在する児童虐待・児童の性的搾取に立ち向かう取り組みはもちろん支持するが、アニメ・マンガ・CGなどの表現規制については反対することを鮮明に打ち出してきたという点です。

「児童ポルノ禁止法案」に対する意見表明
http://www.comiket.co.jp/info-a/C84/C84Notice2.html


コミックマーケット準備会が危惧している点は以下のようになっており、「表現規制」につながる部分について反対している、ということです。

私たちコミックマーケット準備会は、全国同人誌即売会連絡会による『「児童ポルノ禁止法」改訂案への反対声明』に全面的に賛同いたします。また、日本漫画家協会様の声明、日本雑誌協会様・日本書籍出版協会様の声明(PDF)、いずれに対しても強い支持を表明いたします。そして私たちは同時に、現実に被害者が存在する児童虐待、児童の性的搾取に立ち向かう取り組みを支持することを表明いたします


今回の法案において、私たちが危惧するのは「政府は、児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、擬似児童ポルノ等を言う。)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進する」という附則の存在です。


そもそも今回の「児童ポルノ禁止法案」の中身がどのようなものかというのは、山田太郎参議院議員が自身のサイトに掲載したPDFファイルを見るとわかります。

【PDFファイル】「児童ポルノ禁止法」一部改正案の概要
http://taroyamada.jp/wp-content/uploads/2013/04/jipo.pdf


今回、コミックマーケット準備会などが危惧しているのは以下の「検討規定」の部分です。


児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、擬似児童ポルノ等)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究


上記の一体何がダメなのかという点については、コミックマーケット準備会が賛同することを表明している全国同人誌即売会連絡会によって出された「「児童ポルノ禁止法」改訂案への反対声明」内にて分かりやすくまとめられており、「規制を推進するための瑣末な「証拠作り」につながる」と指摘しています。

全国同人誌即売会連絡会 - 「児童ポルノ禁止法」改定案への反対声明
http://sokubaikairenrakukai.com/news1305.html


過去の児童ポルノ禁止法改定の際も再三議論されたように、規制の対象となると思われる漫画・アニメーションの受容と、児童の権利を侵害するような行為の関連性は、メディア効果に関する研究潮流では、既に否定されている仮説です。ということは、この論点について「調査研究」することには意味がなく、規制を推進するための瑣末な「証拠作り」につながることを強く懸念します。


この点については表現規制問題に詳しい京都大学の曽我部真裕教授も3つの問題点があるとして、その中の2点目で以下のように指摘し、「法律にその目的と関係のない規制を紛れ込ませるのは不適切」であるとしています。

「漫画・アニメ」も視野に入れた「児童ポルノ禁止法改正案」の問題点とは?|弁護士ドットコムトピックス
http://www.bengo4.com/topics/432/


(2)被害児童が実在しない創作物の規制は、問題が全く異なる

「附則の2条にある『児童ポルノに類する漫画等』を、調査研究対象とするという点は、大きな問題をはらんでいます。まず前提として、児童ポルノを規制するのは、実在する児童の保護が目的です。しかし、具体的な被害児童が登場しない『児童ポルノに類する漫画等』はあくまで創作物で、『擬似児童ポルノ』とも言えない全く異質のものです。法律に、その目的と関係のない規制を紛れ込ませるのは不適切です。それだけでなく、不必要な規制は表現の萎縮効果を生み出しかねません」


また、社団法人日本漫画家協会も以下のような声明を発表し、「単純所持まで規制の対象としており、仮にマンガ・アニメなども規制の対象になると、諸外国のような文化的除外規定のない我が国では、多くの漫画家が新たに描き起こす、未来の作品全般に対する重大な悪影響はもちろん、過去作品の原稿までが新しい規制に抵触してしまいます」ということで、今回の規制法案に反対する立場をはっきり以下のように表明しています。

児童ポルノ規制法案に向けての意見書
http://www.nihonmangakakyokai.or.jp/news.php?tbl=information#record3136


ただし、その対策の一部として、マンガ・アニメという、フィクションの世界までを規制の対象とする可能性が、本法案の「検討事項」として盛り込まれていることには、強い反発と疑問を感じざるを得ません。

今回の法案では、単純所持まで規制の対象としており、仮にマンガ・アニメなども規制の対象になると、諸外国のような文化的除外規定のない我が国では、多くの漫画家が新たに描き起こす、未来の作品全般に対する重大な悪影響はもちろん、過去作品の原稿までが新しい規制に抵触してしまいます。

そして膨大にある過去作品原稿の、該当する恐れのある箇所を細かくチェックするという、あまりにもナンセンスな事態が発生し、さらにそれを所持することを禁じている法律に、あろうことか原稿の廃棄を強要されてしまうのです。

いわゆる「焚書」のような事態を強いる法律が、この現代社会で文化的、文明的な施策だといえるでしょうか。


さらに、「一般社団法人 日本雑誌協会 人権・言論特別委員会」と「一般社団法人 日本書籍出版協会 出版の自由と責任に関する委員会」も「本来、児童を守るため、という極めて人道的な目的に立つ法律が、大きな副作用を持つ表現規制に変質している」として、反対声明を以下のように出し、反対の立場を表明しています。

【PDFファイル】「児童ポルノ禁止法」改正法案への反対声明(雑協、書協連名)(2013/5/29)
http://www.jbpa.or.jp/pdf/documents/seimei130529.pdf


●本来の目的は「実在する児童の人権保護」なのに、なぜ「漫画・アニメ」を加えるのか

私たち出版関係者は、日本の貴重な漫画文化が破壊される危険性が非常に高い「附則」にも異議がある。なぜなら、その「附則」には「検討条項」として、漫画・アニメという被害児童が実在しない世界にまで法規制をおよぼす条項が盛り込まれているからだ。これは創作者とともに漫画文化を支えてきた立場から見過ごせない問題である。まず何より、この「検討条項」の発想は法本来の主旨とはかけ離れたもので、児童保護の名を借りて不要な表現規制をかけ、読者から漫画を読む権利を奪うものといえる。そうした過剰規制は表現の萎縮を招き、漫画という日本の誇る表現形態の破壊につながりかねない。

仮に漫画・アニメなども規制対象となると、諸外国のように学問や芸術の分野に対する除外規定のないわが国では、将来の創作への重大な悪影響はもちろん、過去の作品までが新しい規制に抵触してくる。本来、児童を守るため、という極めて人道的な目的に立つ法律が、大きな副作用を持つ表現規制に変質していることは、読者、つまりすべての日本国民の「知る権利」をも脅かすことにもなりかねない。

私たちは、現行の曖昧な定義をそのままに「単純所持禁止・処罰」規定を設けることに反対する。また、世界に誇る創作物である「漫画・アニメの新たな法規制」を検討することにも反対の立場を表明する。


また、今回の「児童ポルノ禁止法案」は「単純所持禁止」という項目が含まれており、勝手にパソコンの中に児童ポルノ画像が保存されていた場合、本人がいくら否定してもそれ以外の状況から「推認」されてしまうという危険性があるとして、元検事である落合洋司弁護士が以下のように指摘しています。

「児童ポルノ」単純所持禁止の問題点 「元検事」落合洋司弁護士が指摘|弁護士ドットコムトピックス
http://www.bengo4.com/topics/218/


たとえば、メールで一方的に児童ポルノ画像が送りつけられたり、たまたま児童ポルノの画像が掲載されたサイトを見てしまうなど、何らかの理由でパソコンの中に画像データが入り込んだ場合でも、児童ポルノに関する捜査の対象になる怖れがあるのだという。

「このような場合、本来ならば『故意がない』として犯罪は成立しないだろう。しかしパソコン内のデータについて、利用者が『児童ポルノと知らなかった』と故意を否認していても、それ以外の状況から故意が『推認』されてしまう怖れがある」

パソコンがからんだ犯罪に関わっていないにもかかわらず逮捕されてしまった事例としては、誤認逮捕が続いた「遠隔操作事件」が記憶に新しい。そのような事件と同様の冤罪が起きるリスクがある、と落合弁護士は警鐘を鳴らす。


要するに遠隔操作による冤罪事件と同じ事が起きるわけで、たとえ「自分には関係が無い」と思っていてもインターネットがある限り、いつどこで被害者になるかは分かりません。たとえ有罪にはならなくても、逮捕されただけで社会的には立場を無くしたも同然で、実際に遠隔操作事件の犯人「かもしれない」として逮捕された容疑者は「5月中旬に会社を懲戒解雇された」ことが明らかになっており、「出口のないトンネルの中にいる気分。自殺した方が楽だといつも考えている」と述べています。

つまり、最終的な判決が出るまでもなく、警察から疑いをかけられた時点で人生が終わる可能性がある以上、「児童ポルノ禁止法案」自体が危険極まりないことになります。

なおかつその延長線上でアニメ・マンガ・CGなども表現規制されれば、一体どれだけの無実の罪が生まれるのか、そしていつ自分にも無実の罪が降りかかるのかはわかりません。

こういったことを知った上で、今回の「児童ポルノ禁止法案」について賛成なのか、それとも反対なのかを考え、何を行動するべきか決めなくてはならないときが来た、というわけです。

・つづき
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