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メモ

マウスを人間の代用にした医学実験の一部は時間の無駄、と研究者が警告

By Rick Eh?

過去数十年にわたり実験用マウスは病気や怪我を研究するために人間の代用として用いられてきました。しかし、敗血症に関してはマウスを用いた実験が誤った結果を導き出してきた可能性がある、とニューヨークタイムズが報じています。

Health Testing on Mice Is Found Misleading in Some Cases - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2013/02/12/science/testing-of-some-deadly-diseases-on-mice-mislead-report-says.html


同紙によれば、マウスによる実験が全ての人間の病気の研究に役に立たないわけではないものの、免疫系に関わる病気については厄介な問題を含んでいるとのこと。米国科学アカデミー紀要に発表された論文はマウス実験に基づいて開発され莫大な費用が投じられた150もの敗血症の治療薬が人間の役に立たなかった事例を指摘。マウスは人間の敗血症に似た症状を起こすものの、それが人間のものとは大きく異なるため実験結果が薬の開発に使用するには不適切であったと主張しています。この論文の著者であるマサチューセッツ総合病院の研究者H. Shaw Warren博士は「我々の論文は、現在、少なくともパラレルな状況が存在している可能性が高いということを指摘したのです」とコメントしています。

また、この論文の研究者たちと関わりのない専門家の1人も「米国では年間75万人が敗血症にかかりその1/4から半数が亡くなります。また、敗血症には170億ドルの予算が充てられていますが、集中治療室における主要な死亡原因である状況は変わっていません。しかし、この論文の研究結果によって世界的な流れが変わる可能性があるのではないでしょうか」と言い、その他の専門家たちもこの論文の内容と重要性に対して驚きの声を上げています。

From Wikipedia

敗血症は有毒な分子や細菌、ウィルス、真菌から外傷や熱傷による損傷を受けた細胞から放出されたタンパク質に対して白血球などが過剰反応を起こすという症状です。このような症状を引き起こしている患者に対して、10年の歳月をかけて全米で39の研究機関が行った調査によると白血球が過剰に反応を起こし始める際に特定の遺伝子が作用していることが判明したそうです。その結果、特定の遺伝子と白血球の関わりにいくつかの興味深いパターンがあることがわかりましたが、マウスにおいては同じ遺伝子が人の場合と同様の働きをしたのかは明らかになりませんでした。この結果からマウスの実験が人間の症状を再現できるとは限らないのではないのかという疑いが生まれ、後に研究チームの一員であったスタンフォード大学の遺伝子研究の専門家Ronald W. Davis氏は「我々(人間)はマウスと同じか? という疑問を考え始めざるを得なかった」と述べています。

By gedankenstuecke

研究チームは人とマウスの反応に類似点が見つかることを期待して研究を続けましたが、結局何も見つけることはできませんでした。その結果、彼らはマウスと人間の遺伝子の働き方には類似性が無い場合があるという研究結果をネイチャー誌とサイエンス誌に送りましたが、論文として掲載されることはありませんでした。両誌は「掲載をしなかった理由については公開しておりません。また、実際にこの論文を受け取っているかに関しても公表しない、というのがポリシーです」と発表。実際、サインス誌は年間1万3000の論文を受け取り、その約7パーセントを掲載しているに過ぎないので、この論文が掲載されなかったことは驚きには値しないかもしれません。しかし、研究チームの一員であったデイビス氏は論文の査読を行った人々は科学的な誤りを指摘せず「論文が間違っている理由は明らかではないが、その可能性がある」というような曖昧なコメントしか得られなかったと指摘。他のある研究者は「論文を読んだ際にマウスの研究結果が、これほどまでに信頼に足らないということにひどく驚いた。研究資金を獲得するにはマウスを用いた実験を提案しなければならないのに」と述べています。

By Mustafa Khaya

細菌による感染症でマウスを死なせるのはとても困難であり、ゴミの周りで生活し腐った物を口にすることもあるマウスは人間と同じではありません。研究者たちはマウスになぜ耐性があったのか見つけ出すことができれば人間の病気の治療に役立てられるかもしれないとする一方、他の専門家は「この論文が指摘していることはつまるところ、患者の所に行き細胞を採集することの重要性です。敗血症を理解するにはマウスではなく患者を相手にしなければならないのです」と述べています。

というわけで、マウスと人間が同じではないというのは割と当たり前のことのように思えますが、人体実験を行えない以上何らかの生き物を代わりにせざるを得ないという事情に加えて、おそらくはコスト的な問題もあってマウスが万能の代用品であるかのように扱われるようになってしまった状況に疑問が投げかけられている、ということのようです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log