レビュー

Photoshopで40分かかっていた作業が5分でできる「神速Photoshop」


結果が同じなら過程はどうでもいいというのは嘘で、むしろ結果が同じなら素早い方が良いわけです。作業のスピードを上げるというのはキーボードのタイピング速度を物理的に高速化したりすることではなく、「効率化」することで無駄を省き、よりスマートにすることによって「最小限の労力で最大限の成果を上げる」ことを可能にする技術を習得することであり、そういう点にフォーカスを絞り込んだ書籍が「神速Photoshop」です。

献本された実物のページをめくると最初に目に飛び込んでくるのがこの「神速デザイン 五カ条」。中身は「ショートカットを活用しよう」「最新機能を使いこなそう」「目的によってツールを使い分けよう」「「直し」に強いデータを作ろう」「面倒な作業は自動化しよう」となっており、どれもこれもうなずけるものばかり。


「本書の使い方」のさらに下部を見てみると「本書の作例データは以下のURLからダウンロードできます」ということで、このあたりはさすがイマドキの書籍、確かに誌面上だけの作例よりも実物があった方がイメージはかなりわきやすくなります


で、肝心の中身はというと、例えば「006.グラデーションツールだけで集中線を描く」の場合は見開きでこうなっています。右下の完成例がシャレになってません。


従来の方法では40分かかったところをこのテクニックならなんとわずか5分、実に8分の1も時間が短縮されて高速化されています


「032.画像を切り抜きながら傾きも同時に補正する」の場合、10分かかっていた作業がなんと1分に。この手のPhotoshop関係のスキル本は2000年以降のものを大体読んでいるので「ビッグマウスすぎるだろう、そんなの一発でできるわけがない」と思ってよく読んでみると「CS6」の新機能を使うとのこと。CS6はまだ本格的に使っていないのでこれはいい情報。


40分の作業を10分に短縮する「039.人物写真の肌色はスキントーンでサクッと補正」というスキルも「スキントーン……?」ということで聞き慣れない言葉であったので、読み進めていくとやはりこれも「CS6」のみの機能。なんというか、先ほどから「なんだそれは?!」と思って目をとめるとことごとく「CS6」のみの新機能が目白押しで、段々と「この本はCS6を買わせようというAdobeの陰謀なのか……?そういえばなぜCS3以上なんだ、CS2が切り捨てられている理由はもしかして……」などと余計な勘ぐりをしてしまうほど。


段々と疑心暗鬼になってきたのですが「046.明るさ、コントラスト、色バランスをレベル補正で一発調整する」のように、ちゃんとCS3以上で使える汎用的な知っているのと知らないのとでは天地の差になるスキルもあります。


「057.レンズフィルターとチルトシフトで手早く料理写真にする」はなかなかすごいのでほほーっと思って見てみるとまたしても「CS6」のみ。


「077.「フィールドぼかし」で選択範囲を作らずにまとめてぼかす」というのも「おお」と思ってよく見るとやはり「CS6」のみ……さっきから気になる機能はことごとくCS6のみの機能なので、これはやはりCS6購入を検討せよということに違いありません。


割とヨサゲだったのはCS3以上で使える「086.ピントがバラバラの写真からピントの合った写真をパッと作成する」という技術、40分の作業が5分に。


かと思えば「099.iPhone 4のグリーンスポットを一気に補正する」というのもあり、胸に迫るものがあります。


気になる価格は新品だと2520円、Kindle版だと2400円となっていますが、ページを開きっぱなしにしやすい製本ではなく、昔からよくある代わり映えしないテクニック本の製本そのものなのが非常にもったいないところ。確かに一度覚えれば二度とページを開くことはないとはいえども、ここはしっかりと手で押さえなくても閉じない製本加工「クータ・バインディング(リンク先はその誕生秘話、手の不自由な友人の「手で押さえなくても読める本が欲しい」の一言がきっかけとなって開発された技術)」のようなものにすべきだったのかも。

なお、身もフタもないこととして、もうはっきりわかるように、この手の本をまったく読んだことがない人であれば即買いレベルのいい本なのですが、過去に同じようなものを何冊も目にしていると「こんな機能があったのか!これなら確かに作業効率が高まる!」と思って見てみると「CS6」のみの新機能であったりすることが多々あるため、以下に通常の目次に加えて、どのバージョンを使うことを想定しているのかを書いておきます。購入前に自分のPhotoshopのバージョンと見比べておくと買う価値があるかどうかがはっきり分かり、むしろ逆にこの目次を見て「あの機能が使えるならCS6にバージョンアップする価値はある!」と判断する材料にしてみる方が正しいような気もします。ざっとカウントすると103個のテクニックのうち27個、全体の4分の1以上が「CS6のみ」の新機能です。

ASCII.jp:デザイナーのための時短本、第1弾『神速Photoshop』発売
http://ascii.jp/elem/000/000/752/752391/

◆Chapter01 素材作りの神速テクニック(担当:石嶋未来)
001.スクロールでつなぎ目のないパターンをすばやく作る[CS3以上]
002.パターンを定義して伸縮自在な三角ラインを作る[CS3以上]
003.シェイプやブラシのプリセットを整理して日常作業を効率化[CS6のみ]
004.マウスを使わずブラシサイズやカラーを変更する[CS5以上]
005.混合ブラシツールで写真を手軽に絵画らしくする[CS5以上]
006.グラデーションツールだけで集中線を描く[CS3以上]
007.ランダムに配置するブラシで星を散りばめる[CS3以上]
008.覆い焼きツールで陰影を手軽につける[CS3以上]
009.ストロークオプションで変更可能な点線を描く[CS6のみ]
010.ぼかし・波形の合わせ技で思い通りの煙をすばやく描く[CS3以上]
011.直接加工してしまった画像をすばやくリカバリーする[CS3以上]
012.「コンテンツに応じて拡大・縮小」で足りない部分をサクッと補う[CS5以上]
013.不要な部分は「コンテンツに応じる」で一気に取り除く[CS5以上]
014.「コンテンツに応じた移動ツール」で写真の構図を手早く調整する[CS6のみ]
015.足りない髪の毛はブラシツールですばやく描き足す[CS5以上]

◆Chapter02 ロゴ作りやテキスト処理の神速テクニック(担当:ハマダナヲミ)
016.文字をシェイプ化して飾り文字をすばやく作る[CS6のみ]
017.OpenTypeで表情豊かな組み文字を手早く作る[CS6のみ]
018.文字の輪郭をシェイプのストローク機能で破線にする[CS6のみ]
019.シェイプのストローク機能で文字をすばやくポップに[CS6のみ]
020.立体的な文字の影をチルトシフトですばやく作る[CS6のみ]
021.ニアレストネイバー法で変形してゲーム風ロゴをサクッと作る[CS6のみ]
022.文字スタイルを保存して書式設定を使い回す[CS6のみ]
023.モノクロ2階調でFAX風カスレ文字を作る[CS3以上]
024.らくがき風文字をパスとブラシで手早く描く[CS3以上]
025.蛍光ペンで縁取った文字をパスとブラシですばやく作る[CS3以上]
026.曲線文字をワープテキストでパパッと組む[CS5以上]
027.レイヤーマスクで直しに強いドット柄のロゴを作る[CS3以上]
028.ふんわり文字をレイヤーマスクとブラシでサクサク作る[CS3以上]
029.Photoshopだけで長方形以外のエリアに文字を流し込む[CS3以上]
030.文言修正に強いデータをスマートオブジェクトで作る[CS3以上]

◆Chapter03 選択と切り抜きの神速テクニック(担当:浅野桜)
031.新しい切り抜きツールで修正しやすいデータを作る[CS6のみ]
032.画像を切り抜きながら傾きも同時に補正する[CS6のみ]
033.数値入力で正確な位置にガイドを一発で引く[CS6のみ]
034.自動選択ツールのサンプル範囲で選択範囲をスピード指定[CS6のみ]
035.「選択範囲を変更」で自然な境界線を速攻で手に入れる[CS3以上]
036.ふわふわした猫を「境界線を調整」で簡単に切り抜く[CS5以上]
037.クイックマスクで選択範囲をすばやく作成する[CS3以上]
038.パスとチャンネルで髪の毛を早く正確に切り抜く[CS3以上]
039.人物写真の肌色はスキントーンでサクッと補正[CS6のみ]
040.物撮り写真は色域選択を活用してすばやく補正[CS3以上]
041.「コンテンツに応じた移動」で被写体の位置を手軽に移動[CS6のみ]
042.「コンテンツに応じて拡大・縮小」で被写体の距離をすばやく変更[CS4以上]
043.スポット修復ブラシツールで余計なモノを一瞬で消す[CS5以上]
044.遠近法の切り抜きツールで看板のパースを修正しながら切り抜く[CS6のみ]
045.Vanishing Pointフィルターで看板をすばやくハメコミ合成する[CS3以上]

◆Chapter04 色や明るさを調整する神速テクニック(担当:服部紗和)
046.明るさ、コントラスト、色バランスをレベル補正で一発調整する[CS3以上]
047.黒つぶれした写真のディテールをシャドウ・ハイライトで手早く直す[CS3以上]
048.「特定色域の選択」で白けた空を一発で鮮やかな青にする[CS3以上]
049.トーンカーブだけで落ち着いた金属の風合いを出す[CS3以上]
050.逆光写真を「自動選択」ですばやく・きれいに補正[CS5以上]
051.「自然な彩度」とシャープの合わせ技で写真をパッと鮮やかにする[CS4以上]
052.色相・彩度を使って一部の色をサクッと変える[CS3以上]
053.レンズフィルターで直感的に写真のくすみをとる[CS4以上]
054.カラーモードを変えずに雰囲気のあるモノクロ写真を作る[CS4以上]
055.レンズフィルターで青みがかった古い写真をスピード表現[CS3以上]
056.鮮やかな写真を「白黒」でセピア色に一発変換[CS3以上]
057.レンズフィルターとチルトシフトで手早く料理写真にする[CS6のみ]
058.グラデーションマップとレイヤーで効率よくシルバー調に変える[CS3以上]
059.冬の草原が「色の置き換え」でパッと夏の草原に[CS3以上]
060.カラールックアップのプリセットで色調をワンタッチ補正[CS3以上]
061.彩度調整の手間を省くLabカラーでコントラストを変更する[CS3以上]
062.カスタムCMYKで2色刷データを手早く作る[CS3以上]

◆Chapter05 レイヤーの神速テクニック(担当:加藤才智)
063.属性パレットで選択範囲をすばやくぼかす[CS6のみ]
064.特定のレイヤーにピンポイントで調整レイヤーを適用する[CS3以上]
065.スマートガイドのアバウトなドラッグ操作で正確にレイアウトする[CS3以上]
066.レイヤーフィルタリングで特定のレイヤーを一発で探し出す[CS6のみ]
067.レイヤースタイルのブレンド条件でラフでの切り抜きを省略[CS3以上]
068.連写した写真の合成で不要な要素を一発消去[CS3以上]
069.フレームアニメーションを利用してラフを見比べる[CS3以上]
070.複雑なパスはIllustratorで作って急な修正にもスピード対応[CS3以上]
071.スマートオブジェクトレイヤーで劣化させずに効率よく作業する[CS3以上]
072.多用する画像はスマートオブジェクトで一括編集[CS3以上]
073.シェイプレイヤーの輪郭に一発で点線を描画する[CS6のみ]
074.ストロークの点線描画で写真を切手風にサクッと加工する[CS6のみ]
075.チャンネルを使ってダブルトーン風の加工を一気に仕上げる[CS3以上]
076.チャンネルの濃淡を使って日に焼けたポスターを作る[CS3以上]

◆Chapter06 画像修正の神速テクニック(担当:浅野桜・石嶋未来)
077.「フィールドぼかし」で選択範囲を作らずにまとめてぼかす[CS6のみ]
078.パッチツールを使ってネコの柄をスピード移植[CS3以上]
079.コピーソースパレットでスタンプツールの作業を効率化[CS3以上]
080.スキントーンの肌補正で女性の肌を一気になめらかに[CS6のみ]
081.混合ブラシツールでなぞるだけでモデル風の写真に[CS3以上]
082.ゆがみフィルターで目鼻や輪郭をすばやく整える[CS3以上]
083.パペットワープで人物のポーズを自在に変更[CS5以上]
084.ハイパスフィルターで素材の質感をメリハリ補正[CS3以上]
085.Photomergeを使ってパノラマ写真を一瞬で作る[CS3以上]
086.ピントがバラバラの写真からピントの合った写真をパッと作成する[CS3以上]
087.広角補正フィルターでゆがみ部分を一発補正する[CS6のみ]
088.レンズ補正フィルターでトイカメラ風の写真をサクッと作る[CS5以上]
089.商品写真の映り込みをゆがみフィルターでパパッと作る[CS4以上]
090.テクスチャーと置き換えフィルターで水面のゆらめきを手早く表現[CS3以上]
091.フェードの活用で微調整も時間短縮[CS3以上]

◆Chapter07 自動化の神速テクニック(担当:加藤才智)
092.大量のRGB画像を一括でCMYK化してEPS保存する[CS3以上]
093.フォルダ内の画像をまるごとサムネイルシートにする[CS3以上]
094.大量の画像にダミー文字を入れて上書き保存する[CS3以上]
095.たくさんの写真に銀塩写真風の縁取りを一発でつける[CS4以上]
096.レンズ固有の色収差を一度に補正する[CS3以上]
097.複数の画像をスクリプトでレイヤーにまとめる[CS3以上]
098.複数の画像の色調を1つの画像の色調に同調させる[CS3以上]
099.iPhone 4のグリーンスポットを一気に補正する[CS3以上]
100.レイヤーを書き出して素材として使い回す[CS3以上]
101.たくさんの画像をカラールックアップでさらっと夕景に変更[CS6のみ]
102.大量の人物写真をドロップレットでまとめて色調補正[CS6のみ]
103.Adobe Bridgeを使ってファイル名を一括変更する[CS3以上]
付録:Photoshop CS6の新機能、作業効率を上げるショートカットキー

Amazon.co.jp: 神速Photoshop [グラフィックデザイン編]: 浅野桜, 石嶋未来, 加藤才智, 服部紗和, ハマダナヲミ: 本

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in レビュー,   デザイン, Posted by darkhorse

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