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ディズニーのすごさがその高いクオリティと完成度ではっきりわかる短編アニメーション「Paperman」


セリフは一切なしで全編で約6分半、徹頭徹尾、細部から動きに至るまで圧倒的なまでのクオリティの高さを誇っているのがディズニーの短編アニメーション「Paperman(紙ひこうき)」です。アカデミー賞にもノミネートされるほどの完成度となっており、YouTubeにあるディズニー公式チャンネルで全編フルバージョン(フルHD版あり)が公開されています。

Paperman (full HD) - John Kahrs - YouTube

※右下の設定から3Dはオン/オフすることが可能で、1080pのフルHD再生もOK

さえない顔の男性サラリーマンが駅に突っ立って電車がくるのを待っています


ゴゴーッと通過していく電車


どこからか飛ばされた紙が一枚、男性の肩に貼り付きます


さらに風が吹いて飛ばされ、それを追っかける女性


戻ってきました、かなりの美人さんです


目が合いそうになったので思わず避ける男性


チラッチラッ、ソワソワ


再び電車


男性の手元の紙が1枚、ばさっと飛ばされて女性の顔面を直撃


呆然とする男性


あわてて紙をどけると……


目をつむっている女性


目を開けて視線を男性の方へ


一目惚れで放心状態の男性


紙を見て何かに気づき、突如として吹き出す女性


何事かと思って紙を見てみたところ、そこには口紅の跡、キスマークがハンコのようになって押されています


男性も苦笑い


が……


女性は電車に乗ってしまい、ドアが閉まっていきます


あ……という感じの男性


女性もチラッと気になったのか振り返るものの……


発車する電車、置き去りの男性、もうどうすることもできず、あっという間の出会いと別れ


先ほどのことが気になって仕事が手に付きません


机の上のキスマーク付き書類をぼーっと眺めていると、どさっと書類の束が。


見上げるとそこには上司の姿


チラッ


仕事を続行しようとした矢先、突如として突風が吹き、大事なキスマークの付いた紙がひらひらと窓の外へ


あわててつかみとります


セーフ


ほっとひといき


が、窓の外に何かを発見


向かいのビルに見えるあの姿は?!


そう、先ほどの、例のキスマークの彼女ではありませんか


なんという偶然、一生懸命手を振るものの、気づいてもらえません


わざとらしい咳払いをして仕事に戻るよう注意を促す上司


席についてしばし考え込みます、果たしてどうしたものか。


仕事用の書類に手を付け……


おもむろに紙飛行機を折り始めます


せっせせっせ


完成


上司の視線がこちらを向いていないことを確認しつつ……


えいっ


そのままひょろひょろと力なく真下へ落ちていきました、残念


しかしまだまだ紙は山ほどあります


再チャレンジ


向かいの建物まで届いたものの、壁に激突


次の紙飛行機は別の人のもとへ


そんなわけで次々と作っては投げ作っては投げを繰り返し、ついにカゴの中からあんなにたくさんあった書類が消滅


自分の仕事の紙を奪われないようにさっと隠す同僚たち


そうこうしているうちに……


タイムアップ、どうやら彼女はどこかへ行ってしまう模様


こうなったら、最後の1枚、彼女のキスマーク付きを使うしかありません


決意の表情


これまでにないほどの気合い


深呼吸して、いざ!


と思ったところでまたしても突風、投げる前にひらひらと落ちていきます


しかも彼女は部屋の外に行き……


ビルの外へ


放心状態の彼の下に再び上司登場


目が合い……


どさっと処理しなければならない書類の束を突きつけられ、意気消沈


が、何かを決意した男の顔に変貌


そのままダッシュで職場の外へ


そんなことは何も知らず、とことこと歩いて行く彼女


あわてて飛び出してきた男性はそのまま自動車の行き交う道路へさらにダッシュ


ようやく向かいのビルのある通りまで危険を冒してまでたどり着き、目にしたのは……


彼女ではなく紙飛行機


せっかくのチャンスを活かせなかったいらだちから、くそっ!とばかりに思いっきり紙飛行機を放り投げます


そのまま紙飛行機は飛んでいき……


どこかのビルへ


そのまま壁に当たってくるくると落ちていきます


そこはあのとき山ほど思いを込めて折って投げまくったそのほかの紙飛行機たちの吹きだまりでした


風が吹き、かさかさと音を立てるキスマーク付きの紙飛行機。


ここまでだとしんみりしたよくあるような話なのですが、なんとさらにこの「先」があり、音楽・動き・演出、さらに最後の最後にいたるまで、徹底的に怒濤のクライマックスへと向かっていきます。「なるほど、これはよくできてる、さすがディズニーだ」と言えるレベルです。

また、実際のムービーを再生すれば分かるように、異様なほどの質感の高さと動きまくり状態となっているわけですが、一体どうやってこのアニメーションを実現しているのかというメイキングムービーが以下にあります。

Paperman and the Future of 2D Animation - YouTube


実際の手順は以下のような感じだそうです。

広島国際アニメーションフェスティバル3DCGは2Dの夢を見るのか? 広島国際アニメーションフェスティバル2012レポート | WEBアニメスタイル

ジョン・カーズ監督によると、これは3DCGのアニメーションに2Dのドローイングを重ねるという新技術によって、作られているのだそうだ。具体的には、3DCGのモデルを作り、それを使って3DCGでアニメート。そうして作られた映像を液晶モニターに映し出し、今度は2Dアニメーターがその上に直接、輪郭線等を描き込むのだ。描き込まれた線はベクターデータとして処理され、3Dモデルが動くと、それに張りついたまま動いていく(こうした技術の実現のために新しいソフトが開発された)。全体のなめらかな動きは3Dアニメーターが作り、輪郭線や髪の毛、服のしわなどのディテールやフォルムの部分は2D担当者が詰めていく、というハイブリッドのスタイルだ。その上で光源等の処理を重ねて、結果「いい感じ」のフォルムとクラシックなセルルックをもった映像が完成している。結果として、現在の日本の商業アニメに非常に近い感じの仕上がりとなっているのが、大変印象的だった。監督の弁によれば、2Dアニメーターの巧みな描線をなんとか活かせないかというアイデアからこのスタイルに至ったという。3DCGアニメーション全盛の北米からこうした発想が生まれてくるとは、正直驚きだ。日本の商業アニメのスタイルを活かす鍵がここにあるかもしれない。


何よりもすごいのが、まったくセリフに頼らず、アニメーション・音楽・演出などなどですべてを表現しきっているのが秀逸、その動きを見るだけで「アニメーションは動かすからこそアニメーションなのだ」というのがはっきりと実感できます。

・おまけ
脚のはえた紙飛行機の折り方 - YouTube

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in 動画,   アニメ, Posted by darkhorse

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