インタビュー

ハリウッド映画と戦えるCG映画を目指す「バイオハザード ダムネーション」の小林裕幸プロデューサーにインタビュー


10月27日から映画「バイオハザード ダムネーション」が公開となります。これはゲーム「バイオハザード」シリーズを原作としたフルCGの長編映画で、2008年に公開された「バイオハザード ディジェネレーション」に続く第2弾。「バイオハザード」といえば、ちょうどミラ・ジョヴォヴィッチ主演の実写映画シリーズの第5弾「バイオハザードV リトリビューション」も公開されているところですが、今回はなぜCG映画を作ろうと思ったのか、作品でのこだわりポイントはどこなのか、プロデューサーの小林裕幸さんにお話を聞いてみました。

バイオハザード ダムネーション
http://www.biohazardcg2.com/



GIGAZINE(以下:G):
ダムネーションの製作発表が行われたときに「ディジェネレーションの反響が大きかったので」と製作の理由が語られていましたが、シリーズ化する予定はなかったのですか?

小林裕幸(以下、小林):
そうですね。ディジェネレーションが2008年に公開されて、その年末の忘年会のときに神谷監督に「続きをやろうかと思うんですが、監督をやってくれませんか?」と持ちかけて了解を得て、2009年1月からプロジェクトが始まりました。事前に準備していたということはなく、ヒットがあったからスタートしたんです。

G:
「バイオハザード」というとすでにシリーズが6作品出ている人気シリーズなので、「CG映画もシリーズでやろう」という考えなのかなと。

小林:
ゲームはゲームですので、今回の作品は映画として作っていて、ヒットしなければ続きは厳しいなというのは思っています。ゲームを遊んでもらえても、CG映画は必要じゃない、ゲームで十分だと思っている人もいるだろうし。

G:
なるほど、「ディジェネレーション」の公開までどうなるかはわからなかったわけですね。

小林:
当時、舞台挨拶で監督が「みなさんの応援があればまた舞台に立つことができるかも知れません」とお話していましたが、あれは本当で、その時点では何も決まっておらず、こちらでも何かをやるという予定はなかったです。世界中から反響があったからこそダムネーションのプロジェクトは始まりました。2009年1月に「今回もまたレオンでやろうと思うんですが神谷さん、いいですか?」「OKです」と。クリスにすることもできたわけですけれど。

G:
今回もレオンを主役として選ばれたのは?


小林:
僕はゲーム「バイオハザード4」もプロデュースしているんですが、そのヒットした作品の続きを作りたいという思いがありました。それで「ディジェネレーション」を作ってレオンの活躍を描き、今度は「ディジェネレーション」の続きを作りたいなということがあり、「ダムネーション」でまたレオンを描きました。前回はクレアがいましたが、今回はエイダが登場していて、相棒ではないものの、絡みとしてはゲームと同じように助けてくれたりあしらわれたりと王道を描いています。一方で、相棒は男のバディ、作品の舞台になっている東欧の反政府組織の男にして、バディムービー的なものにしようと。

G:
バディムービー要素を入れるというのはかなり早い段階で決められていたんですか?

小林:
バディムービーをやろうというのは早めから決めていましたね。前回はレオンとクレアがいて、ゲーム「バイオハザード2」のように活躍を描くというものだったんですが、今回はレオンが1人なので、ではどう活躍させようかと考えたときに、せっかくCG映画を作るのだからゲームではできないことをやろうということで、レオンが男とからみつつ活躍したら面白いかなと思いました。


G:
「バイオハザード」シリーズでは、すでにミラ・ジョヴォヴィッチが主演している実写映画シリーズが5作品作られてきているわけですが、その中でCG映画を作ろうと思われたきっかけはなんだったんですか?

小林:
バイオハザードはもともとゲームなので、CGでなければゲームと同じ世界観でレオンを活躍させることはできないかなと。そして、ゲームではなくCG映画で作ることで、またバイオハザードの世界が広がるのではないかと思いました。ディジェネレーションはゲーム版の4と5、ダムネーションは同様に5と6の間のエピソードを描いていますが、映画としてもしっかり作ろうということは神谷監督、脚本の菅さんとも話をしています。ここまで来るとバイオハザードを一切知らないという人はさすがにいないと思うんですが(笑)、それでも、名前を聞いたことがあるだけでプレイしたことはない、映画も見ていないという人はいると思うんです。そうなった時に、バイオハザードのCG映画をやっていることで、ふらっと映画館にやって来て映画を見ても、見終えた後に「面白い映画だったね」と言ってくれるようなものを、と。映画として、格好いいレオンというエージェントがいてミッションをこなす、「007」なのか「ミッション・インポッシブル」なのかはわかりませんが(笑)、そういったハリウッド映画のノリはキープしたい、B級なものにはしたくないというのがあったので、ホラーもあるけれどアクションの派手な部分があり、B.O.W.(有機生命体兵器)を誰が持ち込んだのかというミステリーさも盛り込んだ、ハリウッド映画の大作にある内容は詰め込んだのではないかと思います。

G:
映画序盤、反政府勢力が隠れている地下迷宮はいかにも「探索型ホラー」な雰囲気が出ていました。

小林:
反政府勢力が隠れていて、そこからどう目的地に行くかというところなので、ああいう描写を入れました。レオンが捕まるという設定も使いたかったところもあり……ダムネーションで前作と違う衝撃的な点は、レオンが最初に一度やられちゃうところですよね。

G:
「あれ!レオンが!?」って思いました。

小林:
リッカーと戦っていたのに、という(笑) 今回は「レオンに苦労をさせよう」、ひどい目に遭わせようというところがありました。監督がよく言っていたのが「レオンの地獄巡りをやりたい」。いろいろな地獄をめぐって最後に脱出する、というところがまず入っていて、そこにバディムービーとして、アメリカとこの国という生き方も考え方も違う2人を対照的に描いてます。レオンにとっての「銃」と、反政府勢力に所属するサーシャにとっての「リッカー」は、作中でも対比させています。


G:
ディジェネレーションには登場しなかったエイダが今回は格闘シーンを見せていましたが、あの動きにはモデルが会ったりするんですか?

小林:
あれは、ロシアの軍隊格闘術で「システマ」というものです。監督がやりたいということで、男の人がシステマで戦っている映像を持ってきたものを見せてもらって、それなら取り入れようということになりました。

G:
なるほど、それでアクションとしての1つの見所になっているんですね。

小林:
そうですね。監督は2009年ぐらいに何かの映画でこのシステマが取り入れられているのを見たそうで、最近人気があるようです。僕からすると「よくそんなの見つけてきたな」という感じですが、やはり監督はそういうのにも目を配っているんですね。


小林:
今回は東欧を舞台にするということで監督も菅さんも、現在世の中で起きていること、いろいろな要素をうまく取り入れて架空の国家を作っています。そこはリアリティを持たせています。

G:
今回の舞台は「東スラブ共和国」という架空国家ですが、いかにもありそうな雰囲気がしていて。

小林:
ありそうですよね。僕は行っていないのですが、ロケハンには監督とデジタル・フロンティアのスタッフが行っていて、取材で撮影したきた要素をうまく取り入れてオリジナルにアレンジしています。旧ソ連の名残のある、たとえばミサイルの置いてあったサイロとかを見てこられたそうなので、雰囲気は出せているのではないかと。

G:
すでにダムネーションの予告編は映画館で流れていますが、冒頭が「東スラブ共和国で……」というテロップに加えて戦闘風景から入るので、最初はそういう実写のアクション映画なのかと思いました。

小林:
前作がアメリカの空港を舞台にしていたので、今回は違うものにしようと考えました。

G:
がらっと雰囲気が変わっていますね。

小林:
同じCG映画として、パッと見たときに「これはディジェネレーション、こちらはダムネーション」と見て分かるようにしたかったというのがあります。レオンは一緒ですが、背景が異なると明らかに別の作品だとわかるように、と。もちろん、クレアとエイダというキャラクターを見ると一目瞭然ですが、出番は圧倒的にレオンが多いので、レオン+背景として見たときに違いが際立つように、場所の違いははっきり出しました。

G:
「バイオハザード」には数多くの武器、銃器が登場します。本作でも色々出てきましたが……

小林:
神谷監督のこだわりが入っています。舞台がアメリカではないので、アメリカの軍用武器は基本的には出てこないんですよ。レオンも現地調達するので反政府軍の使った武器を使うことになり、そうなると東欧で手に入る武器の範疇でということになります。このあたりは、出てきてもおかしくないものをという監督のこだわりです。

G:
「このシチュエーションでこの武器、あるな」というものですね。

小林:
ミリタリーに詳しい人が見ても恥ずかしくないようにと考えています。これって結構大事なことで、「バイオハザード4」は珍しくアメリカではなくヨーロッパが舞台だったんですが、カプコン内にいるガンマニアが「基本的にアメリカの武器がそのまま出てくるのはおかしい」と、現地にありそうな武器を見繕ってくれて、それを改良しながら出しています。やはり、土地にあった武器というのがあるので、リアリティを出すためには一つ一つへのこだわりが重要ですね。

G:
ダムネーションを最後まで見ると「あれ!?続きが?」と。

小林:
エンドロール時に流れているのは「バイオハザード6」の映像ですね。時間軸上、ダムネーションの続きがバイオ6にあたるので、このあとレオンはこういう活躍をするんだよという予告編になっています。ゲームをやると、その内容が実際に体験できるということで、映画との連動感も出しています。ゲームをやるとまたエイダも出てきますし、彼らの続きの活躍が見たい人はぜひゲームをプレイして下さい、と。

G:
ちなみに、ちょうど実写映画シリーズの「バイオハザードV リトリビューション」が公開となっていますが、同じ映画シリーズとして意識することはありますか?

小林:
「バイオハザード」に限らず、ハリウッド映画というのは意識しています。「007」や「ミッション・インポッシブル」に勝つつもりで、大作映画と同じようなものを作りたいなという意識はあります。ハリウッドとはいえ大したことのない映画もあって「オイオイ……」と思うものもありますが、「金返せ」といわれないようなものを作ったつもりです。

G:
実写映画版からはレーザー攻撃システムなどがゲームに取り入れられましたが、ダムネーションとゲームとではそういったものはありますか?

小林:
全然なくて、実は情報は一切与えていないんです。バイオハザード6の情報はダムネーションのチームには与えず、一方、ダムネーションの情報はバイオハザード6のチームには与えていません。

G:
完全に別ですか。

小林:
レオンとエイダが出てくるということは共有していますが、ヘタに知ってしまって「あれを避けよう」とか気を回しても困るので。

G:
今回、この「バイオハザード」シリーズ以外にゲーム原作の映画って何があったかなと思って調べてみたら、意外と少なくて……

小林:
やはり、失敗してるというのが大きいですよね(笑) どうしても難しいんですよ、ゲームにはゲームの良さがあるから、それをそのまま映画にしたからといってうまくいくとは限らない。単にゲームのキャラを出すというだけではダメで、バイオの実写の場合はミラ・ジョヴォヴィッチがアリスというオリジナルキャラクターを演じているのが良かったというところがありますね。2からはゲームのキャラクター、ジルやカルロス、レオンとエイダも出てきていますが、そういってゲスト的に出てくることで、うまくキャラが立っているのではないかと思います。やっぱり難しいですよ……。

G:
近ごろのゲームムービーはけっこう長尺のものもあって、そのままスクリーンにかけられるものもありそうだなと感じます。

小林:
そうですね……誰に向けてかというのもありますね。ゲームのファンに向けて作ってマニアックになってしまうと一般の人がついてこられなくなるし、かといってゲームからかけ離れてしまうとゲームファンからすると「これはもうバイオハザードじゃない」ということになってしまう。監督は「僕はバイオファンだから、ゲームのファンに楽しんでもらいたい。同時に映画としてもいいものを作って、映画ファンにも見てもらいたい」と言っていて、僕も同じ気持ちでダムネーションを作っています。ゲームファンはもちろん、バイオハザードを知らない人でも楽しめるようにと考えています。

G:
ゲームファンが楽しめるということでいえば、タイラントが出てきたときの絶望感はちょっと尋常ではないですね(笑)


小林:
タイラントは強いですからね、どうやって戦えばいいんだと。「もうダメだ、助からない」という絶望感が大事です(笑) だからこそ、どう倒すか、ゲームとの違いをどう出すかというところを考えました。

G:
なるほど。前回は3館で2週間限定公開でしたが、今回は100館以上の規模での公開ということで、3D上映を見られる機会も増えているので楽しみにしています。お話、ありがとうございました。

インタビューに答えてくれた小林裕幸プロデューサー


◆作品情報
「バイオハザード ダムネーション」【PG12】
監督:神谷誠
脚本:菅正太郎
プロデューサー:小林裕幸
共同プロデューサー:植木英則
製作総指揮:辻本春弘
CGプロデューサー:豊嶋勇作、鈴木伸広
CG監督:土井淳
CG制作:デジタル・フロンティア
音楽:T's MUSIC
音響監督:高寺たけし
音響デザイン:笠松広司
配給:ソニー・ピクチャーズ

10月27日(土) 新宿ピカデリー大阪ステーションシティシネマほか全国公開
© 2012 カプコン/バイオハザードCG2製作委員会

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in インタビュー,   映画, Posted by logc_nt

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