取材

プロの作画を2アングルから観察、森薫ら人気漫画家の合同サイン会ムービーレポート


人気漫画家のサイン会は都内を中心に行われていますが、競争率も高く参加するのは至難の技。地方在住者ともなれば参加への難易度はぐっと跳ね上がるわけですが、徳島では「マチ★アソビ vol.7」の一環として、「乙嫁語り」「エマ」で知られる森薫さんや「群青学舎」「乱と灰色の世界」の入江亜季さんら「FELLOWS!」「ゲッサン」「ファミ通コミッククリア」にて作品を連載している人気漫画家が一同に会し、サイン会が盛大に開かれました。

地元の人や徳島まで駆けつけたファンにとって、このイベントは作家さんと1対1で会話をしながら、至近距離でリクエストしたイラストをその場で描いてもらえるという至福のひとときで、サインをこなす作家さんの鮮やかな手つきはさすがの一言。参加できなくて木綿のハンカチのはじをかんでいる人はもちろん、同じ漫画家を目指す人や「サイン会ってどんな感じのイベントなの?」と思っている未体験者が見ても参考になり、かつサイン会で直接会うことの醍醐味も詰まっている、作業中ムービーも多数撮影してきました。

会場は徳島駅のすぐ近くにある商店街「ポッポ街」のテナントの一部を使って行われていて、商店街を行きかうサイン会とは無関係の人々も、そのただならぬ様子に思わず中を見てしまうほど、祭りの前のそわそわした空気が流れていました。


前日に配布された整理券を持った人々が誘導されてテナントの中に流れ込んできました。さほど広い場所ではないため、商店街の真ん中を貫く通路にはみだしてしまい、やや通行に支障が出るレベルに。


あふれた行列は通行を妨げないよう、サイン会の会場を提供した南海ブックス2号店の方へ誘導されました。会場にほどちかいテナントの奥、ちょっと目立つ階段が目印です。


ずんずんと2階へ上っていきます。


下が見下ろせる、まるでバルコニーのような場所にそって待機列が形成されました。初回の13時開始のサイン会に合わせて現地へ行ったので、おそらくこの列は13時の回の券を持っている人が作りあげているもの。これ以降にも入江さんは14時、森さんは14時、15時、16時、17時と複数回にわたって券を配布しているので、ここからさらに列が増えるものと思われます。地元ファンはもちろんのこと、このサイン会目当てで足を伸ばしてきた人も多くいたようです。


会場に戻ってきたころにはサイン会の開始寸前といったタイミング。各作家さんの机の上にはサインをするための筆記具などが設置されています。これは森薫さんのブースの机で、左から単行本、試し書き用の紙、110番のコピック、シャープペン、ボールペン、修正液、そしてメモ帳と大量のコピックのスペア。


作中の姿よりややデフォルメされた乙嫁語りのアミルが試し書き用の紙に描かれていました。


机のすみに積んであったのは、森薫さんがメモ帳にさっと描いたものをコピーしたペーパー。同人誌を発行する人たちがイラストやコメントを描いた無料配布のチラシを業界の慣習で「ペーパー」と呼んでいるのですが、ここ最近は商業作家も、新刊発行時の書店での購入特典や、こういったイベントの記念品として、ラフなイラストをそえた物を「ペーパー」と明記して配布するようになったので、同人誌にかかわりのない人でも目にする機会が増えています。本編には収まりきらなかったキャラクターの一面や、作家のここだけのコメントが載せられている、ファンにとって貴重な「紙」です。


入江亜季さんの机の上には使い込んだメモ帳と、筆箱の中にはカラーペン、輪郭線をひくためのサインペンや油性マジック。


入江さんも森さんと同様にペーパーを用意していて、サインを受け取る人全員に配布していました。


いよいよサイン会がスタート。入江さんはさっそくさらさらと単行本の遊び紙にイラストを描いていきます。


今回のサイン会は刊行中の単行本にサインを入れるというもので、入江亜季さんが「Fellows!」にて連載している「乱と灰色の世界」の1~3巻が対象となっていました。群青学舎を代表とする短編マンガの評価が高い入江さんが初めて取り組んだ長編です。魔法使いの一家に生まれた10歳の魔法少女・乱が、大人のオンナになれるシューズをはいたまま初恋に落ちたり、魔法が使えるはずの一家の面々がささいなことで苦悩したり……という群像劇です。


細身のサインペンでするすると、あっという間に描き上げてしまいます。使っているペンはごく一般的な事務用品で、赤色であれば学校の先生がよく採点に使うあのペンなのですが、こうやって使われるとまた別の物に見えてきます。


まつげなど、フェルトペンでは難しい細かいところはミリペンで描き入れていました。


「乱と灰色の世界」の主人公・乱を描いてほしいというリクエストが多く、手慣れた様子で描き込んでいきます。最後にほっぺたなどをカラーペンで彩るなど、丁寧に描かれています。

入江亜季さんが「乱と灰色の世界」の乱をさらりとペンで直書き - YouTube


逆サイドに回って、サインをもらった気分になれる視点から撮影してみました。かなり会場はわきあいあいとしていて、作家さんとファンが徳島やマチ★アソビ、そして作品のことについて軽く話しながらのサインとなったため、チケットの競争率に反して、現場はかなりなごやかな雰囲気で運営されていたように見えました。これも都心ではなく地方で行うイベントのメリットかもしれません。

サインをもらう人視点で乱を描く様子を見るとこうなる - YouTube


次は森薫さんのサインの様子を追いかけます。サイン対象の単行本は、現在「Fellows!」で連載中の「乙嫁語り」。19世紀の中央ユーラシアで、“乙嫁”(古語で若いお嫁さんの意)のアミル(20)は少年カルル(12)に嫁ぐことになるというところから始まる物語。二人がゆっくりと愛をはぐくんでいく一方、お互いの民族が異なることによるいさかいなどを描きつつ、当時の生活習慣や慣習を事細かに追っている作品です。


最新の3巻が平積みされている様子を書店で見かけたことのある人もいるかもしれません。


森さんのブースには大勢の熱心なファンが色紙を持ってきていました。基本的に単行本にサインをする予定だったのですが、今回は色紙でもOKというルールになっていたようです。


アニメ化も果たし、連載も無事完結した「エマ」で森さんが描くメイド服、特にフリルのディテールには驚かされますが、それをコピック一本で簡略化しながらも一発描きで再現してしまうのはさすがとしか言いようがありません。

森薫さんがエマを描く一部始終 - YouTube


今度は「乙嫁語り」のアミルを描いていきます。下書きはアタリをつける程度で、コピックのブラシチップを使ってぐいぐいと描き進めていきます。

森薫さん、色紙にアミルを描く - YouTube


サインをもらう人目線で見てみるとこんな風に見えます。目の前で、ターバンを巻いたタラスの絵が見る間に完成していくかのように感じられるかもしれません。

サインをもらう人目線で見た森薫さんのサイン風景 - YouTube


「エマのメガネをかけているアミル」というトリッキーな注文にも快く対応する森さん。「エマ」と「乙嫁語り」は作品の舞台も時代背景も異なるので、これはサイン会に出かけてリクエストしないと手に入らない貴重な1枚です。


隣のテナントでは、サイン会と併載されている原画展や作家の単行本販売以外にも、作家の寄せ書きを実施するとのこと。前回は森さんをはじめとした「Fellows!」連載陣が巨大な寄せ書きパネルを1日がかりで描いていましたが、今回は寄せ書きということでB2サイズの紙に1人ずつ絵を描いていく流れになります。


構図や署名など、統一感を出すためのルールが図示されたメモがその場に貼り付けられていました。


前回よりはスケールダウンなのか……と落胆することなかれ。寄せ書きを描く会場は、各作家の複製原画を自由に読めるコーナーとまったく同一フロアに設置されていて、作業風景を間近で見放題。都内のイベントではまず不可能なやり方ですが、徳島の適度な人出とゆったりとした雰囲気が生んだ奇跡のブースと言えるかもしれません。サイン会の空き時間に寄せ書きは描かれていくようなので、ここからどんなイラストが生まれるのかが楽しみです。


すでに明日10日(月・祝)分のチケットは満了となるほどの大盛況となりましたが、寄せ書きは随時描かれていくようなので、「マチ★アソビ」で徳島を訪れている人はぜひポッポ街に繰り出して生原画を見てみてください。

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in 取材,   動画,   マンガ, Posted by darkhorse_log

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