「まったく新しい人類の進化に立ち会うんだという感覚」に、GREEの田中社長がソーシャルゲームの先に見るもの


感覚的議論は発想の入り口で『それを立証できるか』が新しい世の中」「猛烈に面倒くさがりな大衆を面白がらせなければいけない」「キーになっているのはユーザーの数」「ゲームの原点に返ったコミュニケーションそのものがもっとも重要」「グローバルにコンテンツを展開していくことは、実はものすごくローカルにやっていくこと」世界にソーシャルゲームが広がる中でこれからどんな発想が求められ、それによってどのような世界が形作られていくのか。スマートフォンやインターネットの発展と密接に絡み合いながら開発者たちはさまざまな試行錯誤を繰り返し、理念や方法論を作り上げています。

日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2011」にて「世界の心をつかむスマートフォン時代のゲームとは」と題し、GREEの田中社長を始めとした日米の大手ゲームメーカーの開発者たちがそれぞれの実績を元に未来へのヴィジョンを示しました。それは単にソーシャルゲームの展望に止まらず、今後の情報技術の変化のもたらす世界のあり方の変貌をも占うものとなっています。

話者は左からGREEの田中良和代表取締役社長、株式会社タイトーの庄司顕仁氏、株式会社カプコンの手塚武氏、Electronic Arts Interactiveのアラ・マック・グロウエン氏、そしてオペレーションはゲームジャーナリストの新清士氏です。


ゲームジャーナリスト 新清士(以下、新):
「世界の心をつかむスマートフォン時代のゲームとは」というパネルディスカッションを行います。今から小一時間ほど、オペレーションを担当するゲームジャーナリストの新と申します。どうぞよろしくお願いします。

今日本で急激にソーシャルゲームのマーケットが立ち上がってきていますが、当然のことながら「これをどう世界に展開をしていくのか」というのが各社にとって大きな課題になっていると思います。世界にどうやって出ていけばいいのか、そのためのゲームの作り方、条件、どのような準備をすべきなのかと、多角的に議論していきたいと思います。プラットフォーマーとして協賛をいただいているGREEさんがいらっしゃいますので、GREEさんの戦略も同時に伺いながら、それらを合わせて全体像が見えるように進めていきたいと思います。


まず各社さんのパネラーの方をご紹介をいただいて、それから実際のお話へと進めていきたいと思います。はじめにPlayfishのアラさんです。簡単な自己紹介と、今の事業戦略を合わせて話していただきたいと思います。


エレクトロニックアーツ アラ・マック・グロウエン(以下、アラ):
私はアラ・マック・グロウエンと申します。Electronic Arts Interactiveのジェネラルマネージャーをしております。日本のこの場にお招いていただきありがとうございました。私は今まで中国に10年ほどおり、最近日本に来ました。


Electronic Arts Interactive、そしてPlayfishが扱っているものとしては、まずモバイル系のもの、それからカジュアルゲーム、ソーシャルゲームがあります。その中で、EAモバイルはスマートフォン対応のゲームをしていてChillingというスマートフォン用のサードパーティのゲームもあります。それからカジュアルゲームの中で最大のPopCap、そしてPogoもあります。またソーシャルネットワークゲームに幅広く携わっています。

もともと私は財務部門の関係の仕事をしており、ヨーロッパでどのように課金をしていくか、といったところに関わっていましたが、2007年にPlayfishのKristian Segerstråleから「新しいことをやってみないか」と言われ、実際にソーシャルゲームの説明をしてもらい、それから非常にわくわくしながら今の仕事に取り組んでいます。


ソーシャルゲームの考え方、やり方も当時は今までと非常に違うものだと思いましたが、今振り返るとそれがどんどん発達してきていてコンソールゲームの方にも影響を与え、コンソールゲーム側も変わってきたように思います。

新:
ありがとうございます。次は、カプコンの手塚さんです。手塚さんは世界的に非常に成功したストリートファイターシリーズのiPhoneでの展開を手がけられた方です。

カプコン 手塚武(以下、手塚):
カプコンの手塚です。僕の経歴としては、もともとアーケードゲームの開発をしていて、そこからコンシューマゲームの開発をして、iモードの開始と同時にモバイル部門でモバイルゲームを作ることに携わりました。最初はウェブゲームで、そこからJavaゲーム、そしてiPhone、スマートフォンへの移行ということで、今はソーシャルゲームもやっています。


カプコンに関して言うと、CEDECに来られている方は当然ご存知だとは思いますが、「バイオハザード」であったり「ストリートファイター」、最近では「モンスターハンター」というゲームを作っている会社です。何故あえてこういうことを言うかといいますと、海外のモバイルマーケットでゲームを配信するときに、電話機メーカーさんや現地のキャリアの方とお話する機会があるのですが、カプコンと言うと最初に理解してもらえることは少なくて、「ストリートファイター」と言ってはじめて「おお、波動拳の会社か」と分かっていただけるということがあります。

今日のテーマでもありますが、モバイルゲーム、スマートフォン用のゲームを提供するのは、いわゆるゲーマーを相手にするのではなくて、より広い一般層の方を相手にするということになり、そこを深く自覚することが非常に重要だと思っています。ご紹介いただいたようにiPhoneのゲームでいうと「バイオハザード」や「ストリートファイターIV」など出しておりますが、最近「バイオハザード」は、GREEさんで「バイオハザード アウトブレイク サバイヴ」という名称でソーシャルゲームも展開していて、現在勉強中という身であります。今日は宜しくお願いします。

新:
先ほど伺って面白かったのが、今まで「モバイル部」の部長だったのが「制作室長」というかたちにわざわざ統合されたということですが、ちょっとその辺りのお話もお願いします。

手塚:
昨年の冬にバイオハザード部門の統合がありました。そこで今後のゲーム業界の動きを考え、そうしたセクショナリズムを廃していこうということになり、オンライン部門、CS部門、モバイル部門が統合されて、横断的によりいろんな人間が関わってやっていく体制になっております。

新:
ついでに、ビーライン・インタラクティブ、「スマーフ」が今すごくヒットしていますが、これは直接日本の法人からは関わられてはないそうですね?


手塚:
ビーライン・ジャパンという、ビーラインの子会社はありますが、ビーラインという会社はもともとCapcom Interactive,Incという、北米のモバイルゲームの開発をしていた会社です。この会社のポジションをより明確にしようということで、カプコンブランドではなかなか馴染みがないお客様向けに「スマーフ」などの戦略的なタイトルをやっていくセカンドグラウンドという位置づけで子会社化しました。

新:
ありがとうございます。次はタイトーの庄司さんです。ON!AIR事業部は、「スペースインベーダー インフィニティジーン」など世界的に非常にヒットしたタイトルを出されてる会社で、まさにソーシャルの方に力を入れてらっしゃる状態だと思います。ぜひ、ご紹介をお願いできればと思います。

タイトー 庄司顕仁(以下、庄司):
タイトーの庄司です、皆さんこんにちは。カプコンさんがストリートファイターの会社だと、タイトーはインベーダーの会社かなと思いますが、実は歴史が一番古くて、会社自体は60年くらい前からあります。モバイル向けのゲームコンテンツ配信では2000年のiモードの立ち上がりくらいから取り組んでいて、海外への展開も2004年くらいからと結構早い段階から行っており、北米、ヨーロッパ、中国、韓国などとかなり手広くやってきました。


昨今では、ソーシャルゲームの日本の市場が立ち上がった時に、一番最初に参入を決めて今に至ります。スマートフォン向けのゲームは、2008年にiPhone向けのAppStoreが立ち上がりましたが、このときやはり一番に入って、2009年の2月に第一作目を出しました。以降、今ちょうど3年目になりますが、数えてみたらタイトルベースでいくと16タイトルほど出していますが、パッケージ別というか、バイナリ別、各国別に見ると、今年までに53タイトル作っていました。

最近は「グルーヴコースター」という「スペースインベーダー インフィニティジーン」のシリーズです。同じクリエーターが作ったゲームですが、こちらを配信してご好評いただいています。このまま、市場の動きや変化に合わせた良いコンテンツを作って世界と戦っていきたいと考えてます。


新:
ありがとうございます。最後にGREEの田中社長にお話をいただきます。GREEさんの全体的な戦略を含めたプレゼンテーションを行っていただき、何を聞いてもいいと伺ってますので、いろいろ聞きにくい話を先に聞かせていただきたいと思っています。

GREE 田中良和(以下、田中):
田中です、宜しくお願いします。自己紹介のページを作ってみましたが、今さら自己紹介をするのも若干恥ずかしいので、せっかくなんで「僕とテレビゲーム」という話題で自己紹介します。


小学校一年生の頃に忘れもしないスーパーカセットビジョンを買って、そのときからゲーム人生がはじまったんですが、小二くらいにファミコンが発売されて、「F1」というのを買ってもらったんですけどすぐ飽きちゃいました。それで親にも「こんなにすぐに飽きるものは買わない」と怒られた記憶があります。


ちょうど僕が小学校のころファミ通にハマっていて、一生懸命投稿サイトに投稿してガバスを集めて新しいゲームを買おうと思ってたんですが、結局集めきれずに騙されたみたいな話で小学生時代を過ごしました。ちょうど中学校の頃にストIIが出て、学校が終わると午後4時からゲーセンに行って閉店までまでいる、という生活を何年か行っていました。僕はザンギエフを使っていて、立ちスクリューを、何ピクセルまで吸い込めるのかってずっと研究していて、そのあとこういうかたちで、現在になっているわけです。


という話は置いておいてですね。まず、我々はプラットフォームとゲームを両方やっています。コンソールゲーム業界でおいては、任天堂であれソニーであれマイクロソフトであれみなさんやっていることですが、ウェブ業界においてはFacebookZynga、Playfishなどはありますが、これらふたつは分離していました。それを我々はスマートフォン、モバイルに特化し、垂直統合してやっています。


世界中に同じようなモデルがあるように見えますが、実はこの垂直統合をしながらモバイル特化するというモデルはかなりユニークな存在だと思っていて、我々としてはこれを世界に広めていこうと思っています。今世界中に1億4000万人ユーザーがいますが、更にTencentや、通信キャリアのSKテレコムAT&Tなどと今提携してユーザーベースを広げようと取り組んでいます。

「面白いゲームを作る」ということでは、今全世界で7000タイトルくらいありますが、さらにより多くのゲームを作っていくために、日本、中国などの様々な会社とのパートナーシップや出資を通じて、ゲームスタジオやゲームの開発人員を増やしていこうとしています。


「いかに作っていくのか」という部分では、ミドルウェアと書いていますが、今我々が作っているノウハウやいろいろなコンポーネントの提供、例えば「html、Flashからhtmlに変換するようなエンジン」などを提供しはじめています。最近発表しましたが、UnityやAdobeなどのツールもどんどん我々のプラットフォームと連携しながら提供しやすいものに変えていく、ということにも取り組んでいます。

この図ですが、現在世界中に会社を設立して、展開をさらに加速させています。世界で今多分800店くらい、東京も含めてどんどん作っているところで、ほぼすべての大陸に進出できています。「ここでプラットフォームをやりながらどんどんゲームを作っていこう」というのが、今我々がやろうとしていることです。


FacebookやTwitterを見ていて思いますが、スピード感としては、3年、5年もしたらユーザーが何億人もいるのが当たり前といったウェブ業界であるので、我々も「1年後にもう1億人増やそう」とか言っている場合ではなく3年、5年後には5億、10億人というのをのをターゲットにしたヴィジョンにしなければいけないと思っています。

これはニンテンドーDSの例ですが、日本で普及したものが日本以外で成長していくということはニンテンドーDSの時にもありましたが、私は再び日本市場で成功したモデルを世界中で展開させたいと思っています。実際ユーザーがこのように伸びていて、海外の比率はその中でどんどん高まる形になっています。日本でもかなり伸びているんですが、市場の成長という意味においてはこれからは日本以外のところが伸びると考えています。


結果として、実際問題現在は日本での売り上げ利益がほとんどです。「日本はもう成長しないのか」と言われるんですが、今年の前半だけを見ても、売り上げ、利益がこれほど伸びるくらい日本のマーケットにはまだまだ可能性があると考えていますし、実際成長を実現できていると思います。当然「日本でもマーケットを増やしながら、世界中でもマーケットをやっていこう」というのが今の戦略になっています。簡単ですが以上になります。

新:
ありがとうございます。まず伺っていきたいのは、OpenFeintの件です。3月のGame Developers Conferenceに行ったとき、OpenFeintをこれからどうするのかという雰囲気が濃厚でした。ゲームセンターなりが出てきて出口がないって状態になりつつあったところをGREEが買収したときは「これはうまいな、いいところをいかれたな」という印象をすごく持ったんです。買収しようと考えた経緯、それから決め手となった要因はなんだったのか、是非教えていただきたいなと思います。

田中:
スマートフォンを中心としたソーシャルゲームのビジネスモデルと、いわゆるコンソールビジネスとの違いを考える中で、販路や集客手段を自分たちで作れるかと、その流動性が一番大きいな差だと思っています。コンソールゲームもそうですが、どんなに面白いゲームを作ろうがユーザーが集まらなければ、なんともしがたいと思っています。

究極お金をかければユーザーが集まるのか、ということ自体もあまりよく分からないところでもありますが、当たり前ですがFacebookやTwitterがすごいのは、プログラミングとしての総体としてのすごさよりユーザーがいっぱいいるということに話が尽きます。なぜeBayが凄いかというと、プログラムというより「皆が出品しているからだ」というところに尽きて、現代におけるゲームの面白い面白くないっていう決定要素の中には「みんなが使ってるか使ってないか」という一点が大きいと思っています。


今自分たちでもゲームを作っていて、プラットフォームビジネスもあるという中では「どれくらいユーザーを集めてこれるのか」というのが実質的には話の焦点なのかと思っています。そのためには、OpenFeintは全て完ぺきではもちろんありませんが、結局は「ユーザーがいなければどうしようもない」ということです。

ユーザーがいるものを変えることはできますが、ユーザーがいないものを買い取ってもユーザーを集めることのほうが困難です。そこで我々は世界でも最大級にユーザーがいるOpenFeintを買い取って統合しました。その中身をもっと日本向けのものに作り変えることで、日本での成功を海外へ逆に輸出できるかなと思って今回の買収を行いました。

新:
面白い言い方ですね。今のウェブビジネスの点からいくと、キーになっているのは数だということなんですね。先ほど億といった数字を挙げられていましたが、やはり数を多く集めている、当時7500万くらいだったと思うんですが、その数字をバリューだという判断をしたいう理解でよろしいでしょうか?


田中:
そうですね。結局多くの人が今使っていて、そのプラットフォームを組み込んでいる、だからデベロッパーも非常にたくさんいるということがありました。やっぱり「プラットフォームをゼロから立ち上げるのは結構大変なんじゃないかなぁ」とも思ってました。変な話、それができたら日本でもいっぱいみんな作ってるわけで、なかなか現実問題作れないから世界中でも生まれないのかなと。そういった意味では、一番大きなパートナーと一緒になることが僕らとしては最良の選択肢だったわけです。

新:
現状では、OpenFeintは課金決済システムが弱いという大きな弱点を抱えてますが、そこに対してはどういうようなサポートをしていくつもりですか?

田中:
そこはどんどん作っていけば良いと思ってます。その辺の問題やソーシャル性みたいなものについては、作っていけば良いなと。僕らがこういう風にOpenFeintとGREEでやっていくことによって「全世界で何がどのように違うのかが関連度ではなくて全部数字で表せるようになった」というのことはすごく大きいと思っています。「アメリカと日本は文化が違う」だったり、「ヨーロッパはこんなゲームが流行る」ということが、「何%流行る」とか、「何%つまんない」というようにKPI化して把握できるようになりましたから、これ自体は大きなバリューかと思ってます。


新:
実際買収してまだ半年も経っていませんが、向こうのチームと一緒に働いてみて、今までの日本のチーム、それから向こうのチームと連携を作っていく上で文化的に影響を与えたもの、もしくは既に学べているものは何か出てきていますか?

田中:
まだまだ始まりに過ぎない感じではありますが、OpenFeintやそれ以外のいろいろなアメリカのソーシャルゲームの会社に行って僕が本当に思っているのは「日本のモバイルゲーム業界っていうのは本当にすごい。圧倒的なまでにゲームモデルが洗練されているなぁ」ということです。それがまさに1人あたりのARPUに表れているわけです。僕は、日本とアメリカでARPUが違うのは課金手段ですかとか通信速度ですかとか色々言われますが、もちろんそれはあるとは思いますが、でもそんなものよりももっとも大きいのは「ゲームデザインの洗練度」だと思っています。

僕はここ最近よくこのグラフを出すんですが、要はサードクオーターからフォースクオーター、日本の1、3月と4、6月で日本の通信ランクや手段が劇的に変わってるわけがないんです。にもかかわらず、ゲームデザインが洗練されるだけで売り上げというのはこんなに伸びたりします。


一番求められるのは、日本以外のエリアにおいて、今の日本並に洗練されているゲームモデルを単純にアクティビティというだけではなくて、それを収益化しながら再投資するような、全体のエコシステムみたいな形で作り上げられるかということだと思います。

新:
ありがとうございます。アラさんに伺いたいのですが、今Facebook、Playfishでだいたい今3000万人くらいユーザーをかかえています。日本のこういったソーシャルゲームの市場というものは、どのようにアメリカの企業から見えているのでしょうか。


アラ:
まず西洋のゲームと日本のゲームの違いですが、今田中さんもおっしゃったように、日本のゲームは非常に洗練されていて、たいへん深いところまで突っ込んでいると思います。グループ分けしてみても、いろいろなジャンルがあって、そのジャンルごとに深いところに達していると思います。それに対して西側諸国は、もっと広いジャンルで、それほど深くない、多くの人々を対象にしていると言えると思います。

イベントマネージメントに関しても、他の西洋諸国に比べても非常に管理や、企画が洗練されていると思いますし、それについてはユーザーベースがコアの部分に力を入れているからだと思いますが、それに対して世界ではFacebookなど、より広い一般の人々に対応していると言えます。


新:
今西洋のゲームが持っているアドバンテージはどういった点にあると思いますか?

アラ:
顧客数値データは西洋の方が優れていると思います。Facebookなどでも、透明性もあり、オープンでもあります。それに比べて日本のものはもっと閉鎖的だと思います。そこが西洋の優れていることろだと思いますが、また、どこに課金するかということを地理的な意味で特定しているのに対して、日本の方はARPUの高いところを求めているという特徴があると思います。

もう一つ言えるのはマーケティングで、Facebookのキャンペーンなどは非常に洗練されており、クリックしていく度に何千ものバナーがどんどん出てきます。それもユーザーの特徴によって細かくターゲティングしたバナー広告が出るようにできていますので、その辺りが優れていると思います。


最後にもう一つ、いわゆるCRM、行動のターゲティングですが、ユーザーがどういった使い方やコミュニケーションをしているかによって提供するゲームを変えていく、遊び方とのゲームのリンクを取っているいうところで優れているかと思います。

ただ、西洋でもまだソーシャルゲームは始まったばかりで改良していく点は多いです。ソーシャルゲームの中ではアメリカでもフランスでも同じようなイベントをしたり、祝ったりしていますが、例えばアメリカ独立記念日の7月4日にはフランス人は興味を持っていないというようなこともあり、「アメリカとヨーロッパとで同じことをできるわけではない」という課題もあります。


新:
次に手塚さんに伺いたいのですが、手塚さんはリリースされたゲームが各国でどのように遊ばれているのかをチェックして、開発チームにもフィードバックされている印象があります。それはアーケードの出身であるのも理由かなのかとは思いますが、ぜひその辺りのお話をお聞かせいただきたいです。

手塚:
国ごとの違いみたいな部分ですよね?

新:
そうですね。

手塚:
いろいろありますね。ゲーム性の部分もありますし、受け取り方みたいなものでも。マーケットでいうと、皆さんご存知だと思いますが、今Androidはなかなか課金をグローバルでやるのが難しくて、iPhoneの方がグローバルでのデータがとりやすいっていうことがあります。iPhoneのマーケットはほとんどアメリカで、アメリカは開発者も非常に多く、はっきり過当競争になっています。それでどんどんゲームの低価格化も進んでいると。値段によって回収できる予算というものもありますので、それが作るゲームにも影響してきます。そういうところでフリーミアムな流れも出てきています。

日本でも最近トップセールスを見ると、アイテム課金型のソーシャルゲームがどんどん増えていますが、アメリカの方がもっとそこは進んでいます。それらは「マーケットから提示されている作るべきもの」であって、そういう方向のものを作らざるを得ないという圧力のようなものは当然存在します。ゲーム性はいろいろ差はありますが、実際に現場で見ないとなかなか理解しにくいことはあると思います。


カプコンは伝統的にアーケードゲームの会社なので、ゲームセンターにいわゆるベータ版を置いて、ロケテストと俗に言われるものをよくやっていて、国内でも海外でも立ち会ったことがありますが、お客さんの反応はまったくまちまちです。今まではコンシューマゲームなので、売った後のそういう調査はなかなかするのは難しかったですが、ソーシャルゲームの場合はかなり明確ですね。ユーザーがどう動いているか理解できるので。今GREEさんでやってるバイオハザードもそうですが、今後はそのデータマイニングをどうするかというのが非常に影響してくるんじゃないかなと思います。

新:
現状としてユーザーさんの評価などをすごくチェックをするというかたちですか?

手塚:
そうですね。iPhoneのアプリだとユーザーレビューが掲載されてますので、それはかなり読んでます。グローバルにというのも非常に重要なんですが、スマートフォンで展開というところを考えると「スマートフォンでゲームをする方は本当に多種多様である」ということをしっかり念頭においてゲームを設計する必要性があるな、ってレビューを読んでいていつも思います。

例えば、バイオハザード4のiPhone版を配信したとき、「バイオハザード3までのストーリーがよくわかんないから急に4やっても意味がわかんないよ」みたいなことをレビューに書かれたことがありました。それで「その通りだな」ということでバイオハザードヒストリーという、新しいメニューを設けてバージョンアップして、1から3までの簡単なストーリーと登場人物の紹介みたいなものを追加しました。そういう「過去あまりゲームをやらなかった方もプレイすることを意識しながら作る」ことの方がより重要なのかなと思います。


新:
確実に感じることは、ユーザー数が、今まで遊んでなかった人が遊ぶことで確実に増えてるということですよね。GREEさんのデータを見ててもはっきりと出てますね。

手塚:
その通りです。増えてるという意識で、そのお客様にどういうゲームを提供するかという意識を持つことがすごく重要だと思います。

新:
庄司さんもぜひ「日本と海外との反応の違い」というところも込みで、何かお話いただければと思います。

庄司:
まず「グローバルにコンテンツを展開していくことは、実はものすごくローカルにやっていくことだ」と思ってます。これは、僕らのコンテンツをお客様が手に取っていただいてどう感じていただくか、まず手に取るまでのハードルだったりとか、そういうところでいくとだいたい大雑把に分けて3つくらいの要素に分かれると思っています。

1つはまず、遊びの本質ですね。触って面白いという、ゲームならではのものだと思いますが、インタラクティブに面白いというゲーム性の部分と、それから今みなさんがお話されていた通り、今までゲームに触ってなかったユーザーさんも多いですから、そうすると見た目だったりとか、そういった世界観と言いますか、パッと見の印象というところ。そしてあとは、経済的な部分、金額だったりとか。そういった3つの要素が合致したときにものが流れていくと考えています。

遊びの本質の部分というのは、今までかなり数多くのタイトルを海外にも出してきましたけど、あまり差がないです。というかほとんど差がないです。もともとどこの人に向けて作るというよりは、どんな嗜好を持った人に向けてコンテンツを作るかというところなので、ここで国による差はほとんどありませんでした。


次に、カルチャライズと言われる見た目の部分や、言語対応です。これはすごく違いますので、どローカルにやっていく必要があります。3つ目の経済ですが、16タイトルで実は53パッケージくらい作っているのは、各国ごとにパッケージを分けてるからなんですが、この分け方というところはゲームの中身の本質の部分は変わりません。でも見た目は変わったりします。これはやはり、各国でどういったビジュアルが受けるかで変わります。

もう1個、アセットが違うんです。例えばタイトーで出してるiPhoneのタイトルでは、よく売れてるのは「クッキング・ママ」という、コンシューマから持ってきたものです。これが売れてるんですけど、無料版も含めるとダウンロード数は実は900万ダウンロードを超えていて1000万人までいく勢いです。どうしてこれくらい売れたかというと、経済圏によって値段を変えるんです。

でも例えば日本で800円で売ってるものが、シンガポールに行ったら100円って言ったら誰も納得しないです。なのでゲームのそのパッケージも変えます。「24」の24巻セットで買うのか、1巻だけ最初に買っていただくとの違いで、追加課金でさらに買っていくと、フルで遊ぶには結果として日本やアメリカと同じ値段になります。まず、手に取っていただけるような価格にちゃんと設定するということをやれば売れていくと。もう1つはさっきアラさんもおっしゃってましたが、各国ごとにローカルにマーケティングを展開する。これは宣伝活動のことを言ってるわけではなく、ちょうど「クッキング・ママ」の話をしましたが、例えばアメリカとフランスのマザーズデーは違うんです。

新:
どう違うんですか?

庄司:
日程がまず違います。日本とアメリカは一緒で5月の第1週目ですが、フランスは第3週目というように別々です。しかも、マザーズデーの習慣が違うんです。日本だとカーネーションをあげたりしますよね。バレンタインもそうです。日本だと女性からチョコレートをもらえるとラッキーという感じですが、アメリカでは逆に男性が女性に告白したりします。

「クッキング・ママ」はマザーズデーに特別レシピを出したりイベントをやったりしますが、こういったことを理解して各国で違うオペレーションを仕込んでバイナリごとに実施します。そういう部分をきっちりとローカルに落とし込んでやっていけば日本で作った遊びの本質は十分世界で通用する、ということをこの3年間ですごく実感しました。ちょうど7月くらいから3ヶ月ほどかけて世界各国を回って色んなプレイヤーと話してきましたが、じゅうぶん強いと思います。ソーシャルゲームの世界でも、カジュアルゲームの世界でも、世界と戦っていける実感はあります。


新:
キーになってるゲームデザインさえぶれてなくて、それを各国ごとにちゃんと強みを合わせて商品を展開する方法論を作っていけば勝負になる、と。

庄司:
流通という障壁がありませんから。そこがクリアーになってるので、各国でオペレーションできるのが一番良いと思いますが、日本からでもできることもたくさんあります。大事なのはたぶんコンセプトです。ゲームの本質、コンセプトを邪魔をする要素をきちっとローカルで消していけば、十分にやっていけると思います。

新:
田中さんに伺いたいのですが、まずソーシャルゲームがガラケーからスマートフォンに移行していますが、ソーシャルゲームが登場したことによって、市場が質的な変化を行ってるのは間違いないと思います。いつも、決算市場が出るのを楽しみに眺めていますが、非常に面白いのはユーザーさんの特性です。今まで家庭用ゲーム機のユーザーであれば、どうしても男女比は8:2から7:3という感覚、アメリカだと9:1程度だと思います。ところがGREEの決済データ見るとほぼ1:1くらいなんです。それはユーザーの行動がまったく違ってきているということがあると思うんですが、膨大な量のユーザーが増える中で、ユーザーさんが新しく入ってくる中で、なにか手ごたえみたいなものを具体的に感じられることはありますか?

田中:
僕も超ゲーム少年、かつスマートな超インターネットヘビーユーザーでしたが、いわゆる「昔AKBは俺たちのものだったのに今はみんなのものだ」みたいな話でですね。マニアックな人だけが愛する時代ははるか昔に終わってしまったわけです。すべての人のAKBと同じように、ゲームやインターネットは全ての人に、大衆化されたものだと。

その意味では、スマートフォンやモバイルでSNSをやろうと思ったときに、当時Facebookが流行る前のMyspaceとかmixiとか、一番記事になった時代ですけども、そこで僕が一番感じたことは「パソコンだけでもこんなにいっぱいの人が使うんであれば、スマートフォンだと端末の規模的にはそれよりも何倍も大きいわけですから、もっとみんなが使うに違いない。だから、きっと僕らが思ってるよりもSNSや今のソーシャルゲームというものは、本当にみんなが使うサービスになる」ということでした。「誰でも使うんだ」という発想で考えるようになったから今のサービスができているし、そのためには分かりやすさも重要だと思っています。

僕は「日記を書いてコメントを書く」とか、「足跡を残す」というようなサービスを楽天の時代からいっぱい作っていました。でも、これをモバイルで考えたときに思ったのが「難しすぎる!」ということです。僕のとある尊敬する先輩から「田中な、文章を書ける時点で、日本の中の何割だと思ってるんだ。みんな文章書けないんだ」と言われて、なるほどなと思ったんです。要は「文章を書くこと自体が猛烈に面倒くさいと思ってる人たちがマジョリティだ」ということに気付いてなかったわけですね。


ボタンを押すと面白いとか、携帯を開くと面白いとか儲かるとか、まあわけ分かんないですが、そういう敷居の低さを作らないといけないし、そういう風に面白いといけないと思ってものを作ってきました。その中で、今実際に日本でも30代以上のユーザーが半分くらいなので子供向けでもまったくないですし、男女も半々くらいの比率で多くのユーザーをとれるようになってます、

ただ、一番大きいのは「とにかくデータに基づいてやってる」ことに尽きると思ってます。1人を2人、2人を3人にすることは論理的に説明できるわけです。良くないなと思うのは、感覚的に「こういうものを作ったら受けるじゃないかという議論」です。それはあくまで発想の入り口であって「それを立証できるか」というのが新しい世の中かと思ってます。

大衆的なものを作るというのは何かということで、今は数式でわかる部分がゲーム作りの半分くらい。昔はゲーム作りにおける数式化される部分は数%から10%くらいしかなかったのが、今は半分から6割くらいまで、すごく膨らんですわけです。だから数式に基づいて考えていくというアプローチが結果として「広げる」ところはあると思います。

新:
それはウェブ業界が持ってるカルチャーですね。常にユーザーのデータの動きを見て、自らを変えていく。それをゲームで応用して大きなユーザーを獲得した理由はどの辺にあると思いますか?「ゲームが持ってる特殊な何か」というものがもしあるとすれば。

田中:
何よりも一番大きいのは、ゲーム機を買う必要がないということ。この圧倒的な手に入れやすさです。今回起きてる革命は僕は大きく3つに分けられるとよく言ってます。1個は、まさに携帯電話なので、常にオンラインであること。たまにオンラインとかすれ違いではなくて、絶対永続的にオンラインなんです。はっきり言って、たまにしか携帯しない電話とかすれ違いFAXとか、意味がないんですよ。いつもつながる携帯だから意味があるわけです。今回絶対オンラインしかないと、まぁ実際電話入らないところもありますが、それが圧倒的な革命であると。ただ、これは話の1個であって、もう2個が凄いなと思ってます。

2つ目は、そもそもがダウンロード販売であること。店まで行く必要がないわけです。はっきり言って店まで買いに行くだけで「やっぱり止めた」となる人が世の中に半分はいると思うんです。ボタン一発で買えることが流通革命なわけです。これはスイカを売るのでも車を売るのでも、ボタン一発で届くのと、わざわざ買いに行くのでは圧倒的に違うという「流通革命」が大きいと思っています。

3つ目は、販売商法の革命だと思ってます。よくある例としては、P&Gの石鹸というものが、普通の先進国では一箱に30パック入ってまとめ売りしてるわけですが、新興国に行くと一括して全部買えないんで、1パックずつ、各20円で売ってる。インドではそうしないと売れないという話があります。要は、売り方、販売商法そのものが、まとめ売りしかなかったのに、ばら売りして良くなりました。


例えば音楽でもiTunesが現れて、今まではCDっていうのは1枚強制的に抱き合わせ販売されてたわけですが、これもばらで売って良いと。そういう販売商法の革命があったりしました。例えば、ディズニーランドは入場料っていうのは必ずあるわけですが、ソーシャルゲームは入場料がないディズニーランドだと。入るのは無料だけど、アトラクション使うのにはお金かかりますと、そういう販売商法の変化かなと思ってます。

この3つの革命が起きたことで、敷居がずいぶん下がってゲーム人口が拡大したことがアルゴリズム的な部分だけじゃなくてもう1個の大きな変化かと思っています。

新:
これは全世界のレベルで起きてることで、当然のことながらインターネットが生み出すことで、どうしても特定の企業が強くなる業界が出やすくなると思います。その中で海外に出ようとしているわけですが、その中で何がこれからGREEが世界の中で勝っていく要因になると思いますか?

田中:
まず一番重要な事実は、僕らみたいなことをやってる人が誰もいないっていうことです。これは3年後くらいに言われるのかなと思ってます。こういうものをちゃんとグローバルレベルのオペレーションで提供することができれば良いなと思ってます。実際いけるんじゃないかなと思っています。

ただこれは簡単じゃないです。例えば、普通のコンソールのゲームメーカーは世界中の通信キャリアを全部コレクションを持ってビジネスするということはやってないと思うんです。僕が調べたら、世界に500個くらい通信キャリアがあって、この場合1人でまわったら500日、5人だったら100日かかると。単純にグローバルな通信キャリアをディストリビューションとして使おうと一言言うにしても、何人ビジネスデベロップメントがいて、その人が有機的に動かなきゃいけないかということを考えると、そんなビジネスオペレーションを持ってる会社なんてものは世界中に何個もあるわけないんですよね。

我々のビジネスなんてほんの一端にすぎません。我々がやっていることを全世界レベルでやろうと思ったらとてつもない人的なパワーがいるわけです。こういうものが現代におけるプラットフォームビジネスで、それを体現することが難しいがゆえに、逆に僕らができれば、それはすごく新しいサービスになります。だからまずはこれをちゃんとやれればと思っています。


新:
今田中さんがおっしゃったことがキーだと思います。流通が次のステップで、今日本国内ではっきりしたマーケットができていて、アメリカでもマーケットができつつある。そして課金決済手段の部分を的確にどうまとめるのか、特に発展途上諸国ではまだちゃんとできていないところを、どうまとめるかというのがキーになってくる。GREEという会社はその部分にかなり力を入れていくという意思表明である、という理解でいいですか?

田中:
「ゲーム人口の拡大」という言葉がありますが、まさにこのことが革命だと思うんです。若干話が違いますが、僕はインドでTATA MOTORSが10万円自動車を発売すると聞いて衝撃を受けましたが、やっぱり「100万200万だと車買えないけど10万だったら買うよ」という人が世界には何億人もいると思うんです。これこそが革命であって、人の伸び率を変えることはこういうことだなと、凄いなと思ったんです。世界中にはですね、ゲームをやりたいと思っていても、そんな2万円のハードなんて買えないよ、お父さんの年収2万円くらいだよって人が死ぬほどいるわけですよ。

今回、そういうような障害を全部取っ払うことで、今までコンソールのゲームでは1億人2億人というのがターゲットのビジネスだったものが、数十億人という単位に変化するかもしれない。新しいエポックメイキングの閾値だと思うんですね。だから、そういう革命によってゲームをできる人数も数億人単位から数十億人単位に変化すれば、さっきの販売商法や流通の革命を見ることで、今までは1本買って3000円、5000円、10000円の世界が、払いたい人は何万円も払えるというまったく新しい次元に入ってくる。

マーケットというか、ユーザーが広がれば単価も上がりますから、2倍の2倍だと4倍ですから、そういった意味ですね。すごい大きな革命がこれから起きるかもしれない。今でもゲームは世界最大のエンターテイメント産業で、今までも発展してきたんですから、これがもう一段爆発的にヒットすればとてつもないことが起きるなと思っています。ここにいらっしゃる方や自分も含めて、僕らが思ってるよりもとんでもないことが起きると。かつてインターネットを初めて15年くらい前に「これは凄くなるなぁ」と思ってましが、その時想像しなかったようなことが今起きているように、ゲーム産業がとんでもない産業に変化する、その入り口にいるんだという風に思っています。


新:
ここのところ家庭ゲーム機産業はネガティブな話が多くて、ここ数年間売り上げが落ち着いてる、若干減っているという状態が起きてるんですが、全世界で見たらどう考えてみてもプレイ人口が増えてるんです。それは、携帯電話やソーシャルゲームが引っ張っていて、少なくとも全世界の全ての人間がスマートフォンを持つまでこのマーケットは広がり続けるわけです。そうすると、田中さんの目標というのは、さっき5億人という数字になってましたけど、それはまだ通過点で最終的には50億人とかにするのがゴール、という理解でもいいでしょうか?


田中:
まず僕はゲームも大好きなんですが、やっぱりこのコンピューター産業、インターネット産業の人間だなと思ってまいす。今回のスマートフォンは、単なる電話の話をしてるんじゃないなと。皆さんもご存知だと思いますが、これから10年間で起きる革命は、スマートフォン、携帯電話という世界でもっとも普及する端末が誕生するとともに、Android、iPhone、チップセットというコンピュータアーキテクチャが家電とかゲーム機とかパソコンとか、そういったマーケットと統合していくことになります。このパソコンもゲーム機も家電も携帯電話も全部統合した新しいコンピューターのフレームワークが誕生するという、歴史的な出来事です。

僕が昔パソコン買った頃は、FM TOWNSMC68000はOSも違えばそもそもフロッピーの大きさも違う時代だったわけです。そこからすれば今も天国みたいな世界ですが、それどころじゃないです。相当なコンピューターのアーキテクチャが統一化されるということが、これから10年間で起きると思いますが、そうするととてつもない量産効果が出ます。今でもAndroidなんて50ドル(約3850円)とか100ドル(約7700円)とかで売られてますが、コンピューターが5年後には本当にタダみたいな値段で売られると思うんです。全ての人がタダみたいなコンピューターを手に入れた世界において、新しいコンピューターのパラダイムがはじまると思うんですよ。

それをいかにつかむのかというのが、このスマートフォンビジネスの入り口にすぎないと。その中で新しいコンピューターのアーキテクチャを切り開くのが、この今やってるソーシャルネットワーク、ソーシャルゲームといわれて業界の進むべき一歩かなと思ってます。そういう大きなヴィジョンの中で5年後、10年後に何を作るのかと考えているので「1億ユーザーにする」とか「1億儲ける」とかそういったレベルの話じゃなくて、まったく新しい人類の進化に立ち会うんだという感覚で僕としてはやってます。


新:
非常に面白い話でした。ちょっと短期の話を伺っておかなければいけないんですが、今Unityさんと事業提携の発表をなされて、あれも非常に衝撃的なものだったと思うんです。これから3、4年間、少なくともNVIDIAが発表してるフォトマップでは、このままのスケジュールだと、2013年頃にはXbox360とPS3とNVIDIAがリリースするチップが並ぶ、もしくは追い抜くというスケジュールになってます。そういう中でユーザーには無駄なまでに非常にハイパワーなコンピュータが出てくると思うんですが、そのときにゲームの持っている、作るべきゲームとか、ユーザーが求めるゲームっていうのはどういう風に変わってくると考えてらっしゃいますか?

田中:
いわゆる高画質化とか、3D化みたいなものは当然進むと思うんですが、ただやっぱり、ここで間違えてはいけないのは、今何でこんなにソーシャルゲームが求められているかというと、グラフィックがめちゃくちゃ凄いからっていうわけではまったくない、ということです。

僕が思い出すのは「インターネット業界良いなぁ」と思った1990年代中盤には誰に聞いても「こんなもん流行んない」と。何故かと言われたら「画像がショボイから」だと。テレビを見ろ、ブルーレイを見ろと言われたんですが、いまだにインターネットは大した解像度ではないですが、発展を続けているわけです。これがまさに1つの解だなと思っていて、当然その、YouTubeが見れるとかいろいろあるとは思うんです。でもいまだに1番読まれてるのは、テキストなんです。インターネットの革命っていうものは、コミュニケーションそのものがもっとも重要なキーファクターだと考えています。

インターネット業界で今起きてることは、やっぱりデータマイニングを中心としたウェブ作りなんです。これが何で起きてるかというと歴史的な自然性があります。通信回線速度が上がっていて、ローカルのCPUコアが上がれば上がるほど、ウェブ自体が見るものから操作するものに変わってるんです。10年前のウェブと今のウェブでは、多分1時間の間にクリックしてる回数が10倍くらい差があると思います。

昔はウェブ業界では、「目の動きを追って、それによってデータをマイニングするんだ」という考え方が存在していましたが、今はクリックしてますから「クリックを追ったら良いじゃないか」という時代になりました。逆に言うと、クリックが少ないとデータマイングしようがないんです。見てるだけだから。今は操作するウェブに変わったのでデータがとれるようになった。だからデータに基づいたものづくりが可能になったと、そういう変化があると思ってます。

それはまさにこのソーシャルゲーム業界でも同じことが言えると思っていて、世界でものを作るといったときに、僕もローカライズ、カルチャライズすべきだ、した方が良い、しよう、と思ってます。僕はいわゆるコンソールゲーム業界においてグローバルにものづくりをしたことが一切ないので違っているのかもしれませんが、要は「世界中のユーザーの違いを理解しながら、KPIをチューニングしてターゲットに近づき続けられるっていうオペレーションそのもの」が最大のものづくりだと思うんです。

これが地域、国、性別、言語なのか人種なのか知りませんが、どう違うのかを発見するということが壮大なゲーム作りであって、それを改善するために見た目を変えるとか色を変えるとか、ローカライズがあるわけだと思うんです。その手法と、目的を逆転してはいけないと思っていて、あくまでデータに基づいてそれを修正するんだと。「どういう表現手法をもたらすことが一番ユーザーから見て自然なのかというアプローチである」ということを忘れてはいけないと思います。

新:
ありがとうございます。アラさんに伺いたいんですが、ソーシャルゲームの今後のことですが、今非常にソーシャルが人気が出ていて、ある意味ハイエンドなゲームのひとつのモデルだと思います。

ソーシャルゲームではユーザーのニーズを分析していくことはキーにはなりますが、当然ゲームのクオリティも上がりつつあります。それに対して今PlayFishという会社はどのようなプロセスをとろうとしているか、というのを是非お話いただきたいなと。ハイエンド化していくゲームに対して、どういう風にPlayFishがアプローチをなさっているか。


アラ:
それについては社内でもいつもよく話しています。PlayFishは大企業の一部になったので、PlayFishだけではなく、ソーシャルゲームに関して仕事をしている部署がいくつもあります。ソーシャルゲームの素晴らしい点を挙げると、ゲームの原点に戻った、ということが言えると思います。社会的な関わりということで、その前にあった機械としてのゲーム、「複雑な操作をどうやってやっていくんだ」ということを考えていくようなものではなく、ソーシャルゲームの中では、本当の友人と関わっていくような関わりが持てるとところだと思います。

例えば、私に姉がいて、彼女には4人子供がいますが、コンピューターゲームは全然子供にもさせないし自分でもせず、カードゲームはするけれども、コンピューターゲームには関わっていない人です。私自身はゲームをたくさんするのでその辺りは違っていますが、PlayFishのゲームで、「本当の友人と交流してるみたいだから」と始めたものがあって、そのゲームの中で実際にプレゼントを友人に送ったりというところが「非常に本当の友人と関わっているようだ」と言われました。そういったところでソーシャルゲームの市場がだんだん大きくなっていくんじゃないかなと思いました。

私どもの会社のゲームでも、Facebookで3位になった、800万人獲得したものがありますが、それも内容がより深いものになって、より追求型で、人と関わりを持てるようになってきましたので、将来的にはそういう方向にいくんじゃないかと思います。

新:
ありがとうございます。手塚さんには、モンスターハンターソーシャルの発売日を教えてもらいたいんですけど(笑)すいません、冗談です(笑)

ハイエンド化していくチップ性能と、ゲームのコアの部分は変化していくと思いますが、今後2年、3年くらいの中期くらいの中で中心になっていくようなソーシャルゲームはどういうものが求められいくようになるか、ゲームをリリースする企業としてお話していただきたいのですが。

手塚:
今までいわゆるフィーチャーフォンの時代のソーシャルゲームが流行してることもありますが、ほとんどがスマートフォンに変わってくると多分操作性がクローズアップされてくると思います。今までは、言い方悪いですが「5ボタン連打」と言われるようなタイプのゲームが多かったと思います。5ボタン自体が良いロケーションというわけではなく、イージーに迷わず遊べることが非常に重要なので、そこから多少スマートフォンの時代は変わってくると思います。

そういうときに、今までのアプリケーションとしてのゲームの良さと、誰もが遊べるタイプのゲームっていうUIの部分がうまく融合してくると。多分ゲームのルールみたいなことに関しても、多少影響してくるのかなと思います。先ほど田中氏がおっしゃっていましたが、これからゲームのユーザー人口が爆発するというところで言うと、例えばゲームを実際にプレイしていただけるお客様が今の10倍になるとしたら、今のゲーム業界の相手にしているお客様は、その中でも10%にすぎなくなります。よって残りの9割の方がどんなことを考えるかってことも視野に入れながら作る必要が出てきます。

そのとき、どういう遊び方をさせれば良いのかをまさにデータを見ながら作ると。ただ、データを見ながら作ると言うと誤解する方もいるかもしれませんが「データというのは見方」みたいなところがあります。「データを見たときにどのアングルから見るかで見え方がまったく違う」という、そこにおそらくクリエイティビティを発揮する余地が非常にあると。「データがあったらゲームがどんどんできていく」という話とはちょっと違うのかなと思ってます。データに盲目的に従うのじゃなく「データという絶対的なものを、どういう指標として作っていくのか」ということを考えていくべきなのかな、という風に思います。

新:
ゲームを作っていく側の責任はその部分にクリエイティビティを新しく発揮させていくことだと。

手塚:
アーケードゲームだと先ほども言ったようにインカムだったり、実際ゲーマーがどういう動きをしているのか見ながらチューニングしてたというようなところもあります。そこに関してはそもそもやってる会社も多くあると思いますが、今後データが取りやすくなるということに関しては「データに振り回されないように」というところが出てくると思います。

新:
ありがとうございます。庄司さんにも同じように伺いたいんですが、電車でGO!ソーシャルのワールドワイド展開の発売日を是非教えて……すいません(笑)

庄司:
売れますかね……?

新:
(笑)

庄司:
表現がリッチになっていっても、操作性が色んなことができるようになっても、多分ここは変わらないだろうなと思っているのが「無料」「簡単」「わかりやすい」この3つは多分変わらないだろうなと思います。


あとはコンシューマだと出してからデータとるのは確かに難しかったんです。ですから「当たるか当たらないか分からないけど3年後くらいに真っ暗闇の中に石を放ってみる」という世界でした。今は「放ってみたら何が起きたかわかる」っていうのが凄く大きくて、「やってみないとわからないし、やったことしか残らない」ということですが、「残るものは凄く膨大に、データとしてある」と。そうすると、何度もチャレンジができますし、改善をしていくので、よりお客様に対してヒットするコンテンツを出していくことができます。

それじゃあこれからどうなっていくのかというのは、正直な話全然わからないですが、間違いなく市場が大きくなっていきますし、データは全てではないですがすごく正直ですから、手塚さんがおっしゃったように「それをクリエイティブに生かしていけるか」というのが、今後ソーシャルゲーム作りの大きなポイントかと思います。

新:
ありがとうございます。最後に田中社長にお願いしたいと思います。世界にいろんな企業が出ていこうとされてますが、そのためにGREEさんとしてできること、それから何か具体的なアドバイスがあれば一言いただければなと。

田中:
まず、うちの会社も上場企業でいろいろ考えてますが、一番僕がこの会場の方、この業界の方に伝えたいのは、世界中の人に今までとは違うレベルで何かサービス、ゲームを作ってその人たちの人生を変えられる、楽しませるだとか喜ばせるだとか、考えを変えさせるだとか、何でも良いと思うんですけども、そういうことができるのは本当に新しい出来事だと思うんです。

僕は、これは社長の仕事上の問題ですが、儲かるか儲からないかという以前の問題として、やりたいと感じます。僕は当然ビジネスマンとして、やりたいことをいかに収益に結び付けて、この経済社会の中において実現するかってことを求められていると思ってます。でも、僕としては何よりもまず儲かる儲からないの前に「世界中でやるんだ」という意気込みを強く持ってるということをお伝えしたい。


ただ、気合いと根性だけでは行けないところもあります。今僕らが日本国内中心にあげている昨今の利益水準、この利益水準をもとに僕らはグローバルに大きく展開しようとしていますが、ビジネスを大きくグローバルに展開するためには相当なお金がいると今考えています。最近のGoogleを見ていると、色んな試験的なサービスを全部止めはじめてますが、あれは当たり前なんです。Appleと勝負するって、金の問題が半端ないですから。そんなGoogleをもってしてもとしても「僕たち金なかった」と、「相当金集めよう」というのが今のフェイズなわけです。

このように、世界中で大規模なオペレーションを行うにはめちゃくちゃ金が要ります。そのためにはとにかく収益をあげる必要があります。だから僕らは今企業としても高い収益をあげることを目標としてますし、この収益をもとに世界に展開できると思ってます。そしてこういうことが実現できる会社というものも、そんなに多くないと思ってます。世界的に見ても数少ない、実際にこれだけの利益をもとに世界展開する会社で、それは僕らがこの6~7年間かけて会社を作ってきて初めてできることかと思ってます。

最後にゲーム関係者の方に僕として伝えたいメッセージとしては「自分たちが作るゲームがどれほど多くの人たちの人生を変えるのか」ということが、一番大きい尺度のひとつだと思っています。やっぱりものづくりは作りたいものを作る、ということももちろんそうなんですが、結果として5万人10万人の人が楽しんでくれたってことで終わるのか、それとも何百万、何千万、何億人の人生が何が変わるのか、ということです。僕が何かサービスを作る上では「自分がやってることがどれくらい世界の中でインパクトをもたらせるのか」ということが重要だと思ってます。

皆さんのやっていることは、何億人の人生を、何十億人かもしれませんけど、変えられるチャンスがあるわけです。この何十億人の人生を変えるチャンスに時間を使って、本当に世の中を変えていくために何か一緒にできたら良いなと、僕としては思います。


新:
ありがとうございました。だいぶ時間が押しましてどうも申し訳ありませんでした。ただお話として非常にポジティブなメッセージで、なるほどな、と納得させていただきました。ではこのセッションを終了させていただきたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。

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in 取材,   ゲーム, Posted by darkhorse_log