生き物

イルカと会話するための翻訳機を鋭意開発中、今年中に野生のイルカたちを対象とした実験も


動物の中でも特に知能が高いと言われているイルカと会話するために、翻訳機を使ってイルカの言語を解明しようというプロジェクトが進行しています。

語数は少ないもののリアルタイムで返答することも仕様上可能となっていて、もしこのプロジェクトでイルカの言語についてその手がかりをつかむことができれば、動物と会話をするという人類の夢に一歩近づくかもしれません。


イルカとの会話を実現するための翻訳機と、それを使ったプロジェクトの詳細は以下から。Talk with a dolphin via underwater translation machine - tech - 09 May 2011 - New Scientist

イルカの鳴き声を認識してリアルタイムでの返答を可能とする機器がまもなく動作可能な状態になり、完成した暁にはフロリダ沖の野生のイルカとの会話テストが行われるということです。翻訳機と聞くとイルカの言葉がすぐさま人間の言葉に変換されるイメージを持ってしまいますが、今回製作された機械はイルカと人間が双方向のコミュニケーションを取るために、まずイルカの鳴き声の意味を解明する目的で作られたものです。

イルカというと知能の高い動物として知られ、1960年代ごろから人間に飼われたイルカたちは鳴き声や絵を使って人間とコミュニケーションを取ってきました。1990年代には、ハワイ州・ホノルルにあるケワロ湾海生哺乳動物研究所のLouis Hermanさんによって、バンドウイルカは100以上の単語を理解できるということが明らかにされ、同じ言葉でも使われる順番によって異なる反応を見せました。例えば、「bring the surfboard to the man(男性のところにサーフボードを運んでください)」という文と、「bring the man to the surfboard(男性をサーフボードのところに運んでください)」という文の違いを明確に理解していたのだそうです。

「the Wild Dolphin Project」の創始者・Denise Herzingさんは、「これまでの実験における『コミュニケーション』は一方向のものばかりでした。研究者たちがまずシステムを作りあげてそれをイルカに学習させるという方法が取られていて、イルカの側が発言する機会はほとんど与えられていなかったと思います」と先行実験に欠けている部分を指摘し、双方向のコミュニケーションを可能とする試みを始めました。

最初の試みは1998年に行われ、Herzingさんと同僚は水中に設置された4つの大きなアイコンを持つ「キーボード」と人工音を関連づけた装置を製作し、アイコンの方にイルカが体を向けることによって、「海藻を使って遊ぶ」「ダイバーが起こす船首波に乗って遊ぶ」といった選択肢の中から好きな物を選択できるようにしました。この装置はイルカの興味をかき立てはしたものの、イルカにとって使いやすいものではなかったため、十分なコミュニケーションを取るには至らなかったとのこと。

そして現在、Herzingさんはジョージア工科大学で人工知能を研究しているThad Starnerさんとの共同研究である「Cetacean Hearing and Telemetry (CHAT)」というプロジェクトに携わっています。このプロジェクトでは野生のイルカが自然界で発している鳴き声の特徴をつかみ、イルカと言語を共同作成するような形で進行していくものとなっています。

イルカは人間が聞き取れる最高音域のおよそ10倍にあたる200キロヘルツの高さの音まで出せて、さらに鳴き声のピッチや長さも自由に変えられるとのこと。さらに頭を振らずとも音を飛ばす方向を変えることができるのですが、その特技ゆえに群れの中でどのイルカが鳴き声を上げたのかが観測しづらい部分があり、音の意味を突き止めることで群れの中のイルカが何を言っているのか推測していくことにしたそうです。


Starnerさんと彼の生徒たちは翻訳機のプロトタイプを製作しました。スマートフォンくらいの大きさで、イルカが発する鳴き声の全周波数をとらえることのできる2台の水中聴音機を搭載。実際に使用する場合はダイバーが防水ケースに翻訳機を入れ、自分の胸にたすきがけにして持ち運ぶことが想定されています。ダイバー用のマスクにはLEDが埋め込まれていて、イルカの鳴き声を録音可能な場所で光って知らせてくれる仕様になっていて、マウスとキーボードを併せたような入力装置「Twiddler」を操作して、どの鳴き声に返答を返すか選択できるようにもなっているとのこと。

この翻訳機を使う際、まずダイバーはすでに人間の側で生成した「海藻」「船首波に乗る」といった言葉を再生し、それをイルカたちがまねしてくるかどうかをまずソフトウェアに認識させ、その次の段階として、イルカのコミュニケーションに使われる言葉の基本単位となるかもしれない、鳴き声の顕著な特徴を抜き出す作業に移ります。

まだコミュニケーションの基本単位が存在するかどうか検討もついていない状況ですが、彼らが用意したアルゴリズムは、未知のデータから興味深い特徴をピックアップするように設定されていて、似たような傾向を持つ内容についてはグループ化していき、鳴き声からすべての特徴を抽出するまで作業が反復されるそうです。

こうして抽出された基本単位が確認されたら、Herzingさんはそれらを組み合わせてイルカそっくりの鳴き声を作り、それをまたイルカに聞かせることで、人間が作り出した言葉よりもさらに興味深い、イルカたちが使っている「言葉」を発見できるのではないかと期待しています。翻訳機によって発見した音と特定の物や行動をうまく結びつけることができれば、Herzingさんはイルカの自然言語の基礎を解読した初めての人物となるかもしれません。

プロジェクトが進行していく一方で、それが上げる成果に対して懐疑的な意見も存在していて、非営利組織「the Dolphin Communication Project」のJustin Greggさんは「その実験を行えば、確かに野生のイルカたちは人為的な『言葉』を覚えて使い始めるかもしれませんが、彼ら自身が使っている自然な言語の基本単位を見つけるという目的にはたどり着かないと思います。これではまるで、エイリアンが精巧な宇宙服を来てやってきて、誰かれ構わずランダムな単語選択で意味の無い呼びかけをしているようなものです」と苦言を呈しています。

こういった声に対し、Herzingさんは「確かに、私たちはイルカが言語を操っているのかどうかすらまだ分かっていません。しかし、彼らの発する鳴き声について私たちが理解することができれば、それを操ることもできるはずです」と実験の持つ意義を再度主張しています。

HerzingさんとStarnerさんは、2011年半ばに大西洋に生息するマダライルカを対象に、翻訳機の試験運用を始める予定だということです。

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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