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4000万人を殺したというチンギス・カンは地球の温度を下げたか?


軍が通り過ぎたあとを指して「草一本残らない」というような表現もありますが、「国破れて山河在り」「夏草や兵どもが夢の跡」というように、戦により荒らされ人が住まなくなった土地には、やがて草木が生い茂るもの。では、実際に地球の気候に影響するほど大規模な森林再生を促すには、一体どれだけ人口を減らせばよいのでしょうか?

カーネギー研究所マックス・プランク研究所の科学者たちにより、これまで知られていなかった征服者のグリーンな側面が明かされています。

詳細は以下から。How Genghis Kahn cooled the planet

「人間の活動が気候へ影響するようになったのは化石燃料の発見にともなう産業革命以降のこと、というのはよくある誤解です」とカーネギー研究所の環境科学者Julia Pongratz博士は述べています。「実際には、農耕のために森林を開拓し地球表面の植生を変えたことにより、人間は数千年も前から気候に影響しているのです」

農耕牧畜を始めて以降の人類は、基本的には森林を減らすことにより吸収される二酸化炭素の量を減らし、大気中の二酸化炭素を増やすことにより「地球を温め続けてきた」と言えます。そんな歴史のなかで、人間の活動により「地球が冷える」ような出来事はあったのでしょうか?

Pongratz博士らは人口減少後の森林再生により気候へ影響した可能性が考えられる4つの出来事、すなわち13世紀から14世紀にかけてのモンゴル帝国による侵略戦争、14世紀末のペスト大流行、16世紀から17世紀にかけてのヨーロッパによるアメリカ大陸征服、17世紀後半の明の衰亡に着目しつつ、西暦800年からの土地被覆(森林・草地・水面・土壌など地表面の物理状態)のモデルを作成しました。論文はThe Holocene誌に掲載されています。


「ペスト流行や明の衰亡といった短期的な出来事では、土壌の物質(死体など)の腐敗により排出される二酸化炭素を帳消しにするほどの森林再生は見られませんでした。しかし、モンゴル帝国による侵略やヨーロッパによるアメリカ征服といった長期間にわたる出来事では、有意な量の二酸化炭素を吸収できるだけの森林再生が可能でした」とPongratz博士は語っています。

今日のアジアのほぼ全域から中東・東ヨーロッパまで、最盛時には地球全土の22%を占めた史上最大の帝国モンゴル帝国の祖であり、4000万人を殺したと言われるチンギス・カン(チンギスハン、1162-1227)。その大量殺害のあとの森林再生は、実際に地球の温度を下げるほどの規模だったそうです。


チンギス・カンが1206年に築いたモンゴル帝国は、5代皇帝クビライ(フビライ、1215-1294)の時代には地球上の陸地の2割を占めるまでになります。



Pongratz博士らの研究によると、4つの出来事のうち「モンゴル帝国による侵略」が地球の気候に最も大きく影響し、モンゴルの覇権のもと、国家や都市の滅亡と人口減少による森林再生により大気中の炭素7億トンが吸収されたそうです。これは、現在地球上で一年間に排出されるガソリン由来の二酸化炭素と同程度の量とのこと。

現在、地球上で排出される温室効果ガスの約10%は、森林破壊によるものとのこと。温暖化対策には木を増やすことを考える前に、まずは森林の減少を食い止めることから始める必要がありそうです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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