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価格13億円という世界一高価なドメイン名「sex.com」、差し押さえを受け競売へ


所有権をめぐる詐欺やその後の裁判で有名で、その経緯は2冊のノンフィクションにもなっているドメイン名「sex.com」ですが、2006年1月には1400万ドル(約12億8000万円)でボストンの会社Escom LLCに売却され、史上最も高価なドメイン名としても知られるようになりました。

1995年に本来の登録者からドメイン名を詐取した詐欺師は5年間で100億円を稼いだと言われており、まさにインターネット上の金の卵ともいえる「sex.com」なのですが、このドメイン名を担保にした負債をEscomが返せなかったため、差し押さえを受け競売にかけられることが明らかになりました。


詳細は以下から。Sex sells – but sex.com isn't worth $14m, owner of domain name finds - News, Gadgets & Tech - The Independent

Be Careful what You Wish For: The Continuing Saga of Gary Kremen and Sex.com

「sex.com」は1994年4月、起業家Gary Kremen氏(世界最大の出会い系サイトMatch.comの設立者)によりネットワーク・ソリューションズを通じて登録されました。Kremen氏は当初このドメインに何もサイトを作らずに寝かせていましたが、その間に詐欺師Stephen M. Cohenが目をつけ、Cohenが電話・Eメールや手紙を偽造してネットワーク・ソリューションズに連絡し続けた結果、1995年にCohen名義に変更されました。このことで、ネットワーク・ソリューションズはKremen氏による民事訴訟を受けることになります。

Cohenが「sex.com」ドメインで作ったサイトは1日2500万のアクセス数を誇り、1ヶ月あたり500万~5000万円ほどの広告収入を得ることになりました。Cohenは1995年10月~2000年11月の間に「sex.com」の所有を通じて1億ドル(約92億円)の利益を得たと見られていますが、裁判所による査察を拒否し、所有するほとんどの会社が倒産しているとする虚偽の情報を提出、資産の大部分をアメリカ国外に違法に移すことに成功しています。

5年間の裁判を経て「sex.com」の所有権はKremen氏の手に戻ったのですが、2001年にKreman氏に対する6500万ドル(約60億円)の損害賠償を命じられ、逮捕状が出ると、Cohenはメキシコへ高飛びします。Kremen氏が5万ドル(約460万円)の賞金で情報提供を呼びかけたにもかかわらずCohenは何年間も逃亡生活を続け、2005年10月にようやくメキシコ・ティフアナで移民法違反の罪で逮捕され、アメリカに引き渡されました。

獄中で尋問を受けたCohenは「逃亡中に起きた脳卒中による記憶障害がある」と主張し、「sex.com」で得たはずの巨額の資産の行方は明らかにされていないとのことで、Kremen氏は損害賠償額6500万ドルを受け取ることはできなかったのですが、Cohenから没収されたカリフォルニア州サンディエゴ郡にある豪邸を所有し、現在居住しているそうです。なお、Kremen氏が裁判にかけた費用は約500万ドル、2003年にネットワーク・ソリューションズから受け取った和解金は1500万ドル(約13億7000万円)と言われています。

この詐欺事件と法廷闘争の経緯はサイバー事件を専門とするKremen氏側の弁護士Charles Carreon氏による「The SEX.COM Chronicles」と、ジャーナリストKieren McCarthy著「Sex.com: One Domain, Two Men, Twelve Years and the Brutal Battle for the Jewel in the Internet's Crown」という2冊の本にもなっています。McCarthyによると「無学だが天才的IQと異常なほどの説得の腕を持つ詐欺師」であるというStephen M. Cohenと、スタンフォード大学でMBAを取得し数々のインターネットベンチャーを成功させてきたエリートビジネスマンであるGary Kremen氏という対照的な2人の対決に興味がある人は読んでみるとよいかもしれません。

サンディエゴ群Rancho Santa Feの自邸(6寝室・830平米)のプールの前で笑顔を見せるGary Kremen氏(2006年)。Cohenの逃走中にはうつになり薬物を乱用した期間もあったそうですが、家族の支えにより立ち直ることができたとのことです。


詐欺を働いたStephen Michael Cohen(1966年・ロサンゼルスのVan Nuys高校のアルバムから)。


Kremen氏は「sex.com」を2006年1月にボストンの会社Escom LLCに1400万ドル(約12億8000万円)で売却し、サイトの顧問に就任しました。新オーナーらは「PLAYBOYを含むさまざまな企業とコンテンツの配信契約を結ぶ予定があり、アダルトインターネット業界に革命を起こす予定」と語り、Kremen氏は当時「革命的な新しいビジネスプランがどう発展するかワクワクしている」と語っていたのですが、Escomが開設したアダルト・ポータルサイト「Sex.com」は結局のところ特徴のないありふれたものに終わり、「worldsex.com」や「livesex.com」など競合する類似ドメインも多数登場したこともあって、「世界一高いドメイン名」に見合う利益は上げられなかったようです。

「Sex.com」は現在すでに運営を停止しているようで、サイトにアクセスすると別のページへリダイレクトされるようになっていますが、キャッシュはこんな感じ。
Sex.com - All Ways on Your Mind


ドメイン取得費用の13億円が回収できたのか否かや、Escomの負債額など詳しいことは明らかになっていませんが、Dom Partners社への債務不履行により2010年3月18日に競売にかけられるとのことで、1週間ほど前から競売実施者のDavid R. Maltz & Co., Inc.のサイトで告知されています。競売はニューヨークの法律事務所Windels Marx Lane & Mittendorfで行われ、入札希望者は100万ドル(約9200万円)分の支払保証付き小切手を当日会場に持参する必要があるそうですが、関係者筋によると「2006年に売却された時のような金額に達するとは考えにくい」そうです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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