カジノから巻き上げ貧しきに与える伝説のギャンブラー「ベガスのロビンフッド」

デトロイト郊外のトレーラーハウスに暮らすKegler夫妻の3歳の娘が脳腫瘍(しゅよう)と診断されたとき、夫妻には3万5000ドル(約320万円)の借金があり、将来は絶望的に思えました。しかし、1本の電話がすべてを変えることになります。

電話の主は、借金に苦しむ人々へその負債金額をブラックジャックで稼いで贈るという義賊のような匿名ギャンブラー「ラスベガスのロビン・フッド」。映画のような話ですが、助けられた人々の証言により徐々にその実像が明らかになってきています。

詳細は以下から。
Robin Hood of Las Vegas takes from the rich casinos to give to the poor - Telegraph

3歳の娘Madisonが脳腫瘍と診断され、絶望していたKegler夫妻のもとに1本の電話がかかってきたとき、2人は耳を疑い、泣き崩れました。電話は、お金に困っている家族を選びカジノで稼いだお金を分け与えるという、謎に満ちたラスベガスのギャンブラーからのものだったのです。

脳腫瘍と診断されたMadison Kegler(3歳)

「あなたたちは選ばれました」と電話の主は言いました。「私はこれからあなたたちをベガスに招待し、あなたたちが必要としているお金を稼ぎます」

続く出来事は夢の中のようでした。迎えにきたリムジンで空港まで送られ、ファーストクラスでラスベガスへ飛ぶと、そこからはロールス・ロイスで宿泊先のPalazzoホテルの750平方メートルのスイートへ。そこでKurt Kegler氏(48歳)と妻のMeganさん(29歳)は招待主に対面します。3人はカジノへ直行し、夫妻が見守る中「ロビン・フッド」は大金をつぎ込みブラックジャック・テーブルでの長丁場に挑みました。

「ロビン・フッド」は自信に満ちていましたが、勝負は順風満帆というわけではありませんでした。連勝の波に乗り取り返す前には、一度は数十万ドルも負けが込む様子も夫妻は目撃しています。

勝ちがちょうど夫妻の借金額3万5000ドルに達したとき、「ロビン・フッド」は勝負を降り、巨大な袋に入ったチップの山を夫妻に渡しました。「このお金で、すべてが完全に変わりました」とKegler氏は語っています。

1年前のこの出来事は今ではラスベガスのおとぎ話の1つとなっていて、以来、町ではこの義賊のような謎のギャンブラーの正体について噂が飛びかっています。中にはラスベガス大通りで道行く人に100ドル札を配っていたという目撃談まであるそうです。

「Robin Hood 702」と名乗るこの謎のギャンブラーは、RobinHood702.comというサイトで借金に苦しむ人々を募集(1～3分のビデオ形式)し、応募者の中から不定期的に助ける人を選んでいるそうです。援助できる金額は最大5万ドル(約460万円)で、ブラックジャックのテーブルで何が起きたとしても、必要とされている金額の半額は必ず支払われると保証されています。

どういう人々が「選ばれて」いるのか気になるところですが、Kegler夫妻のほかにも、最近では高齢の両親の医療費で借金があったサウスカロライナ州チャールストンの女性に負債額2万(約180万円)ドルが贈られたほか、今年4月にはソマリア海賊に襲われたコンテナ船Maersk Alabama号の乗組員たちにラスベガス旅行をプレゼントしたそうです。

「Robin Hood 702」の本名や詳しい情報は明らかにされていませんが、背が高い白人男性で、Tシャツにジーンズ姿、禁酒主義であることが知られています。「702」という数字はラスベガスの市外局番に由来するとのことです。カジノのオーナーたちの間では「Whale」(クジラ：大金を賭けるエリートギャンブラーのこと）として知られ、1晩で数十万ドルを勝ったことも負けたこともあるそうです。

テレビ番組の取材を受けたこともありますが、顔は隠されています。

彼の目的はシンプルで、「ギャンブルには暗黒面があるけど、その暗い側から獲得したお金を善いことに使いたいんだ」と語っています。年明けにもまた困っている家族を選び、援助する予定とのことです。RobinHood702.comには1日に300件もの応募があるので、選ぶのも大変かもしれません。