インタビュー

角川の動画共有サイト活用戦略についてインタビュー「全部を認めたわけではなくて、認めるべき部分を認めただけ」


4月から東京コンテンツプロデューサーズ・ラボというコンテンツプロデューサーを養成するビジネススクールが開校されます。開校特別セミナーとして角川デジックス社長の福田正氏による「角川グループの WEB2.0/YouTubeの活用戦略」の講演があったので、インタビューを申し込んだところOKをいただいたので、いろんな話をうかがってきました。

セミナーで語られたYouTubeと角川の付き合い方から、コンテンツに対する考え方まで熱く語ってもらいました。

インタビューは以下から。
GIGAZINE(以下、G):
今回はお会いできると思っていなかったので、とても驚いています。よろしくお願いします。

福田
よろしくお願いします。

G
いきなりですが、以前日経Tech-onのインタビューにて「会長は思い切ってコミケを認めて…」と、角川歴彦会長がコミケを認めたような節の発言があったのですが、社内での反応はいかがでしたか。

福田
というと?

G
コミケに対してはどちらかというとあまりいい印象を抱いていない会社が多いような雰囲気があるので、黙認のような形なのかなと…

福田
うちは別に黙認というわけではないですよ。ただ、話の流れがあった上でその発言があったわけで、そこだけを切り取って「コミケを認めた!」と書かれるのは困ります。悪いところもいいところもある以上、悪いところは悪いとした上できちっと注意を行い、一緒に未来を探そうというスタンスならば一緒にやろう、ということです。

G
なるほど。

福田
記者さんはすぐに「~を全部認めた」と書きたがるけれど、そんなことはない。YouTubeについても同じで、全部を認めたわけではなくて、認めるべき部分を認めただけです。人間と同じで、いいところがあれば悪いところもあるんだから、いいところを認めたからといって悪いとことまで含めてOKとしたわけではありません。

G:
なるほど、「コミケを認めた」といっても「いい作品について認めた」というだけだということですね。

福田
コミケといってもいろいろあって、著作権を無視した作品を作っている人だっているから、そういうのまで含めたらえらいことになっちゃう。それを無視して記事にしてしまう人もいるけれど、それは書く人間が間違っています。

◆動画配信サイトとの連携
G
YouTubeの中で角川アニメチャンネルを設立して、アニメの配信を開始するというニュースがありました。

福田
ええ、配信していますよ。

G
YouTubeではGDHさんが新作アニメの配信を行うというニュースもありましたが、今後、角川グループ作品でも新作が配信されるということはありますか?

福田
我々はYouTubeに限っていません。今はYouTubeのシェアが大きいからYouTubeを中心として進めていますが、角川グループとしてはプラットフォームがYouTubeでもニコニコ動画でも、自分たちのルールが守られる範囲の中でやっていきます。

G
なるほど。

福田
ただ、こういうことを言うとすぐに「角川が全作品をネット配信へ」なんて書かれてしまうけれど、コンテンツは同じものではなくオンリーワンのもの、ストーリーもプロモーション方法も変わってくるわけです。コンテンツプロバイダーの仕事というのは、それぞれのコンテンツにあったマネージメントをしていくことなので、何でもかんでもYouTubeにアップすればいいというものではありません。著作権者がYouTubeにアップしたいというならそれに最大限応えるというように、タレントのマネージメントと同じようなことをやっていくというのが我々の仕事です。

◆P2Pを使ったアニメ配信
G
角川デジックスではBitTorrentを使ってアニメのP2P配信もやっておられますね。

福田
現在においては政府の実証実験としてやっています。総務省や東大もついてやっていることなんですが、なぜか「角川がP2Pをはじめた」なんて書かれてしまう(笑)

G
「BitTorrent」という名前だけで反応してしまうんですね(笑)

福田
トラッカーサイトを作って違法コピーをばらまいているのは世間のある意味悪い人たちであって、BitTorrentは「心を入れ替えた組」なんです。レンタルビデオ、レンタルCD、そしてレンタルDVDというものだって、著作人格権の複製権が違法だというのならアウトですが、個人利用にまで文句を言い始めると日本の経済が回らなくなってしまう。今や、我々の扱うアニメDVDだってレンタル流通をなくしてしまうと採算が厳しいというような状態です。BitTorrentも同じようなもので、作った人間たちに悪気はなかったけれど、使った人の中に悪い人がいたということです。

G
なるほど。

福田
これまでBitTorrentで違法なものがばらまかれてしまったけれど、これからは一緒に協力していくということで、古い技術はサポートせず新しい技術を生み出していくことにしたんです。レコードがCDに変わったときレコードを全部回収するなんてことはしなくて、自然に新しいものへと移っていったように、BitTorrentが古い技術を新しい技術で上書きしていくということです。それを、「BitTorrent」という名前が出るだけで現在も全てが悪いと言ってしまう。

G
ふむふむ。

福田
BitTorrentが心を入れ替えたからこそ我々は協力し、著作権団体と一緒に新しい時代に進もうとしているところなんです。ところが、一つ前にあんな悪いことをしていたと文句を言う。悪いことをなかったことにはしないけれど、それは見つける度に直せばいいことなんです。

G
そうですね、いつまでもこだわってしまう傾向はあるかもしれません。

福田
今の文化のために、当たり前のことを当たり前の次元で一つずつやっていく、それが当たり前のことです。これは角川だけのためではなく、世の中全体のためとしてやっていくのが正しいスタンスなのではないかと考えています。相手が国なら、言うことを聞く代わりに、国もいいものはちゃんと取りあげてくれというように交渉します。P2Pがいい技術だというのなら、それをちゃんと使っていきましょうと。

G
P2Pの技術が悪いことをしたわけではないですからね。

福田
悪い使い方をする人が悪いわけです。車だって、ちゃんと運転している人は悪くなくて、飲酒運転をしたり暴走運転する人が悪いわけで、全部悪いと言ってしまうと車が悪いのかという話になってしまう。

東京コンテンツプロデューサーズ・ラボについて
G
クリエイターを養成する学校はいろいろあるが、「東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ」のようなプロデューサー養成スクールはとても珍しい試みだと思います。ここから生まれる次世代のプロデューサーに期待することはありますか。

福田
プロデューサーになろうとする人が、どういうようにクリエイターとプロデューサーの違いを意識しているのかというのが重要ですね。ただ、プロデューサーと一口にいっても色々あるので、ちょっと一概には言えません。プロデューサーはいろんなことを作っていく権利と同時に、作ってくれている人の責任、未来を見据える責任を背負わないといけません。権利より責任の方が重いので、やることを教えるだけでなく、責任の重さをしっかりと教えることも重要だと思います。

◆世界一のメガコンテンツプロバイダーへ…
G
最後に、角川グループホールディングスのサイトに「世界一のメガコンテンツプロバイダーへ」という言葉があるのですが、これはどのようなものなのでしょうか。

福田
一口で説明するのはとても難しいですね。説明し始めると時間が大量に必要だし、一個所だけ持ってきて説明するとまた誤解を招いてしまう。ただ、いろんなコンテンツをいろんなプラットフォームで、広く安くあまねく、というのが世界一のコンテンツプロバイダーだと思います。それをどのように…ということになるとまたえらく時間がかかってしまうのですが、例えばGoogleとの提携が高く積み上げられたピースのうちの小さな一つというような感じです。4月1日からの角川マーケティングの誕生にしても、流れを知っているとなるほどと納得することなんです。

G
なるほど(笑)

福田
私はエンタテインメントの喜びというものは三分割されるものだと思っています。出資者には利益を、従業員は生活の保証を求めているのだから生活を、ユーザはお金を払ってでも楽しさを下さいと言っているのだから、うまく分けられればいいと思っています。

G
なるほど。本日はありがとうございました。

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in インタビュー, Posted by logc_nt

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