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ハードディスクの物理障害、果たして本当に復旧できるのか?~後編~


総容量40GBの2.5インチハードディスク、そのうちたった23GBのDドライブだけで100万円を突破するという高額な見積もりを出され、憤りに打ち震えるGIGAZINE編集部。馬鹿な、こんなに高かったら大切なデータであってもあきらめざるを得ない人も多くいたはずだ……こんなの何か間違ってる……価格に応じた信頼度があればいいが、一体そんなものをどうやって計るというのか?この価格が妥当なものなのかどうかを検証しなくてはいけない。その方法はたった一つ……同業他社に見積もりを出してもらうこと、これしかない。

というわけで、ハードディスクの物理障害を復旧させるための戦い、その後編です。今後、もしも同じようにハードディスクの物理障害によってデータを失ってしまったが、万が一の可能性に賭けてみたいという人にとっては非常に参考になると思います。では、どうぞ。
■代理店経由だから高いのかもしれない


あまりにも衝撃的な見積書を送りつけられ、放心状態になっていたわけですが、茫然自失状態のままでは前に進めません。このクソ馬鹿高い値段の根拠を考えてみましょう。そういえば先の見積書はオントラックではなく、アイティフォーから届いています。実際の作業はオントラックが行うとはいえ、実際の請求書もどうやらアイティフォーからこちらに請求されるようです。つまり、アイティフォーは電話の受付ではなく、いわば「代理店」になっているわけです。この業界に限らず、どの業界であっても代理店が間に介在すると手数料やらで中間マージンが発生し、高くなります。直販であれば安いのは自明の理。直接、オントラックのサイトから復旧依頼をしたのになぜアイティフォー経由になっているのでしょう?なんだか腑に落ちません。というわけで、オントラックにお電話してみました。

Q.代理店は必ずページに記載されている番号「0120-413-374」あるいは「04-2932-6365」に電話するとつながるようになっており、株式会社 ワイ・イー・データ オントラック事業部にはつながらないということなのか?ページにはその旨の記載はない。土日祝や営業時間外だというのでアイティフォーが受付をしていたがそのままアイティフォー経由になっている。これはどういうことか?
A.営業時間外の電話やメールはすべてアイティフォーへ回されるようになっています

Q.営業時間外ということで代理店が出てきたが、ページのどこにも営業時間について書いていないし、営業時間外の場合は代理店に回されるという記述もなかった。どうなっているのか?ページを見ると24時間受付中と書いてあり、どこを探しても営業時間について書かれていないのですが……?
A.ページには書いておりません

書くべきだろう、普通は……などと思いながら次の質問をしてみる。

Q.代理店経由ではなく、直接、株式会社ワイ・イー・データ オントラック事業部に依頼する方法はないのか?代理店経由だと高くなるから直接、オントラックのサイトにアクセスして復旧依頼をしたのに、いつのまにか間に代理店が入る形になっている。中間マージンが上乗せされてどれぐらい高くなっているのか?
A.高くはなっていない。オントラックが営業時間内に受け付けても、アイティフォーが受け付けても値段に変わりはない

Q.ということは、アイティフォーに限らず、どの代理店が間に入っても見積もりの価格は変わらないと言うことか?
A.変わりません。

つまり、代理店の顔を立てているわけですね。

Q.ページを見ると、値段が安くなる方法として企業内パートナーというのがあるが、企業内パートナーになるにはどれぐらいの実績が必要なのか。また、パートナー相当の割引とはどれぐらいの価格なのか。
A.大口の顧客や頻繁に復旧依頼が来る場合などには割引をしている。割引率は一概には言えないが、大体10%~20%。

Q.提携企業一覧について、代理店・パートナー・優待プログラム提供先のそれぞれに依頼すると株式会社 ワイ・イー・データ オントラック事業部に最終的には回ってくるので、それぞれの代理店やパートナーなどは自前でラボを持ったりHDDの故障を修理できる技術を持っているわけではないという認識は正しいか。
A.その通りです。

Q.送付したハードディスク自体はどこにあるのか?
A.こちらに届いており、実際にラボにある。

ここで見積書の番号を口頭で伝え、確認してもらいました。

Q.パソコンの修理などだと工場に直接持ち込めば安くなったりするが、埼玉県入間のラボに直接持ち込めば安くなるのか?
A.安くはならないが受付はしている。セキュリティ上、直接持ち込んでくるお客様もいるため。

要するに、どうあがいても安くなりません。当然ですね……。

■ほかのデータ復旧会社に問い合わせてみる


最近では医療の分野などでセカンドオピニオンという言葉もありますし、以前のリフォームの時なども複数業者に見積もりを取りました。やはりここはひとつ、別の復旧業者にも聞いてみましょう。

今回選んだのは以下の3つ、基準は「自社で物理障害を復旧させるラボを持っているっぽいこと」。つまり、代理店ではなく、なおかつ論理障害以外は復旧できないなどと言うふざけた業者ではないというのが条件です。この条件を付けると実質、国内の有名どころではこの3社しか残りませんでした。

アドバンスデザイン(神奈川県川崎市)
http://www.a-d.co.jp/

データ復旧センター(東京都港区)
http://www.drivedata.jp/

データサルベージ(東京都港区)
http://www.data-salvage.co.jp/

というわけで、順に電話して聞いてみました。


■アドバンスデザイン株式会社に電話

Q1.代理店というわけではなく、自前で物理修復可能なラボや工場、施設を国内に持っているという認識で正しいか?
A1.その通りです

Q2.株式会社 ワイ・イー・データ オントラック事業部に見積もりを出したらベアリング障害によるドライブ故障に伴う論理的ファイル構造の破壊、オーバーライト、区画情報が見られましたという回答で、回収に影響を及ぼすファイル構造情報の破損はないので100%回収が可能とのこと。ただし費用がDドライブのみで約23.5GB、ファイル数17万個、101万7870円という結果だった。御社の場合はこの場合、値段はどうなりますか?
A2.36万円~97万円になります。ケースバイケースですが、ベアリングが壊れているというのはプラッタのモーターが壊れている訳なので、そうであればかなり重度の方になります。実際の壊れ方によりけり。交換する部品によっても違う。

Q3.株式会社 ワイ・イー・データ オントラック事業部からハードディスクを引き上げて、そちらに送付して見積もりをしてほしいというようなケースには対応可能か?
A3.税込み2万1000円の診断料はかかるが可能。NASかRAIDかで状態は違うが、CF-W2のHDDであればそんなに古いものではないが、ベアリングなどが特殊なのかもしれない。どこのベアリングかはわからないのだが、焼き付いている場合やモーターの不具合というケースも考えられる。実際に現物を見て調査しないと何とも言えない。どうしても費用は発生する。

■株式会社データ復旧センターのデータ復旧サービスに電話

Q1.代理店というわけではなく、自前で物理修復可能なラボや工場、施設を国内に持っているという認識で正しいか?
A1.そういう認識で間違いありません

Q2.株式会社 ワイ・イー・データ オントラック事業部に見積もりを出したらベアリング障害によるドライブ故障に伴う論理的ファイル構造の破壊、オーバーライト、区画情報が見られましたという回答で、回収に影響を及ぼすファイル構造情報の破損はないので100%回収が可能とのこと。ただし費用がDドライブのみで約23.5GB、ファイル数17万個、101万7870円という結果だった。御社の場合はこの場合、値段はどうなりますか?
A2.値段表にもあるとおり、35万円です。物理故障の場合はハードディスクの総容量で決めています。状況によりけりではないです。診断は無料です。大幅なデータ欠損などがなければこのまま料金は固定というお約束をいただいた上で診断することにしています。

Q3.株式会社 ワイ・イー・データ オントラック事業部からハードディスクを引き上げて、そちらに送付して見積もりをしてほしいというようなケースには対応可能か?
A3.可能です。ただ、オントラックにはできるが弊社ではできないという場合や、その逆で弊社ではできるがオントラックではできないという場合もある。というのも、ベアリング故障という今回のケースの場合、どの程度の故障なのかというのもあるが、特定のハードディスクについての修復に必要な部材のストックというのが関係してくる。聞いた話ではオントラックは8000~9000台分の部材ストックを持っており、弊社も同程度を持ってはいるがラインナップが違っている。そのため、できたりできなかったりするケースが出てくる。

■株式会社ブレイバーのデータサルベージに電話

Q1.代理店というわけではなく、自前で物理修復可能なラボや工場、施設を国内に持っているという認識で正しいか?
A1.その通りです。クリーンルームでの作業が必要でない場合や社内で解体可能な場合には国内で行います。また、国内のラボでは対応できないようなケースであっても、アジア圏の国に提携している企業があるのでそちらで修理してもらうことができます。これは代理店というわけではなく、お互いに技術的にメリットのある得意ジャンルは任せ合いましょうという意味での相互提携なので、いわゆる「のれん代」などはかかっていません。

Q2.株式会社 ワイ・イー・データ オントラック事業部に見積もりを出したらベアリング障害によるドライブ故障に伴う論理的ファイル構造の破壊、オーバーライト、区画情報が見られましたという回答で、回収に影響を及ぼすファイル構造情報の破損はないので100%回収が可能とのこと。ただし費用がDドライブのみで約23.5GB、ファイル数17万個、101万7870円という結果だった。御社の場合はこの場合、値段はどうなりますか?
A2.ハードディスクの容量で完全に決まってきます。国内で解体が可能なレベルの物理故障であれば、18万4500円です。ヘッドの交換の場合は海外に出しますので33万2500円です。

Q3.株式会社 ワイ・イー・データ オントラック事業部からハードディスクを引き上げて、そちらに送付して見積もりをしてほしいというようなケースには対応可能か?
A3.対応可能だが、できればそのままオントラックで復旧してもらった方が値段は高いがその分、確実ではある。というのも、一度分解されてプラッタの位置などがずれた状態で送られてくると、解体していなければ復旧できたものでも復旧できなくなってしまうため。解体されていなければ特に問題はない。

■ハードディスク復旧業界の闇


さて、上記3つの業者以外にも様々なハードディスク業界関係者、復旧業界関係者、および実際に修理を依頼した人や企業、その担当者などなどからヒアリングを行った結果、以下のような事実が判明しました。上から順に、多く聞いた順です。

・法人名で依頼すると個人名で依頼するよりも何割か高くなる
・ハードディスクの論理障害の復旧をFINALDATA(ファイナルデータ)で行っている業者がいる
・いつまで経っても預けたハードディスクが帰ってこないので住所に行くと工場跡を更地にした場所でそこには何もなかった
・ハードディスクが分解されてプラッタにマジックで落書きがしてあり、復旧不可能な状態にされていた
・見積もり無料と書いてあるのに見積もりに出したら着手金数万円を請求され、しかも復旧できなかった
・復旧したというのでデータを送ってもらうとインストール直後のWindowsフォルダ以下の内容だけで、自分で制作したワードやエクセルなどのデータは何もなかった
・全部自社でやっているとページには書いてあるが、ただの代理店だった
・詐欺まがいの企業がハードディスク復旧というのはビジネスチャンスだと思って多く参入している
・データが復旧できるとわかったらとりあえず中のデータを全部吸い出して保存しておき、他社に見積もりなどに出されても修復できないようにプラッタは破壊、たらい回しにされてどうしようもなくなったときに再度自社へ見積もりに出してもらい、あらかじめ吸い出しておいたデータを渡して高額を請求

ただし、故意に破壊されていた場合は今回の3つの業者のいずれもが「見ればすぐにわかる」と回答しました。会社のデータなどの場合は損害賠償が請求できると思われますので、泣き寝入りしないようにしましょう。

■ハードディスクの物理障害復旧事例の実際のところ


ほかにも、以下のような事例や豆知識が得られました。

・物理障害であっても開封しなくても修復できる場合がある
・基盤がショートしている場合は開封せずに基盤交換で修復可能
・ファームウェアが破壊されている場合や読み込めない場合はファームウェアのアップデートや再書き込みで修復できるので開封しなくても修理できる
・クリーンルームでの作業が必要な場合でも作業が単純であれば費用はあまりかからない
・プラッタが傷ついて粉砕している状態でも修復可能な場合が多くある
・RAIDやNASは復旧が難しいので高くなる
・ベアリングのみが故障しているのであればプラッタに傷は付いていないのでほとんどデータは復旧可能
・夏には復旧依頼が急増するので温度とハードディスクの物理故障には明らかに何かの関係があるので、一定の動作温度を保っていればかなり長持ちすると思われる
・SCSI接続のハードディスクは本当に故障しにくく、逆にIDE接続はぶっ壊れまくる。SATA接続はまだ実績が少ないので不明
・ハードディスクによって明らかに壊れまくる型番が存在している
・ファームウェアが最初からおかしいというハードディスクも存在しており、その場合はファームウェアさえ書き換えれば安定して動作する
・SMARTの値は故障するかどうかとまったく関係がない、壊れるときは突然死がほとんど
・デフラグの中であるアルゴリズムは通常ではありえないヘッドの動きをさせるため、確実にハードディスクに過剰な負担がかかって故障の原因となっている
・ハードディスクのメーカー自体にも修理のノウハウはあるが、修理するよりもどんどん新しい型番を製造した方が利益率が高いので表立って復旧業界には進出していないが、技術供与はしている場合がある

知れば知るほど、どうすればいいのかわけがわからなくなってきました……。

・次回予告
今回の調査の結果判明したハードディスク復旧業界に深く立ちこめる闇。いわばデータを人質に取るつけ込み商売であるという側面を悪用し、次々と新規参入する怪しい業者の数は約100以上。果たして、無事にハードディスクはオントラックから戻ってくるのか?そしてこのハードディスクを復旧させるのは一体どこの企業のサービスなのか?次回、意外な結末を迎える明日掲載予定の「ハードディスクの物理障害、果たして本当に復旧できるのか?~完結編~」にご期待ください。

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in レビュー,   ハードウェア, Posted by darkhorse

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