ハードウェア

3cm先と1.7km先の被写体に同時にピントを合わせられるレンズ技術が登場、三葉虫の目がヒントに


一般的なカメラでは、その構造から近くの被写体と遠くの被写体を同時にクッキリ写すことが苦手です。アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が新たに、数億年前に絶滅した三葉虫の目を参考にすることで3cm~1.7kmの範囲に同時にピントを合わせられるレンズ技術を開発しました。

Trilobite-inspired neural nanophotonic light-field camera with extreme depth-of-field | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-022-29568-y

Inspired by Prehistoric Creatures, NIST Researchers Make Record-Setting Lenses | NIST
https://www.nist.gov/news-events/news/2022/04/inspired-prehistoric-creatures-nist-researchers-make-record-setting-lenses

写真撮影には被写界深度と呼ばれる概念が存在しており、ピントが合っていない部分はボケてしまいます。レンズの絞り値を調節して被写界深度を深くすると「数m先から無限遠までピントが合う」という状態(パンフォーカス)を作り出せますが、「数cm」という至近距離と無限遠に同時にピントを合わせることは困難です。


数億年前に絶滅した生物である三葉虫の目は複数の小さな目が集合した構造をしており、至近距離と遠くの物体を同時にクッキリ見ることができたと考えられています。NISTの研究チームは三葉虫の目の構造をヒントに、数cmという至近距離と無限遠に同時にピントを合わせられるレンズの開発に取り組みました。


研究チームは、光を特定の方向に曲げられるように成形した何百万個もの二酸化チタンの柱を並べて「メタレンズ」を構築し……


メタレンズを通常のガラスレンズとセンサーの間に組み込むことで、至近距離(3cm)と遠距離(1.7km)の両方にピントを合わせることに成功しました。


さらに、研究チームはAIを用いて至近距離と遠距離の中間に位置する被写体にもピントを合わせられるシステムを構築しました。完成したシステムで実際に撮影された写真が以下。右上に写っている「NJU」と記されたガラス片はレンズの先端から3cmの距離に位置しており(見やすくするために画像編集によって位置をずらしてあるとのこと)、定規は35cmの位置に、上部に写るビルは1.7kmの位置にあります。至近距離から遠距離まで全ての被写体にピントが合っており、遠近感が狂いそうになります。


研究チームは開発した技術が顕微鏡などの被写界深度の深さを必要とする分野に用いられる可能性があると述べています。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1o_hf

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