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「仮想通貨の価格操作」の実例とは?


しばしば話題となる「仮想通貨は価格操作されている」という疑惑について、データサイエンティストのMatt Ranger氏がブログ上で「仮想通貨の価格が操作された実例」を解説しています。

An Anatomy of Bitcoin Price Manipulation – Single Lunch
https://www.singlelunch.com/2022/01/09/an-anatomy-of-bitcoin-price-manipulation/

ビットコインに代表される仮想通貨は「価格操作されている」という懸念がたびたび報じられており、実際にアメリカの証券取引員会はビットコインに連動する上場投資信託(ETF)の申請を価格操作を一因として却下しています。

米SEC、ビットコイン現物ETF申請2件を却下 | ロイター
https://jp.reuters.com/article/sec-bitcoin-idJPKBN2J306E

Ranger氏が今回解説しているのは、同氏が価格操作されていると判断した「2021年7月26日のビットコインの価格推移」について。当日の値動きを解説する前にRanger氏が前提知識として挙げているのが、「バートパターン」と呼ばれるチャートの変動です。ビットコインのチャートは「小刻みに上下した後に急落/急騰する」という特徴があるとされており、この一連の動きをチャート上に描くとアメリカの人気アニメ「ザ・シンプソンズ」の登場人物であるバートの髪の毛に似ていることから、その名称が付けられています。


バートパターンはレバレッジを使って張り込んだ個人投資家を一掃する現象とされています。今回解説の対象となっている2021年7月26日の値動きは、特に「メディア操作」「注文操作」の2点が特徴的とのこと。

まず2021年7月23日の16時にアメリカのビジネス専門ニュースサイトのBusiness Insiderが「Amazonがついに仮想通貨に本腰を入れる、できる限り早く暗号資産を提供するためブロックチェーンリーダーの新規雇用を目指す」という記事を掲載しました。しかし、実際にAmazonが掲載した求人を見ると仮想通貨とブロックチェーンに関して実績のある人物を雇いたいという点は事実ですが、要するに「そういう人を雇って新しく何ができるかを調べたい」という内容。この記事は時間経過とともにタイトルが修正され、23時には「独占情報:Amazonは仮想通貨決済を可能な限り早く実装する予定」、翌日には「Amazonが仮想通貨決済を近日開始、ついにテクノロジー整備に本腰を入れて取り組む」と改題されました。


続いて7月25日9時にイギリスのビジネス紙CityAMが「Amazonはビットコイン決済を『間違いなく』準備中、関係者が認める」と題した記事を掲載しました。この記事もBusiness Insiderが報じたように「Amazonが仮想通貨決済をまもなく実装する」という内容ですが、重要な情報は全て「匿名の関係者」がソースです。

そしてCityAMの報道から約36時間後に、Amazonの広報担当者が「ビットコイン決済を実装する予定はない」と語ったと報じられました。

Amazon: No, We Have No Plans to Accept Bitcoin Payments - CoinDesk
https://www.coindesk.com/business/2021/07/26/amazon-no-we-have-no-plans-to-accept-bitcoin-payments/

ビットコインのチャートにここまでの動きを組み込んだ図が以下で、一般的なチャートとは異なり「X軸側がPrice(価格)、Y軸側がDate(時間)」となっている点に注意してください。時系列に沿うように上から下にチャートを見ていくと、CityAMの報道から数時間後にビットコインの価格が急騰を見せ、1ビットコイン=3万9000ドル(約450万円)ほどで一時停滞。そしてAmazonがCityAMの報道を否定する発表を出したのを境に急落に転じ、まさしく「バートチャート」となっていることがわかります。


一連の値動きは報道が煽ったビットコインに対する期待の上がり下がりを純粋に反映しているように思えますが、Ranger氏によると技術的側面もあるとのこと。取引にボットを使っている場合、Amazon関連のニュースなどを5ミリ秒未満で判断して仮想通貨を売り買いすることが可能です。実際にAmazonがビットコイン決済を否定したニュースが報じられた際には、そのニュースがBloombergに報じられた直後から急激な値下がりが生じていることがわかります。


こうした動乱のさなかである7月26日0時頃に発生したとRanger氏が主張しているのが、「ウォッシュトレード(水増し取引)」です。ウォッシュトレードは「自分で売った株/仮想通貨を自分で買う」という行為を行って、他の投資家に取引が活発していると誤認させて市場を操縦するという手口。価格が急騰する7月26日1時の直前には、「大量の売り注文が出され、それに対して買い注文が出されるもなぜか後にキャンセルされる」という不可解な取引が確認されています。


Ranger氏によると、この不可解な取引によって、スポット価格の誘導が可能になるとのこと。今回の説明の対象となった「2021年7月26日のビットコインの価格推移」に関する黒幕について、Ranger氏は「おそらくAlameda Research。ないしはDRW Cumberland」と言及。その理由として、「これらの企業がアルゴリズム取引によって価格操縦の疑いで商品先物取引委員会に訴えられたという経緯があるため」と語りました。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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