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「赤ちゃんから放出される化学物質」は女性を攻撃的にして男性を従順にすると判明


動物はフェロモンと呼ばれる化学物質を生成して体外に分泌し、他の個体の行動や発育に変化を促します。しかし、人間がフェロモンを分泌していることを示す科学的証拠はこれまで同定されていません。ワイツマン科学研究所の神経科学者であるノアム・ソベル氏らの研究チームが、人間の女性、特に赤ちゃんが放出している「ヘキサデカナール」という無臭の化合物を発見したと報告しています。

Sniffing the human body volatile hexadecanal blocks aggression in men but triggers aggression in women
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abg1530


Chemical emitted by babies could make men more docile, women more aggressive | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/chemical-emitted-babies-could-make-men-more-docile-women-more-aggressive

研究チームによれば、ヘキサデカナールは女性の攻撃的な行動を助長し、男性の攻撃的な行動を鈍らせるとのこと。人間は皮膚、唾液、排泄物からヘキサデカナールを放出しており、特に赤ちゃんは頭から放出していることがわかりました。ソベル氏らの研究チームがヘキサデカナールを単離してマウスのケージに入れてみたところ、マウスに対してリラックス効果が見られたそうです。


そして、研究チームは、「強いフラストレーションとそれに対応する測定可能な反応を引き出すように開発されたコンピューターゲーム」を126人の被験者を対象にプレイさせる実験を行いました。被験者の半数はヘキサデカナールを練り込んだクリームを上唇につけてプレイし、残りの半数はヘキサデカナールを含まないクリームをつけてプレイしました。

被験者は、目に見えない相手と交渉しながらお金を分け合う仮想体験をしました。被験者は人間と交渉していると考えていましたが、実際はコンピューターと交渉していたとのこと。ただし、交渉は被験者にフラストレーションを与えるようになっており、被験者が「相手の分け前」に全体の90%未満の金額を示すと、コンピューターは「NO!」と真っ赤な文字を表示して被験者の提案を拒否する仕様でした。

その後、被験者は同等の条件で相手に音をぶつけるゲームをプレイしました。被験者の攻撃性の度合を示すため、「痛みのレベル」を示したボタンを押すことで音の大きさが選択できるようになっていたとのこと。

その結果、ヘキサデカナールを嗅がされた被験者のうち、女性の19%が平均より攻撃的な行動を取ったのに対して、男性は18.5%以上が平均より攻撃的ではない行動を取ったことがわかりました。


さらに研究チームは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使って被験者の脳の活動をモニタリングしながら、ヘキサデカナールを嗅がされた群とそうでない群の行動を比較しました。その結果、女性の被験者の平均13%が攻撃性を増し、男性の被験者の平均20%が攻撃性を弱めたことに加え、ヘキサデカナールが脳活動に男女で異なる影響を与えることが判明。女性は攻撃性を制御する脳領域の神経伝達が減少し、男性はその領域の伝達が増加したそうです。

研究チームは今回の結果から、ヘキサデカナールが乳幼児の生存に関係しているのではないかと推測しています。哺乳類において、母親は赤ちゃんを守るために攻撃性を発揮する機会が多く、それに対して父親は自分の子孫を攻撃しないように努める必要があります。ソベル氏は「ヘキサデカナールがフェロモンだとは断言できません。しかし、ヘキサデカナールは人間の行動、特に攻撃的な行動に影響を与える分子であると言えます」とコメントしています。

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in Posted by log1i_yk

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