セキュリティ

「暗号化の権利」「匿名の権利」などプライバシー強化をドイツ新政権が公約


アンゲラ・メルケル首相率いるドイツキリスト教民主同盟を破って政権交代を成し遂げたドイツ社会民主党が新たに「暗号化の権利」「匿名の権利」などプライバシー強化を推し進めるという公約を発表しました。

Koalitionsvertrag 2021-2025
https://fragdenstaat.de/dokumente/142083-koalitionsvertrag-2021-2025/

Kommentar zum Koalitionsvertrag: Ampel verspricht Stärkung digitaler Grundrechte
https://netzpolitik.org/2021/kommentar-zum-koalitionsvertrag-ampel-verspricht-staerkung-digitaler-grundrechte/

Koalitionsvertrag: Das plant die Ampel in der Netzpolitik
https://netzpolitik.org/2021/koalitionsvertrag-das-plant-die-ampel-in-der-netzpolitik/

Germany: New government plans 'right to encryption'.
https://tutanota.com/blog/posts/germany-right-to-encryption/

ヒトラー政権下で秘密警察機構のゲシュタポが厳格な市民監視を行っていたという歴史を有するドイツではプライバシーにまつわる権利を求める声が非常に強いとされています。しかし、プライバシー法によって政府機関による個人情報へのアクセスを過度に制限してしまうと潜在的な犯罪者の摘発が困難になるため、プライバシーを求める市民と個人情報を用いて犯罪者を捕らえたい警察機構の間には綱引きともいえる緊張関係が存在しました。

メルケル政権は2015年時点でエンドツーエンド暗号化などを促進して世界一の暗号化大国となることを目標にした「機密通信強化憲章」に署名しましたが、直後に方針転換を行って他のEU諸国と連携して暗号化されたデータへの合法的なアクセスを要求していくという意向を発表。この変節は議会から激しい突き上げを食らいましたが、2020年12月には「セキュリティにとって暗号化は重要であると強調しつつ、当局に対して間接的に暗号化のバックドアを求める」という決議が欧州理事会で採択されました。


こうした流れの中、政権交代を果たしたドイツ社会民主党が新たに連立政権における公約を発表し、この政権公約にデジタル権利活動家の声に応えるようなプライバシー強化策が盛り込まれていると話題を呼んでいます。プライバシー強化に関連する各項目およびその簡易な説明が以下。

◆監視と市民権:公共空間における生体認証技術とAIを用いた自動スコアリングシステムの違法化。
◆デジタルインフラとブロードバンドの拡大:地方自治体の主導による5G通信網や家庭用光ファイバー網の拡充。
◆行政の近代化とデジタル国家:連邦政府の主導による各地方政府も使用できるITシステムの構築。
◆ITセキュリティ:暗号化の権利など、政府に本物の暗号化通信を行えるように課す内容。連邦情報セキュリティ局の連邦内務省からの独立。
◆警察:警察の保有するデータベースの見直しと処理規則の刷新。
◆データ保護とデータポリシー:オンラインプライバシーの強化。違法な匿名化解除に対する罰則の導入。
◆デジタル消費者保護修理する権利など高度な消費者保護規定の導入。
◆情報の自由と透明性:法案に対する第三者の影響の包括的開示など、見える化の推進。
◆文化・教育:ゲーム開発や大学のデジタルインフラストラクチャ研究などの文化・教育関連への新規投資。
◆デジタル化とサステナビリティ:製品に含まれる物質や修理可能性、廃棄方法に関する詳細などのデータを閲覧できるようにするデジタル製品パスポートの導入。ITデバイスの一般的な使用期間における修理パーツとソフトウェアアップデートの保証義務の規定。
◆ソーシャルメディアとコンテンツ・モデレーション:誹謗(ひぼう)中傷や同意なしの写真投稿などのデジタル暴力に関するプラットフォーム側の責任の増大。
◆アルゴリズムシステムと人工知能:システムの危険度に応じて異なる強度の規制を適用する「欧州AI規制法案」の支持。
◆著作権:アップロードフィルターなどの自動化された意思決定メカニズムがある場合でも、情報の自由と表現の自由を確保できるようにする法案の制定。
◆健康管理のデジタル化:国民保険加入者全員を対象にした電子カルテの導入。
◆リプロダクティブ・セルフ・ディターミネーション:中絶に関する情報をウェブサイトに記載すると罰せられるという現行法の撤廃。
◆参加と市民社会:請願制度の強化およびデジタルボランティアの見える化など、デジタル市民社会の促進。
◆ビッグテックと競争管理:テクノロジー企業に対する通信の機密性や高レベルのデータ保護、ITセキュリティ、エンドツーエンドの暗号化などの要求。IT企業の反競争的な買収に関する規制強化。

ドイツのショルツ新政権は、2021年12月8日に発足する見通しです。

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in セキュリティ, Posted by darkhorse_log

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