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顔認証システムで食堂の行列をスピードアップさせようとする学校が登場、学校における顔認証の導入は違法であるという指摘も


2021年10月17日、イギリスのスコットランド南西部に位置するノース・エアシャーの中学校9校が「生徒を顔で識別して食堂での支払いを自動で行う」技術を導入したと報じられました。この技術は行列をスピードアップさせる他、カード支払いや指紋認証よりも新型コロナウイルスの拡大を防ぐとされていますが、違法ではないかという声も上がっています。

Facial recognition cameras arrive in UK school canteens | Financial Times
https://www.ft.com/content/af08fe55-39f3-4894-9b2f-4115732395b9

今回、ノース・エアシャーの中学校に導入されたのはイギリス国内の教育機関に対してID管理システムやオンライン決済システムなどのソリューションを提供するCRB Cunninghamsの顔認証システムで、昼食の購入時に発生する行列のスピードアップが目標。同社のマーケティングレディレクターのディビッド・スワンソン氏は「中学校では1000人の生徒に25分間で食事を提供しなければならず、支払い処理の高速化が必要です」と述べ、同社の製品ならば、生徒1人あたりの平均処理時間を5秒にまで短縮できると主張しています。

イギリスでは指紋認証などの生体認証を用いた支払いシステムを導入している学校も多く、こうした生体認証には数年間の運用実績が存在するものの、顔認証システムは明示的な同意なしにユーザーを照会することから、プライバシー保護団体を中心に懸念の声が上がっているとのこと。ノース・エアシャー評議会は「子どもや保護者の97%が同意した」「支払いシステムの暗証番号を忘れる児童が多かっただけでなく、暗証番号を用いた詐欺事件も発生することもあったため、今回の顔認証システムはメリットが大きい」と説明していますが、一部の保護者からは「子どもたちが(顔認証システムの導入可否に関する)決断を下すために十分な情報を与えられたかどうか確信が持てない」「同調圧力があるのでは」という意見も出ています。


イギリス教育省は国内の教育機関に対してさまざまな法規制に関するガイダンスを提供していますが、顔認識システムについては「教育省は学校での顔認証の使用に関するデータを保有していない」と述べ、顔認証システムの導入状況については関知しておらず、その適否については各校に一任していると説明しています。

今回の一件について、児童に関するプライバシー保護団体・Defend Digital Meは、2019年にフランススウェーデンで起きた訴訟が「一般データ保護規則(GDPR)」を論拠に学校での顔認証システムの使用を禁じたことから、EU離脱後もGDPRを引き継いだイギリスでも同様の判決が下される可能性があると指摘。生体データを収集するのは国連の掲げる児童の権利に関する条約の第16条並びに欧州評議会が発効した人権と基本的自由の保護のための条約に抵触するとして、ささいな目的のために価値の高い生体認証データを収集するのをやめるように主張しました。

イギリス政府に生体認証に関する政策提言を行う独立機関・Biometrics Commissionerのフレイザー・サンプソン氏は「より侵害の少ない方法があるのならば、そちらを使用するべきです」と述べ、学校が顔認証技術を使用できるからといって、使用すべきであるとは限らないという見解を示しています。

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in ソフトウェア, Posted by darkhorse_log

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