メモ

テクノロジーが子どもの学力にどんな影響を与えるかは「使い方次第」との指摘、使用時間を制限するやり方は時代遅れか


新型コロナウイルスのパンデミックにより子どもがスマートフォンやタブレットを使う機会が増えたことで、教育現場ではデジタル機器を使った学習が必要不可欠なものとなりつつあります。そこで、デジタル教育の専門家が「子どもがデジタル機器のスクリーンを見続ける時間」に関する複数の研究結果を取り上げつつ、教育とテクノロジーの関係のあり方について論じました。

Children live online more than ever – we need better definitions of ‘good’ and ‘bad’ screen time
https://theconversation.com/children-live-online-more-than-ever-we-need-better-definitions-of-good-and-bad-screen-time-168650

ニュージーランドのカンタベリー大学で、eラーニングやデジタル教育を研究しているシェリル・ブラウン准教授とキャサリン・マッカラム准教授は、「子どもが画面を見るのに費やしている視聴時間(スクリーンタイム)には、単なる娯楽を楽しんでいる時間もあれば、貴重な学習の時間になっているものもあり、その境界線は曖昧」と考えています。例えば、YouTubeには授業の教材として使えるような教育的な動画があるほか、人気のオンラインゲームである「マインクラフト」は教育的・社会的に豊かな学習機会につながることが分かっていると、ブラウン氏らは指摘しました。

実際に、マインクラフトはスウェーデンの学校で教材として使われたことがあります。

スウェーデンの学校でマインクラフトを必修科目に - GIGAZINE

by makototakeuchi

そこで、ニュージーランド・オークランド大学の研究プロジェクトであるKoi Tū: The Centre for Informed Futuresの研究チームは、スクリーンタイムが子どもや若者に与える影響について調べたさまざまな学術論文を精査する研究を行いました。その結果、「過剰に長いスクリーンタイムと、学習や生活態度に関する諸問題との間には幅広い関連性がある」ということが確認されました。その一方で、スクリーンタイムと子どもの問題の関係は決定的なものではなく、スクリーンタイムは他のさまざまな原因と同様に「子どもに悪影響を与えかねない要素の1つに過ぎない」ことも分かったとのこと。

また、スクリーンタイムの「種類」が重要だということも判明しています。具体的には、子どもに悪影響を及ぼすのは受動的にスクリーンを眺めているだけの場合で、双方向的な使い方では悪影響は見られなかったとのこと。それどころか、双方的なスクリーンタイムは「学習効果の向上や認知機能の強化」など、子どもの学習にポジティブな影響を与える可能性があることが示されました。


2018年には、ニュージーランドの文部科学省により「授業でデジタル機器を使っている子どもは、使っていない子どもに比べて数学や科学などの科目の成績が低かった」との研究結果が発表されました。しかし、この研究の有効性については懐疑的な専門家も多く、2012~2018年までに発表された教育に関する論文を横断的に分析した2019年の大規模な(PDFファイル)研究では、「数学、リテラシー教育、外国語学習を支援するためにデジタル技術を使用した場合、達成度にプラスの影響を与えられる可能性がある」という逆の結論が出ています。

こうした点からブラウン氏らは、子どもたちがデジタル機器を使う時間ではなく、どのように使っているかに注目すべきだと考えています。例えば、太陽系について学ぶ際は「YouTubeで太陽系をテーマにした動画を見るのでなく、拡張現実(AR)技術を使ったシミュレーターで惑星の位置やサイズを操作し、知識や想像力を総動員して勉強できるようにする」といった方法が考えられるとのこと。


ブラウン氏らは末尾で、「近年、子どもたちがデジタルテクノロジーと関わることが避けられなくなってきていますが、スクリーンタイムのあり方を見直すことで、子どもたちにとって身近なものとなったデジタル機器の悪影響を回避しつつ、デジタル機器ならではのメリットを高めることができます。そのためには、『テクノロジーによって何を得て何を失うのか』をこれまでより慎重に吟味していくことが求められるでしょう」と結論づけました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
WHOが「子どものスマホ・タブレット使用は1日1時間まで」とガイドラインを作成、懐疑的な意見も - GIGAZINE

新型コロナのパンデミックにより「近視の子ども」が急速に増加 - GIGAZINE

スマホやタブレットの使い過ぎはテレビの見過ぎより大きな悪影響を子どもに及ぼす - GIGAZINE

最新デジタル機器が子どもたちに与えている影響とその対処方法とは - GIGAZINE

スマホやPCの利用時間の制限を子どもに強制するべきではないことは研究から明らか - GIGAZINE

「PCやスマホの見過ぎ」が若者の幸福度を下げるとはいえないという研究報告 - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1l_ks

You can read the machine translated English article here.