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App Storeの高額な手数料を回避してアプリ内課金が可能な「Appleと競合する新たな決済システム」が発表される

by YunHo LEE

大手IT企業による独占禁止法違反の調査が世界的に進められる中、App Storeのアプリ内課金で外部決済システムを利用可能にすることを求める動きが強まっています。そんな中、ソフトウェア企業向けの決済プラットフォームを提供するPaddleが、いち早くAppleの決済システムの競合相手となる「iOSアプリ開発者向けのサードパーティー決済システム」を発表しました。

Introducing the new Paddle In-App Purchase - the industry’s first alternative in-app Purchasing system for iOS, launching December 7th 2021.

All the same benefits as the App Store, without the hefty price tag.

Find out more here: https://t.co/2p14gMV7nE

— Paddle (@PaddleHQ)


Paddle In-App Purchase for iOS
https://paddle.com/platform/in-app-purchase/

Paddle announces first competitor to Apple In-App Purchases following Epic v Apple suit
https://www.prnewswire.com/news-releases/paddle-announces-first-competitor-to-apple-in-app-purchases-following-epic-v-apple-suit-301394461.html

Paddle Plans to Launch Alternative In-App Purchase System on iOS That Circumvents Apple's Fees - MacRumors
https://www.macrumors.com/2021/10/07/paddle-plans-alternative-in-app-purchase-system/

Appleが運営するApp Storeでは、アプリ内課金においてAppleが提供する決済システムを利用するように定められています。しかし、開発者がAppleに支払う手数料が30%と高額な点に不満が募っているほか、近年ではこの慣行が独占禁止法に違反しているのではないかとも指摘されています。

人気バトルロイヤルゲーム・フォートナイトの開発元であるEpic Gamesは、App Storeの手数料を回避するためにゲーム内通貨を直接購入できるシステムを導入したところ、「App Storeを介さないアプリ内課金は認められない」としてiOS版アプリがApp Storeから削除されてしまいました。これを受けてEpic GamesはAppleを提訴し、2021年9月に「Appleはサードパーティーの決済システムを利用するオプションを認め、アプリ開発者がApple以外の決済システムにユーザーを誘導できるようにするべき」と命じました。

AppleとEpic Gamesの訴訟で「App StoreはApple以外の支払い方式も認めるように」との判決が下る、一方でAppleの勝利という声も - GIGAZINE


Apple対Epic Gamesの判決を受け、Paddleは他の企業に先駆けてiOSアプリ開発者向けの代替アプリ内決済システム「Paddle In-App Purchase」を立ち上げることを発表しました。Paddle In-App Purchaseは既に関心を持っている開発者からの登録受付を始めており、2021年12月7日に公開されるとのこと。

Paddle In-App Purchaseの手数料は10ドル(約1100円)未満の取引で10%、10ドル以上の取引で5%+0.5ドル(約55円)とのことで、15~30%の手数料が課せられるAppleの決済システムより大幅に安くなっています。また、PayPalのサポートや開発者が管理できる返金機能、サブスクリプションの一時停止、国や地域ごとの価格調整、従量制課金といった点もアピールしています。


Paddleは公式サイト上で、「Apple対Epic Gamesの評決は、アプリの開発者がAppleの決済システム(15~30%の料金を必要とする)に代わるものを選択する方法を明確にします」と主張。Paddle In-App Purchaseを利用することにより、App Storeより低い手数料で柔軟な決済システムを顧客に提供できるとしており、アプリの決済システムをPaddle In-App Purchaseに切り替えてもApp Store上で販売し続けられると述べています。

一方、Paddleが提案する新たな決済システムは「Appleが裁判所の命令を全面的に受け入れ、アプリ開発者たちが望む対応を行う」という希望的観測に基づいたものだとの声も上がっています。Apple関連メディアのiMoreは、Paddleの新しいアプリ内課金システムはApp Store内のアプリで利用できない可能性があると指摘しています。

In-app purchase alternative from Paddle will see apps rejected, says expert | iMore
https://www.imore.com/app-purchase-alternative-paddle-will-see-apps-rejected-says-expert


法律専門家のFlorian Mueller氏は、Epic GamesとAppleの裁判で下された差し止め命令では、アプリ自体に組み込まれた決済システムのサポートまでは義務づけられていないとの見解を示しています。「開発者はPaddleのAPIを組み込むと、おそらくアプリが拒否されるのを目にするでしょう」とMueller氏は述べ、AppleはPaddle In-App Purchaseを実装したアプリをApp Storeで配信するのを認めないだろうと主張しました。

これに対しPaddleは、「私たちと法律顧問の理解では、Paddle In-App PurchaseはApple対Epic Gamesの法的判決の範囲内で許容されます。iOS開発者と広い市場に重大な影響を及ぼすこの問題をはっきりさせるため、Appleが独自の解釈を共有することを歓迎します」と述べています。

なお、Apple対Epic Gamesの裁判では「Appleが独占禁止法に違反している」とは判断されませんでしたが、2021年10月7日にはオランダの独占禁止法当局が「開発者にアプリ内決済システムの使用を要求するAppleの規制は反競争的である」と判断し、規則の変更を求めたと報じられました。今後もPaddleのような「App Store決済と競合するサービス」を立ち上げる企業には、追い風が吹くとみられています。

EXCLUSIVE Dutch watchdog finds Apple app store payment rules anti-competitive - sources | Reuters
https://www.reuters.com/technology/exclusive-dutch-watchdog-finds-apple-app-store-payment-rules-anti-competitive-2021-10-07/

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in モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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