メモ

「権威主義者」は極左も極右もよく似ているという研究結果


権威に服従するという社会のあり方を肯定する権威主義は、極左も極右も行動と心理的特徴が驚くほど似通っているという研究結果をアメリカ・エモリー大学の研究者が発表しました。権威主義は一般的に右派と結びつけられている概念ですが、左派の権威主義者の理解が肝要になると研究者は主張しています。

Clarifying the structure and nature of left-wing authoritarianism. - PsycNET
https://doi.apa.org/record/2021-74485-001

Left-wing authoritarians share key psychological traits with far right, Emory study finds | Emory University | Atlanta, GA
https://news.emory.edu/stories/2021/09/esc_left_wing_authoritarians_psychology/campus.html

エモリー大学で心理学について研究しているトーマス・コステロ氏が行ったのは、政治的左派における権威主義に関する調査です。コステロ氏によると、権威主義に関する心理学的研究は1930年代のファシズムの台頭に際した「ファシズムを支持する人々についての心理学」に端を発しており、現行の権威主義の度合いを測る調査においても1930年代のファシズム研究時に開発されたファシズム支持の度合いを測定する「ファシズム尺度」がそのまま流用されているとのこと。

ファシズム尺度は政治心理学の発展に貢献しましたが、ファシズムは極右に分類されるイデオロギーであるため、ファシズム尺度を引き継いだ現行の権威主義研究は右派に限定されてしまうという副次的な問題を生み出しました。そのため、コステロ氏は改めて権威主義の度合いを測定する概念的なフレームワークを作成し、この概念的なフレームワークをオンラインで集められた被験者に対して適用しました。

オンライン調査支援ツールProlificで集められたアメリカの年齢・人種・性別など人口統計に合致する被験者1000人に対して調査を行ったところ、政治的暴力に関与したと回答した被験者は12人で、いずれもコステロ氏が作成した権威主義スケールで高得点を獲得していたと判明。分析の結果、7段階評価において最高評価を獲得した被験者は、「過去5年間に政治的暴力に関与したことがある」と回答する可能性が2~3倍高くなることがわかりました。


今回の研究に関する特筆すべきポイントとして、コステロ氏は「左派の権威主義者と右派の権威主義者は心理的特徴と行動において驚くほど似ている」という点を挙げています。権威主義の特徴ともいえる確立された階層社会に関して、右派の権威主義者は積極的に支持し、左派の権威主義者は積極的に否定するという逆の選好が存在するものの、いずれの権威主義者も権威者と思われる人々には服従し、権威主義に反対する人々に対しては支配的かつ攻撃的な姿勢を見せ、グループ内における規範には注意深く従うという特徴が共通していたとのこと。ただし、左派の権威主義者は世界を危険な場所だと認識し、ストレスに対して激しい感情や制御不能だという認識を抱く傾向が強いのに対して、右派の権威主義者は新しい経験を受け入れないという傾向や科学を信じない傾向が強いという点では異なりました。

コステロ氏は右派の権威主義も左派の権威主義も鏡像のような関係にあると指摘し、心理学的にはイデオロギーの選択より前に権威主義になるかどうかが決まると主張。現行の権威主義研究に関して、「権威主義が右派的な概念だと考えるのは間違いです」とコメントしています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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