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テレビゲームを学校教育で活用すべき5つの理由


子どもたちが大好きなゲームをうまく利用することで教育に活用できるとして、多くの教育用ゲームが開発されています。ゲームを学校教育にも組み込むべき5つの理由を、テキサスA&M大学建築学科のアンドレ・トーマス准教授が解説しています。

5 reasons video games should be more widely used in school
https://theconversation.com/5-reasons-video-games-should-be-more-widely-used-in-school-164264

ゲームが青少年に悪影響を与えると主張する声は以前から存在しており、香川県では18歳未満の1日当たりのゲーム時間を平日60分・休日90分に制限するネット・ゲーム依存症対策条例が施行されているほか、中国でも18歳未満のオンラインゲームのプレイ時間を厳しく制限する規則が制定されました。ただし、実際にゲームが青少年に悪影響を与えることを明確に示す科学的根拠はありません。

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上記のように規制の対象になることもあるゲームですが、その市場は2021年で1780億ドル(約19兆6000億円)規模で、2025年には2668億ドル(約29兆3000億円)規模にまで成長すると予想されており、現代において最も人気のあるメディアの1つであることは疑いようがありません。

ゲームを教育目的で使うこと自体はここ最近の話ではありません。例えば、1971年にリリースされたゲーム「The Oregon Trail」はミネソタ州の歴史教師が生徒の学習の手助けになることを目的に開発したゲームで、19世紀にアメリカ大陸を横断したルイス・クラーク探検隊をテーマとしています。以下のムービーは「The Oregon Trail」の実際のプレイ映像。

The Oregon Trail Gameplay - YouTube


50年も前から教育向けのテレビゲームが実際に教育現場でも使われており、一定の効果を上げているという研究結果も上がっていますが、現代ではゲームが教育に使われているというケースはあまり一般的ではありません。トーマス准教授は、「ゲームを教育で活用するべきだ」とする理由を5つ挙げています。

◆1:ゲームは学生がSTEM分野に興味を持つのに役立つから
STEMとはScience(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)の教育分野を示す言葉で、アメリカや日本でも将来の社会を担う人材育成としてSTEM教育に力を入れるべきだとトーマス准教授。

例えば、オクラホマ大学は学生に微積分を教えるためのゲームを開発しており、実際にゲームを使うことで学生の微積分学の習熟度が上がったとのこと。また、テキサスA&M大学でも同様に、微積分を題材にした「Variant: Limits」という学習用ゲームを開発しているとのこと。Variant: Limitsの予告ムービーは、以下から見ることができます。

Variant: Limits™ Educational Trailer - YouTube


◆2:ゲームによって経験的な学習が得られるから
(PDFファイル)経済協力開発機構(OECD)は、創造的な問題解決などの21世紀型のスキルを生徒に教えることは、将来の労働力を育てる上で重要であるとしています。トーマス准教授は、ゲームで思考力や問題解決能力を育てることができると主張しています。

例えば「DragonBox Algebra」はファンタジーの世界観の中で数学の問題を解くゲームで、批判的思考などのスキルを習得するのに役立つとのこと。また、「Civilization」シリーズでは、プレイヤーは市民の指導者となり、国の繁栄を指揮することができます。さらにメディチ家の長となって経済や政治の手腕を振るう「ARTé: Mecenas」では、芸術のパトロンや銀行家として成功することができます。このように、学習者はゲームを通じて実際に行動することで学習し、従来の教室では得られないようなスキルや知識を体験学習を通じて得ることができるとトーマス准教授は述べています。


◆3:プレイヤーは失敗から学ぶことができるから
ビデオゲーム理論家であるジェスパー・ジュール氏は、「ビデオゲームで負けることが、ゲームの魅力の一部です」と主張しました。ゲームで失敗すると、プレイヤーは自分の力不足を感じますが、すぐに挽回し、スキル向上につなげることができます。

ゲームは、生徒が安全な方法で失敗し、失敗から学び、成功するまで再挑戦することを可能にする自然な方法だと、トーマス准教授は指摘しています。例えば「Burnout Paradise」は、わざと車をクラッシュさせ、そのクラッシュが派手であればあるほどポイントが高くなるというゲームで、いわば「失敗を楽しむゲーム」です。プレイヤーは基本的に失敗から学び、自分の行動を修正しながら、再び挑戦することができます。

◆4:生徒がコンテンツに夢中になるから
1982年に発表された研究によれば、生徒が教室で学習に費やす時間は、平均で授業時間の60%ほどだとのこと。だからといって、学習に費やす時間を増やす目的で学校の授業時間を延長しても、その効果はわずかでしかないこともこれまでの研究結果から明らかになっているそうです。つまり、学習時間を効果的に増やす方法は、生徒が課題に取り組む時間を増やすことであり、そのためには生徒が興味や関心を持つ題材を扱うことが必要となります。

教室では教師が生徒を直接指導するので、ある程度は生徒のモチベーションを管理できます。しかし、宿題などの自宅学習の場合、別の方法で生徒のモチベーションを引き出す必要があります。ゲームを教育に応用すると、生徒のやる気と関心が高まるので、生徒の学習時間を効率的に増やすことができます。


◆5:ゲームは複雑な知識を楽しいものにするから
理論的に、生徒は知識をただ吸収するのではなく、自分の頭の中で再構築するといわれています。つまり、これまで学んだ概念を基にして、さらに高度で複雑な知識を構築し、自分のものにするというわけです。

たとえば、110個以上ある元素の記号と名前と原子量を覚えるのは難しいもの。しかし、何百種類もいるポケモンの名前やタイプ、無数にあるわざの名前や効果は、ポケモンをプレイしている子どもなら皆覚えています。元素周期表よりもはるかに情報量の多いポケモンのデータについては、子どもたちは表を見て覚えるのではなく、ゲームを通じて覚えていきます。「ポケモンは教育用ゲームとして開発されたものではありませんが、そのデザインコンセプトは教育用ゲームのデザインに応用することができるでしょう」と、トーマス准教授は述べました。

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in ゲーム, Posted by log1i_yk

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