レビュー

ローグライク×カードバトルで奥深すぎる戦略性が「詰将棋」的プレイ感を生み出す「Quantum Protocol」プレイレビュー


「遊☆戯☆王」に代表されるタイプのカードゲームをベースに、キャラクターごとのとがったカードを織り交ぜることでパズルのようなプレイ感を実現しているデッキ構築型カードゲームが「Quantum Protocol」です。カードバトル×ローグライクなゲームの中でもパズル要素が際立っていて詰将棋の領域に達しているというだけでなく、美麗グラフィックのADVパートまで充実しているという本作が公式に日本語に対応したということで、実際に遊んでみました。

Steam:Quantum Protocol
https://store.steampowered.com/app/1328530/Quantum_Protocol/

Quantum Protocolのストーリーの中心は「ハッキング」で、物語はクイーンという名の白髪少女がハッキングを仕掛けるところから幕を開けます。


本作はADVパートとゲームパートの2本立てで、ハッキングがゲームパート。ゲームパートはこんな感じで、「遊☆戯☆王」のように2行×5列の自陣・敵陣が向き合ったフィールドを使います。


プレイヤーはデッキから引いてきた手札をフィールドに出して戦い合わせるという設定。


カードはそれぞれ「レベル(白い正方形で表記)」「攻撃力」「体力」「特殊効果」があり……


場に出してクリックすることで前方に通常攻撃が可能。攻撃したカードは次のドローまで行動不可となります。


当然ながら敵もカードで同じように攻撃してくるので、基本的にはカード同士で殴り合うというのがメイン。攻撃によって体力が尽きたカードはそれぞれの「トラッシュ」に運ばれます。


本作は「ウェーブ」と呼ばれる形式で、ウェーブの開始ごとに敵が一度に出現し、敵を全滅させるとウェーブクリア。そのまま次のウェーブが始まる…… といったゲームスタイル。各ステージは全てのウェーブを突破することでクリアとなります。


自分の敗北条件は、HPを全て失うこと。自分のカードが存在しない列を攻撃されるとダイレクトアタックとなり、攻撃力分のHPを喪失。こうして全HPを失ったら敗北というわけ。


ここまではカードゲームとしてはオーソドックスな作りですが、「実行」という独特な要素もあります。実行は各行にある矢印をクリックすることで……


その行にあるカードを左から順に強制攻撃&破棄するというもの。すでに行動不可となっている状態のカードも含めて一斉攻撃を行えますが、強制攻撃したカードはトラッシュに運ばれます。カードを破棄することで有利になる状況もありますが、カードは行動不可となっていても盾として使えるため、基本的にはデメリット。


以上のような各種行動を駆使して、ステージ最後のボスをクリアするとステージクリア。これがゲームパートの基本的な流れです。


ここまでの説明では「攻撃力と体力の高いカード並べて殴っとけばいいのでは?」という印象ですが、そうはならないのがこのゲーム。キャラクターごとに使えるデッキが固定されているのですが、デッキによっては攻撃力・体力がともに低い…… というか、攻撃力ゼロのカードがほとんどということも。


攻撃力ゼロのカードは通常攻撃ができず、「特殊効果」で敵を倒していくことになります。特殊効果は大まかには「場に出した瞬間に発動する」「場に出した後任意のタイミングで発動できる」「特定の条件を満たしたタイミングで発動する」の3種。場に出した瞬間に発動するタイプの一例として、「Apple.fruit」は場に出すとデッキにある他の「Apple.fruit」を手札に持って来ることができます。


「Fireball」は場に出すと前方に3ダメージの攻撃を与えるという効果。「Fireball」自体は攻撃力ゼロなので、効果発動後は単なる盾と化します。


場に出した後任意のタイミングで発動できるタイプでは、「Shide.hana」は場に出ている自分のカードを手札に戻した上で、デッキからカードを1枚引くという効果。すでに行動を行ったカードや効果を使用してしまったカードなどを手札に戻してもう1度使えるようにしてくれます。


特定の条件を満たしたタイミングで発動するタイプでは、「Forte.muse」は「実行」すると同じ列に置かれているカードの攻撃力を全て+2するという効果。強力な効果ですが起動に「実行」が必要という強い縛りがあります。ただし「Forte.muse」を含むデッキには、特定のカード1枚を「実行」するという効果を持つカードがあるので、そのカードと組み合わせると一気に攻撃力を強化可能。


また、一般的なカードゲームとは大きく異なるポイントとして、「自分と敵が交互に行動する『ターン制』ではない」という点もあります。このゲームにおけるターンは自分の行動によってのみ経過するもので、敵側の行動は、「敵陣に置かれたカードの右肩側に書かれたカウントダウンがゼロになったタイミングで火の玉マークがついた行動を実行する」というもの。つまり以下の例では、敵陣に置かれた2枚の「Bug.mw」は、それぞれ「5ターン後に1ダメージの攻撃を前方に放ってくる」ということです。


例えば以下では、6ターン後に2体の敵が、7ターン後に3体の敵が攻撃を行ってくるという状況。全ての攻撃を受けるとプレイヤーのHPが大きく削られてしまうため、敵が行動する前に倒すか、攻撃を防ぐようにカードを敵の前に並べて盾にするという戦略が求められます。このように敵の行動は全て事前にわかるため、1手1手を熟考してから行動に移さなければならないというパズル感があります。


こちら側のカードにさまざまな特殊効果があるように、敵側も単純な攻撃ばかりではなく、多彩な特殊能力を持つカードが満載。手下を召喚してくる敵や、「ダメージを受けると反撃する」などさまざまな能力を持つ敵が登場します。このような特殊能力発動も事前に察知可能ですが、「あっちは通常攻撃してくるけど、こっちは特殊能力してくるから……」とさまざまな行動を織り交ぜられると、難易度はかなりのものに。ステージの中には即死攻撃しかしてこない敵だけが出現するため、決まった手順でしか攻略できないという文字通り「詰将棋」なものもありました。


さらに、本作は大きな特徴として「ステージ中にランダムに獲得したカードでデッキを強化できる」というローグライク要素があります。キャラクターごとに複数のデッキが用意されているものの、各デッキの初期カードは完全固定。その代わりに、四角いキューブを有している敵を倒すとランダムにカードを入手できます。


入手したカードは「Reprogram」というカードを使用すると……


デッキ編集画面に突入。自分のデッキに組み込むカードを選択できます。


また、同じカードを3枚合体させてレベルアップさせることも可能。レベルアップしたカードは攻撃力や特殊能力が強化されます。


敵を撃破して入手できるカードはランダム。各ステージは、ウェーブごとの敵の出現順や配置が固定されていますが、入手カードがランダムなのでプレイするたびに展開が変わります。ステージ中に入手したカードはステージクリア時に消滅して同じ初期デッキに戻りますが、ステージ攻略時に獲得できるポイントで、出てくるカードをアンロックすることが可能。


本作では複数のキャラクターが登場し、各キャラクターごとにデッキの方向性は固定されています。クイーンの初期デッキは攻撃力・体力の高いカードが中心で、「強いカードを並べてひたすら殴る」という戦略のキャラクター。


一方、大手セキュリティ企業の社長令嬢というオーロラの初期デッキは、「1回限り発動可能」という効果のカードが中心。これらのカードは発動すると高いダメージを与えられますが、発動後は基本能力が弱いため、各カードの発動タイミングが命。


アイドルというキャラクターは、その名の通りアイドル。ハッキングを組み合わせたステージパフォーマンスで業界トップに君臨するというキャラクターで、初期デッキは「実行」で起動するというカードが中心です。


学生と天才ハッカーの二足のわらじを履くエスパーの初期デッキは、場に出したときに発動するタイプのカードが豊富なコンボ系デッキ。


この4キャラクターをプレイしている様子が以下。

デッキ構築型カードゲーム「Quantum Protocol」はキャラクターごとに全く異なるプレイ感 - YouTube


これらのキャラクターが登場するADVパートでは、ビジュアルノベルライクにストーリーが進行。各キャラクターの日常や、協力してハッキングに挑む動機などが徐々に明かされていきます。翻訳は丁寧を通り越して和製ゲームと変わらないレベルに達しており、少なくとも序盤の範囲内は違和感一切なし。


実際にプレイしてみると、カードゲームというよりもパズルか詰将棋に近い印象。各キャラクターごとのデッキは場に出した瞬間に発動する効果でしか火力を出せなかったり、「実行」しなければ効果が発動しなかったりと独自性が強い上に、敵の攻撃も熾烈を極めるため、「このカードは場に出して発動する効果だから、次のターンに攻撃してくるこの敵に使いたい。でもそうするとこっちの攻撃を受けてくれるカードがいない……」というように一手一手悩み抜く必要があります。そしてステージに失敗しても各ステージに出現する敵は完全に固定なので、先ほどの記憶を頼りにもう1度プレイするというのがいかにもパズルでした。

「Quantum Protocol」はSteamで購入可能で、価格は税込1320円。なお、2021年7月8日午前10時まで開催されるSteamサマーセールの対象となっており、同期間中は20%オフの税込1056円で購入できます。

Steam:Quantum Protocol
https://store.steampowered.com/app/1328530/Quantum_Protocol/

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in レビュー,   動画,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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