サイエンス

猫を飼うことで人の感情や健康に影響する「腸内細菌叢」はどう変化するのか?


ペットの存在は飼い主にさまざな影響を与え、動物と触れ合うことでストレスを軽減することが研究で示されているほか、犬を飼うと心臓発作や脳卒中による死亡リスクが下がるという調査結果も存在します。猫を飼うことが「人の健康に大きく影響する」と考えられている腸内細菌にどう影響するかを調べた新たな研究によって、「猫の飼い主は、猫を飼っていない人と腸内細菌の状態が異なる」ことが示されました。

Effects of cat ownership on the gut microbiota of owners
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0253133

近年の研究では腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の状態によって人の気分や健康状態が大きく左右されることが判明しています。こうしたことから腸は「第2の脳」と呼ばれることがあります。

腸が人間の気分を左右する仕組み - GIGAZINE


そんな腸内細菌叢について、中国にある海南医学院の研究者たちは「猫を飼うこと」がどのような影響を与えるかという調査を行いました。

この調査では、カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部が実施している「American Gut Project(AGP)」のデータを使用。AGPは被験者のふん便とアンケート調査の結果から腸内細菌叢を分析するというプロジェクトで、今回研究チームはAGPのデータから、猫の飼い主214人と、猫を飼っていない214人のデータを抽出して比較しました。いずれのグループも被験者は白人のみ。年齢は18~60歳が171人、61歳以降が43人で、性別は男性103人の女性111人。またBMIを元に判断された「通常体重」が132人で「過体重」が82人という構成でした。

調査の結果、まず、猫の飼い主グループと猫を飼っていないグループでは、菌叢を構成する菌種の数を示す「OTU数」と、生物群集内の多様性を示す「シャノン指数」に有意な変化が見られたとのこと。猫の飼い主グループ、特に女性の猫の飼い主グループはOTU数・シャノン指数の減少が見られたそうです。

また、菌のおよびのレベルでも変化が見られました。門について、猫の飼い主グループはプロテオバクテリアが猫を飼っていないグループに比べて著しく少ないという傾向が見られました。そして科については、猫の飼い主グループはアルカリゲネス科とパスツレラ科が少なく、一方でエンテロバクター科とシュードモナス科が著しく多かったとのこと。なお、プロテオバクテリアには大腸菌・サルモネラ菌・コレラ菌・ヘリコバクターピロリなどの多くの病原菌が含まれ、アルカリゲネス科の増加は高尿酸血症や便秘などに関連していると考えられているなど、増減した細菌は病気に関わるもの。このため、猫を飼うことは病気に関連する細菌を減少させていると解釈することが可能です。加えて、猫の飼い主グループでは代謝経路が著しく変化することも予測されています。


そして年齢やBMIに着目すると、通常体重の猫の飼い主グループでは、シアノバクテリア門について減少が見られたほか、エンテロバクター科とシュードモナス科、アルカリゲネス科についても変化がありました。また、通常体重の猫の飼い主グループは41の代謝経路に、過体重の飼い主グループは7つの代謝経路に大きな変化があるとみられています。

研究結果を総合して、研究チームは特に「女性の猫の飼い主」「通常体重の猫の飼い主」への腸内細菌叢への変化が大きいと記しています。また研究チームは、この研究結果によって「猫を飼うこと」が腸内細菌叢の構造と機能に影響を与える可能性があると示されるだけでなく、「肥満と猫を飼うことの間に関連がないとする説」が支持されると説明しました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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