約4兆2000億円が動いたNVIDIAのArm買収にイギリス政府が「国家安全保障上の懸念」を理由に介入

by htomari

イギリス政府が現地時間4月19日に、「国家安全保障上の懸念」を理由に、NVIDIAによるArmの買収に介入したことを発表し、執行機関である競争・市場庁(CMA)に買収取引の調査を行うように命じたことを明らかにしました。

Proposed acquisition of ARM Limited by NVIDIA Corporation: public interest intervention - GOV.UK
https://www.gov.uk/government/publications/proposed-acquisition-of-arm-limited-by-nvidia-corporation-public-interest-intervention

Digital Secretary instructs CMA to look into NVIDIA’s takeover of ARM - GOV.UK
https://www.gov.uk/government/news/digital-secretary-instructs-cma-to-look-into-nvidias-takeover-of-arm

UK invokes national security to investigate Nvidia's ARM deal | Reuters
https://www.reuters.com/world/uk/uk-intervenes-nvidias-takeover-arm-national-security-grounds-2021-04-19/

ArmはArmアーキテクチャで知られるイギリスの半導体設計企業です。2016年にソフトバンクグループがArmを買収しましたが、2020年7月に売却を検討していることが報じられました。

ソフトバンクがArmの売却を検討 - GIGAZINE

by MIKI Yoshihito

Armの買収に手をあげたのが、GPUやSoCなどのチップを開発するアメリカ企業のNVIDIAでした。2020年9月にNVIDIAは、最大4000億ドル(約4兆2000億円)という取引価格でソフトバンクと合意に至ったことを発表しました。

ソフトバンクが約4兆2000億円でArmをNVIDIAに売却 - GIGAZINE

この買収取引について、Armの共同設立者であるヘルマン・ハウザー氏は「NVIDIAによるArm買収は技術独占を生み出す」という懸念を表明する手紙をイギリス議会庶民院の外交委員会に送りました。

「NVIDIAのArm買収は技術独占を生み出すだろう」とArmの共同設立者が語る - GIGAZINE

また、中国のテクノロジー企業は、アメリカ企業にArmを買収されるとArmアーキテクチャの採用が困難になるとして、NVIDIAによるArm買収を阻止しようと働きかけていると報じられています。

NVIDIAのArm買収を受けてHuaweiなど中国テクノロジー企業が強い懸念を表明 - GIGAZINE

by NVIDIA Corporation

CMAはすでに2021年1月に、イギリスでの市場競争への影響を鑑みて「ArmがNVIDIAの競合企業に対し、知的財産ライセンスの撤回あるいは値上げを図るかどうか」を調査していることが報じられていました。

ダウデン大臣は、ソフトバンクからNVIDIAにArmが売却されたことについて、「Armの買収取引を慎重に検討した結果、私は本日、国家安全保障上の理由で介入通知を発行しました。私たちは繁栄するイギリスの技術産業を支援し、外国投資も歓迎したいと思っていますが、このような取引が国家安全保障に与える影響は適宜考慮するべきです」とコメント。今回はイギリス政府が正式に介入する形でArm買収取引の調査が行われることを明らかにしました。

さらにダウデン大臣は、「次のステップとして、そして関連情報の収集のために、イギリスのCMAがこの取引の影響に関する報告書を作成することになっており、その報告書に基づいて今後を決定するつもりです」と述べました。

NVIDIAは「私たちの取引が国家安全保障に支障をきたすことはないと考えています。今回の取引の発表以来そうしてきたように、今後もイギリスの当局と緊密に協力していきます」とコメントしました。