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なぜ異例の大寒波に襲われたテキサス州が大規模な計画停電を余儀なくされたのか?

by Wil C. Fry

2021年2月にアメリカ南部を襲った大寒波の影響で、テキサス州で400万以上の世帯を対象にした大規模な計画停電が実施される事態となっています。「一体なぜ、寒波によってテキサス州で大停電が発生してしまったのか?」という疑問について、さまざまなメディアが原因についてまとめています。

What went wrong with the Texas power grid?
https://www.houstonchronicle.com/business/energy/article/Wholesale-power-prices-spiking-across-Texas-15951684.php

Texas power outage: Why natural gas went down during the winter storm | The Texas Tribune
https://www.texastribune.org/2021/02/16/natural-gas-power-storm/

Texas’ natural gas production just froze under pressure - The Verge
https://www.theverge.com/2021/2/17/22287130/texas-natural-gas-production-power-outages-frozen

例年、テキサス州の冬は気温が0度を下回ることはまれだそうですが、2021年2月には異例の大寒波によって各地でマイナス10度以下を記録。寒波の影響で電力の供給網に障害が発生し、大規模な計画停電を余儀なくされてしまいました。

寒波直撃のテキサス州で大停電が発生、400万世帯に影響か - GIGAZINE


テキサス州における電力供給が滞ってしまったのは、単に寒波によって暖房の需要が例年よりも増加したことが原因ではありません。最も大きな問題だと考えられているのが、「テキサス州内の天然ガス設備が異例の寒波への備えを怠っていた」という点です。

巨大な天然ガス田が存在するテキサス州では、発電に使用する燃料として最も大きな割合を天然ガスが占めています。電気ネットワークの信頼性確保を担当するテキサス州電気信頼性評議会(ERCOT)によると、2019年のテキサス州の電力は半分以上が天然ガスを燃料として供給されており、残りを風力発電や原子力発電、石炭火力発電によってまかなっているとのこと。

ところが、ERCOTのシステム運用担当シニアディレクターであるダン・ウッドフィン氏によると、冬季のテキサス州が持つ発電能力の半分を超える推定45ギガワット以上の発電能力が大寒波によって失われたそうです。ウッドフィン氏は2月16日の電話インタビューで、「今日オフラインになっている発電能力の多くは、主に天然ガスの問題が原因のようです」とコメントしました。

by Jonathan Cutrer

寒波が天然ガスに与える最も深刻な影響が「凍結」です。天然ガスを供給するパイプやバルブの内部で、寒波によって天然ガスが凍結してしまった場合、パイプが詰まってガスの流れが妨げられてしまうことがあります。これは「フリーズオフ」と呼ばれる現象で、毎年冬になると全米の天然ガス生産を混乱させるものの、温暖な気候であるテキサス州は特にフリーズオフへの備えが不足していたとのこと。

冬の寒さが厳しい多くの州ではフリーズオフを防ぐ機器への投資を行っていますが、テキサス州の事業者はフリーズオフ対策の重要性を認識していませんでした。天然ガスや石油関連の調査企業・BTU Analyticsによると、テキサス州の天然ガス設備がフリーズオフに襲われるのは数年間で2~3日程度であるため、多くの事業者はフリーズオフが発生するとしばらく生産を停止してやり過ごすそうです。

しかし、1989年以来ともいわれる今回の大寒波ではテキサス州の天然ガス生産に長期の影響が及んでおり、生産量は例年の半分程度に落ち込んでいるとのこと。エネルギー関連情報の配信社・S&Pグローバル・プラッツでアナリストを務めるパーカー・フォーセット氏は、「採集ラインが凍結してガス井が冷えると、天然ガスが生産できなくなります。くみ上げポンプにも電力が使われているため、電力が生成できなければ天然ガスをくみ上げることもできません」と指摘しています。

また、冬には発電だけでなく暖房に使われる天然ガスの需要も高まるため、発電に使える天然ガスの割合が夏よりも減少する点も、今回の問題に拍車をかけています。テキサス大学オースティン校のエネルギー資源学教授であるマイケル・ウェバー氏は、「テキサスは天然ガスの州です。天然ガスは現在、最も壮観な方法で失敗しています」と述べました。

by Dino Borelli

テキサス州で寒波による計画停電が実施されるのは2011年以来のことであり、ウッドフィン氏は今回の事態について「私たちが行っていた冬への備えは機能していたように見えましたが、この気候は過去の例よりも極端でした」と述べ、これほどの寒波は予想外だったと主張。一方、今回の大停電は電力会社に十分な支援を提供しない州やERCOTの失敗だったとする声もあり、電力網を再構築しないと再び同じ問題が起きるだろうという指摘もされています。

なお、テキサス州の大停電に乗じて、電力関係者を装って人々の口座番号をテキストで送信するように求める詐欺が、ソーシャルメディア上で確認されているとのこと。ERCOTはこの詐欺について、「情報を送信しないでください!私たちがあなたの電力を取り戻す上で、あなたの情報は必要ありません」と注意を呼びかけました。

Disaster scammers target Texas blackout victims - The Verge
https://www.theverge.com/2021/2/16/22285980/disaster-scammers-target-texas-blackout-victims-winter-storm-ftc-electricity

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in メモ, Posted by log1h_ik

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