ハードウェア

モバイル向けプロセッサ「Tiger Lake」はAppleの「M1」より高性能というIntelの主張にツッコミが殺到


2020年11月に発表されたAppleの独自開発チップ「M1」はその性能の高さから非常に高い評価を受けています。そんなM1チップに対抗するべくIntelは「自社製モバイル向けプロセッサ『Tiger Lake』はM1チップを上回る性能である」という比較結果を新たに公開しましたが、その比較結果に多くの疑問が寄せられています。

Intel Fires Back at Apple's M1 Processors With Benchmarks | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/news/intel-fires-back-at-apple-m1-processors-with-benchmarks

Intel Core i7 vs. Apple M1: Let's reality-check Intel's new claims | PCWorld
https://www.pcworld.com/article/3606592/intel-benchmarks-say-apples-m1-isnt-faster.html

◆ソフトウェア実行性能
Intelは、記事作成時点ではTiger Lakeの中で最上位モデルである「Core i7-1185G7」を搭載するノートPCと、M1チップを搭載するMacBook Proを用意して比較しました。

両者のチップにネイティブ対応した「Google Chrome」と「Microsoft 365」をインストールしてソフトウェアの実行性能を比較したグラフはこんな感じ。Core i7-1185G7搭載PCの性能を示す青色のバーがほとんどのテスト結果でMacBook Proの性能を示す黒色のバーを上回っています。


この結果について、ハードウェア関連のニュースサイトTom's Hardwareは、「Google Chromeの実効性能比較に用いられたベンチマークソフト『WebXPRT 3』は、Intelと密接な協力関係にあることが知られている「Principled Technologies」によって開発されており、Intel製CPUに最適化されている可能性があります。さらに、Microsoft 365を用いたテストも、Intelの社内テスト基準に沿って行われたため、Intelに有利な条件が設定されたと考えられます。私たちはTiger Lakeを搭載するノートPCとM1チップを搭載するMacBook Proの性能を独自に比較してみましたが、両者のGoogle ChromeやMicrosoft 365の実行性能に大きな差はありませんでした」と述べ、IntelによるテストはあくまでTiger Lakeに有利な条件下で行われたもので、独自調査によるとTiger LakeとM1チップの性能差は見受けられないと主張しました。

また、IntelはM1チップを搭載するMacが「Outlookでのカレンダーへの切り替え」「Zoomのビデオ会議開始」「PowerPointの画像メニューの選択」といった基本的な操作で「失敗」することがあったと主張しています。


これに対してTom's Hardwareは「Intelが主張する『失敗』が何を意味しているのかは不明です。また、私たちはM1チップを搭載するMacBook Proのテスト中にZoom会議を何度も行いましたが、まったく問題なく動作していました」と指摘しています。

◆ゲーミング性能
Core i7-1185G7搭載ノートPCとM1チップを搭載するMacBook Proでさまざまなゲームを実行した際の平均フレームレートを比較したグラフはこんな感じ。MacBook Proでも動作するゲームにおいては、タイトルごとに勝敗が分かれています。また、図の右側にはMacBook Proでは動作しないゲームがズラリと並んでいます。


Tom's Hardwareは「Macで動作しないゲームを『毎秒0フレーム』として扱うのはずるい気がします。しかし、動作するゲームの少ないmacOSがゲーミングプラットフォームとして適していないのは確かです」と述べています。

◆省電力性能
Appleは、M1チップを搭載するMacBook Airは最大18時間のビデオ再生が可能と発表し、M1チップの省電力性能をアピールしています。これについてIntelは、Appleが主張する最長ビデオ再生時間は、Apple TVアプリを用いて暗い画面でビデオを再生するという条件によるものだと指摘し、M1チップを搭載するMacBook AirとCore i7-1165G7を搭載したAcer製の「Swift5」を用いて250nitの明るさでNetflixの動画を再生した結果を公開。MacBook Airは10時間12分、Swift5は10時間6分の間ビデオを再生し続けたことから、IntelはTiger LakeとM1チップがほとんど同じ省電力性能を持っていると主張しています。


しかし、Tom's Hardwareは省電力性能のテストに用いられたCPUがCore i7-1185G7ではなくCore i7-1165G7を搭載したノートPCにコッソリ変更されていることや、MacBook Proよりもバッテリー駆動時間が短いことが分かっているMacBook Airを比較対象としている事を指摘。さらに「私たちのテストでは、M1搭載のMacBook Proのバッテリー駆動時間はTiger Lake搭載のSwift5より数時間も上回っていました」と述べ、Intelのテスト環境に疑問を呈しています。

◆互換性
Intelは、ヘッドセットやゲームコントローラーといった周辺機器がM1搭載Macに対応していないことを指摘し、Tiger Lakeでは多くの周辺機器を従来と同様に使えると主張しています。


また、多くのソフトウェアがネイティブ動作しないことも指摘し、ハードウェア・ソフトウェアの両面でM1チップの互換性の低さを指摘しています。


Tom's Hardwareはこの指摘が事実であること認めた上で、「macOS11.3のベータ版には、PlayStation 5Xbox Series Xのコントローラーへのサポートが追加されています。また、Intelが示したネイティブ動作しないアプリの一覧のうち、BoxはM1チップを搭載するMacへの対応を『優先度の高い問題』と表明しています。このように、ハードウェア・ソフトウェア共にM1チップへの対応が急速に進んでおり、将来的には互換性の問題は解決されると考えられます」と述べています。

上記のようにIntelが発表したノートPC向けTiger LakeとM1チップの性能比較は疑問点の多いものでしたが、Tom's Hardwareは「このような比較を行ったということ自体が、IntelがM1チップを比較する価値のある強力なライバルと認めたということを示しています」と述べ、モバイル向けプロセッサ性能の競争激化を予想しています。

また、テクノロジー関連のニューメディアThe Vergeは、「M1チップの最大の特長はファンレス動作することです。M1チップを搭載するMacはTiger Lakeを搭載するノートPCと比べて圧倒的に静かに動作します。また、M1チップはApple Siliconの第1世代に過ぎません」と述べ、Apple Siliconのさらなる性能向上に期待を示しています。

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in ハードウェア, Posted by log1o_hf

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