ゲーム

セガが1993年に発表した幻のVRヘッドセット「Sega VR」用に開発されたVRゲームが再現される

by Video Game History Foundation

近年では多くのVRヘッドセットやVRゲームが登場していますが、1990年代初頭にもVR製品の開発が盛んになった時期があり、セガも1993年にセガ・ジェネシス(海外版メガドライブ)の拡張機器として、「Sega VR」というVRヘッドセットを発表しました。結局、Sega VRは発売中止となりましたが、ゲームの歴史を保護するVideo Game History Foundation(VGHF)のチームが当時のソースコードを元にして、幻となったSega VR向けのVRゲームを「HTC Vive」上で再現しています。

Sega VR Revived: Emulating an Unreleased Genesis Accessory | Video Game History Foundation
https://gamehistory.org/segavr/

Lost “Sega VR” game unearthed, made playable on modern VR headsets | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2020/11/lost-sega-vr-game-unearthed-made-playable-on-modern-vr-headsets/

Sega's canceled VR project from the '90s gets revived by historians
https://mashable.com/article/sega-vr-headset-game-revived-nuclear-rush/

セガが1993年に発表したSega VRは、1993年のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で大々的に発表され、大きな注目を集めました。実際にCESで行われたプレゼンテーションの様子は、以下のムービーを見るとわかります。

Sega VR - YouTube


プレゼンターがSegaの「バーチャル・リアリティ」について熱を入れて語ります。


画面にデカデカと表示される「VR」の文字。


ヘッドマウントディスプレイを装着した男性が、興奮した様子でゲームをプレイしています。


手に持っているコントローラーは一般的なTVゲームのコントローラーを同じ形状をしており、ゲーム画面がVR空間に再現される仕組みのようです。


Sega VRのヘッドセットは高周波の慣性計測ユニットと2つの液晶画面を備えており、基本的な構造は現代のVRヘッドセットと類似していたとのこと。


当時としては画期的な製品であった一方で、価格はわずか200ドル(当時のレートで約2万2000円)に抑えられていました。


プレゼンテーションにはSega VRの実機も登場しており、観客が実際にVRヘッドセットを装着する一幕もありましたが、ゲームをプレイすることはありませんでした。


プレゼンテーションや想定価格の発表まで行われ、商品化が間近に迫っていたSega VRでしたが、セガが発売中止を決定したためにSega VRは幻のVRヘッドセットとなりました。なお、当時のセガは発売中止の理由について、「没入感が高くリアルすぎるため、使用中にプレイヤーが動き回ってケガをする可能性がある」と説明していましたが、実際には初期のテスターに頭痛・めまいといった症状が現れたとのフィードバックにより、発売が中止されたとみられています。

発売中止が決定する前からSega VR向けのゲーム開発が進められていたため、いくつかのSega VR向けゲームはどれも日の目を見ることがありませんでした。Sega VRについて調査を進めていたVGHFは、Sega VR向けゲームの一つである「Nuclear Rush」というタイトルを開発した企業・Futurescape Productionsの共同創業者であるケネス・ハーレー氏と連絡を取り、Sega VR向けに開発されたゲームに興味があることを伝えました。VGHFの連絡を受けたハーレー氏は、1994年8月6日に最終更新されたCD-ROMを発掘してVGHFに渡したとのこと。


26年前のCD-ROMには、C言語で構築されたNuclear Rushのソースコードをはじめとする、ゲームを構築するために必要なハードウェア以外の全てがそろっていたと、Nuclear Rushのコンパイルを行ったリッチ・ホワイトハウス氏は述べています。ホワイトハウス氏は、デバッグやバグ修正まで行い、さらにNuclear Rushのソースコードを元にして「Sega VRのエミュレーター」にも取り組みました。

ホワイトハウス氏は作業の中で、Sega VRのリフレッシュレートが30Hzであり、Nuclear Rushではフレームレートが15fpsだったことを発見。この制限により、発売中止の原因といわれる頭痛やめまいといった症状が引き起こされていた可能性があるとのこと。なお、VGHFがSega VR向けゲームの開発者らに話を聞いたところ、実機のSega VRを体験したことがないまま開発を行うケースも多かったそうです。

実際にホワイトハウス氏が、Sega VRのエミュレーターを使ってHTC Vive上でNuclear Rushをプレイする様子は、以下のムービーから見ることができます。

Unreleased Sega VR Headset Emulated On HTC Vive! - YouTube


画面右下に映っているのがホワイトハウス氏で、中央には左目、右目それぞれのディスプレイに映し出されているNuclear Rushのタイトル画面が表示されています。


ホワイトハウス氏がHTC Viveを装着。


ゲームがスタートすると、荒野を再現したステージが表示されます。


戦闘機らしきものが画面を横切る場面も。


Sega VRの制限として、頭を横に傾けても画面が傾くことはないという点が挙げられます。


一方、顔を上げて空を見たり……


地面を見下ろしたりする動きには、角度の制限はあるものの対応している模様。


また、顔を平行にして横に向ければ、360度の視覚を体験することができます。


人間の視覚を再現するためか、右目に映し出されるゲーム画面は微妙にずれているようです。


なお、Sega VRのエミュレーターとコンパイルされたNuclear Rushのビルドは、以下のGitHubページで公開されています。

Release DGenSDL-SegaVR 2020/11/01 · DickBlackshack/SegaVR-DGenSDL · GitHub
https://github.com/DickBlackshack/SegaVR-DGenSDL/releases/tag/1.0

Release Pre-built Nuclear Rush ROMs · DickBlackshack/SegaVR-NuclearRush · GitHub
https://github.com/DickBlackshack/SegaVR-NuclearRush/releases/tag/1.0

実際に海外メディアのArs TechnicaはVRヘッドセットのHP ReverbG2とWindows 10搭載のPCでエミュレーターおよびNuclear Rushのビルドを実行し、ゲームがプレイできることを確認したとのこと。復元されたゲームは現代人にとって「革命的なゲームプレイ体験」を得られるものではなかったものの、今回のプロジェクトは多くの人の協力によって実現されたと述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
仮想現実を実現すべく生み出されては散っていった3Dゲーム機&VRヘッドセット - GIGAZINE

VR空間にLinuxのデスクトップを表示して作業可能なオープンソースソフトウェア「Simula」 - GIGAZINE

解像度・性能が向上した単体でVRが楽しめるコスパ最強の「Oculus Quest 2」は初心者から上級者まで満足できるVRヘッドセット - GIGAZINE

3万円台&PC不要でVRゲームが遊び倒せるVRヘッドセット「Oculus Quest 2」フォトレビュー - GIGAZINE

約2万円で自作できてSteamVRにも完全対応のオープンソースVRヘッドセット「Relativty」 - GIGAZINE

in ソフトウェア,   ハードウェア,   動画,   ゲーム, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.