Nintendo Switchエミュレーターの「yuzu」がオンラインマルチプレイをサポートするも速攻で削除

Nintendo Switchエミュレーターの「yuzu」が新たにオンライン機能に対応し、「スーパーマリオメーカー2」と「スーパーマリオ オデッセイ」のオンラインマルチプレイを実現したと発表されました。しかし、この発表の直後に開発チームはオンライン機能を削除し、謝罪文を発表しました。

Online Support Removed - yuzu
https://yuzu-emu.org/entry/yuzu-x-raptor/

Nintendo Switch Emulator Adds Online Support, Quickly Regrets It
https://kotaku.com/nintendo-switch-emulator-adds-online-support-quickly-r-1845565068

[UPDATE] Nintendo Switch Emulator Yuzu Introduces Early Online Support
https://wccftech.com/nintendo-switch-emulator-yuzu-online-support/

「yuzu」は世界初のニンテンドー3DSエミュレーターであるCitraを手がけたチームが開発するPC向けのオープンソースなNintendo Switchエミュレーターです。2017年3月に発売されたNintendo Switchのエミュレーターは2020年11月時点では少数しか存在していませんが、その中でも「yuzu」は対応タイトル数が多いエミュレーターとして知られています。

yuzu - Nintendo Switch Emulator
https://yuzu-emu.org/

そんな「yuzu」は2020年11月3日にリリースされたベータ版で、Nintendo Switch Onlineの代わりにRaptor Networkというネットワークサービスを活用した独自のオンライン機能を実装し、「スーパーマリオメーカー2」と「スーパーマリオ オデッセイ」のオンラインマルチプレイを実現したと発表しました。

「スーパーマリオメーカー2」はオンライン機能によって世界中のプレイヤーが作成したオンラインコースを遊べるようになることから、特にオンライン機能が重要なタイトルの1つです。yuzuの開発チームは発表の中で、「自作コースの共有のほか、マルチプレイやフレンド機能にも対応しました。この機能によって、インターネットを通じて友だちを増やすことが可能です」と記していました。

しかし、この発表のわずか数時間後に、開発チームは「yuzu」のオンライン機能を削除したと発表。オンライン機能対応に関する発表を撤回し、謝罪文を掲載しました。

新たに掲載された謝罪文によると、「yuzu」のオンライン機能をリリースした際に、ファンやサポートコミュニティから「洞察に満ちたフィードバック」を受け取ったとのこと。開発チームはオンライン機能の実装時には興奮していたものの、問題のフィードバックを受け取ったことで、サポートコミュニティの懸念を理解し、今回の決断に至ったと記しています。

開発チームは「洞察に満ちたフィードバック」についての詳細を明記してはいませんが、ゲーム系ニュースサイトのkotakuは、「問題のフィードバックは、ゲームタイトルの違法ダウンロード問題や任天堂の権利侵害問題などのことでは」と推測。エミュレーターでゲームをプレイするためには、ゲームハードのBIOSやタイトルのROMイメージなどが必要です。これらを入手するためには自分の所有するハードやタイトルからBIOSやROMイメージを吸い出さなくてはなりませんが、多くのユーザーがインターネット上で頒布されたROMイメージなどを使うといった、著作権侵害に当たる方法を選んでいます。オンラインマルチプレイを実装すると、自分自身は著作権侵害していない場合でも、著作権侵害しているプレイヤーとマルチプレイしてしまうという懸念があるわけです。

こうした著作権侵害に関する懸念に加えて、kotakuは「yuzu」のオンラインマルチプレイ対応ベータが課金者限定のアーリーアクセス版として公開されたことから、任天堂がファンコミュニティが作成したゲームの削除を求める事例が多いことに触れて「yuzuがオンライン機能で料金を取ることで、任天堂を怒らせて訴訟に発展することを恐れたのでは」と指摘しています。