サイエンス

大きな再生可能エネルギーを生むと期待される「地熱」を得る方法はどんな進化を遂げているのか?


地球環境を守りながら人間社会に必要なエネルギーを得るための方法として、太陽光や風力のような再生可能エネルギーの研究はさらなる発展が望まれている分野の1つです。再生可能エネルギーの中でも、大きなエネルギー源として期待されている「地熱」のエネルギーを得るシステムの発展について、ニュースメディアのVoxがまとめています。

Geothermal energy is poised for a breakout - Vox
https://www.vox.com/energy-and-environment/2020/10/21/21515461/renewable-energy-geothermal-egs-ags-supercritical

地熱エネルギーとは、地球の約5000kmより深い地下にある、5000℃を超えるマグマが生み出す熱を活用することで得られるエネルギー。地熱エネルギーは再生可能エネルギーの一種とされており、アメリカのエネルギー高等研究計画局で地熱エネルギー開発を進めるプロジェクト・AltaRock Energyは「地球が持つ熱量のわずか0.1%で、人類が200万年間必要とする総エネルギーを供給することができる」と推定しています。

地熱は古くから人間に利用されてきたエネルギーで、地熱発電が登場する以前から、地熱によって温められ地表に湧き出た100℃前後の温水は料理や暖房のエネルギーとして利用されてきました。技術の発展により地熱エネルギーで電気を作ることも可能になりましたが、電気に変換するためには高温の水蒸気による熱量が必要。従来の地熱発電所では地熱によって生成された高温の水蒸気から水分を分離し、蒸気でタービンを動かすことで発電を行ってきました。


しかし、Voxの記者であるデビッド・ロバート氏は「従来の地熱発電にはいくつか問題があります」と指摘。ロバート氏は問題点として「高温の水蒸気を豊富に得られる地域に偏りがある」という点を挙げています。アイスランドやカリフォルニアのような地域は、巨大な噴気孔が地表にあるなど地熱地帯に恵まれていますが、エネルギーに利用できる熱源が地下深くにある地域や、地質の影響で地下から熱を引き出しにくい地域の方が多くを占めているとのこと。

ロバート氏は「少なくとも従来の技術では、地熱エネルギーにおいて優れた地域のほとんどが掘り尽くされてしまっています。特に水蒸気のような資源に依存した発電は、標準化やスケールアップが難しいのです。そのため、地熱エネルギー開発は他の再生可能エネルギーに遅れをとってきました」とコメントしています。


そのため、従来の発電方法とは異なる地熱エネルギー活用方法の発展が進められてきました。例えば、地熱を得にくい地域では高温岩体地熱発電(EGS)と呼ばれる地熱発電システムが注目されています。EGSは地下に高温の岩体が存在する箇所を水圧で掘削して空間を作り、送り込んだ水から蒸気や熱水を得るという方法。EGSを利用することで、アメリカでは1500万テラワットものエネルギーが得られる可能性があると見込まれています。

アメリカ合衆国エネルギー省は「住宅用および商業施設用に必要なアメリカの年間エネルギー消費量の合計1754テラワットと比較すると、EGSから得られるエネルギーは理論上、少なくとも8500年以上、アメリカのすべての家庭および商業施設を暖めるのに十分な量となります」と述べました。


また、ロバート氏は先進的な地熱発電システムとして、カナダのテクノロジー企業、Eavorが計画している「Eavor-Loop」と呼ばれるシステムを挙げています。Eavor-Loopは約2.5km離れた地点に埋めた垂直のパイプ2本を、水平に配列された横方向のパイプで接続して表面積を増やし、可能な限り多くの地熱を吸収するというシステム。

Eavor-Loopのパイプ内ではA→B→C→D→Eの方向に水が流れています。パイプは1つのループとなっており、温度の低いものが下に沈みやすい性質を利用して水が循環します。青で示された冷水は沈み、赤で示された温水は上昇するため、ポンプを必要とせずに自然に水を循環することができるというわけです。記事作成時点でEavor-Loopは150℃前後の熱を得ることが可能。


また、Eavor-Loopを発展させた「Eavor-Lite」のプロジェクトも進んでいます。Eavor-LiteはEavor-Loopを発展させたもので、どんな形状かは以下のムービーを見るとよくわかります。

Eavor Lite to James Joyce Animation - YouTube


Eavor-Liteは、Eavor-Loopのパイプを半分に折りたたんだような形状で……


横方向のパイプを四方に増やして表面積をさらに増やしたものとなっています。Eavor-Liteはカナダ国内で3~4箇所への設置が計画されており、2021年以降はドイツやフランス、日本でも設置が予定されているとのこと。


ロバート氏は、「クリーンエネルギー産業は成長を続けており、2020年以降の10年は、これまでよりも地熱発電の発展がさらに活発になるでしょう。完全に再生可能な電力を供給する世界のビジョンは、ますます手の届くところまで来ています」とコメントしています。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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