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GoogleとOracleが「APIの著作権」を巡って最高裁判所の口頭弁論で対決、Googleが不利との見方


Oracleは2010年に「GoogleがJava APIの著作権を侵害している」としてGoogleを訴え、88億ドル(約9500億円)もの損害賠償を求めて争っています。2016年に連邦巡回区控訴裁判所の審理でGoogleが勝訴したものの、2018年には控訴審でOracleが逆転勝訴。ついに最高裁判所での審理がスタートし、2020年10月7日に行われた口頭弁論では「Googleが不利」との見方が優勢だと海外メディアのArs Technicaが報じています。

Google’s Supreme Court faceoff with Oracle was a disaster for Google | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2020/10/googles-supreme-court-faceoff-with-oracle-was-a-disaster-for-google/

Ars TechnicaはAPIの著作権について、「Oracleが訴訟を起こすまでの数十年間、ソフトウェア業界のほとんどの人は、APIが著作権で保護されていないと考えていました」と指摘。この考えに基づいて、多くのソフトウェア企業は競合他社の製品と互換性を持たせるため、競合他社のAPIを自社の製品に再実装してきたとのこと。


2000年代半ば、GoogleはAndroidプラットフォーム用のアプリを作成するには多くの開発者が必要となることを認識していました。そこでGoogleは、アプリの開発プロセスをスピードアップするために、新しいプログラミング言語を最初から開発するのではなく、Javaの再実装を行うことにしたとArs Technicaは指摘。この際に使用したのが、Javaの開発元であるサン・マイクロシステムズのAPI。これに対して、Oracleはサン・マイクロシステムズを買収した後でGoogleに対する訴訟を起こしました。

もしOracleの主張が最高裁判所によって認められた場合、「APIは著作権の保護対象にならない」という前提に疑問が生じ、ソフトウェア互換性の問題がより日常的なものになるとArs Technicaは主張しています。なお、Googleを著作権侵害で訴えているOracleにも、AmazonのオンラインストレージサービスAmazon Simple Storage Service(Amazon S3)のコードを無断で使用した疑いがかかっています。

Googleを著作権侵害で訴えているOracleもAmazonのコードをパクっているという指摘 - GIGAZINE

by Eddie Awad

10月7日に行われた口頭弁論では、最高裁判所の裁判官たちが「APIは著作権保護の対象ではない」とするGoogleの主張に疑念を持っていることがうかがえたとArs Technicaは述べています。また、Googleの弁護人であるThomas Goldstein氏も、裁判官らに対してうまく説明できなかったそうです。

たとえばSamuel Alito裁判官は、「APIの著作権を保護することがプログラミングコード全体を危険にさらす」とするGoogleの主張について、詳しい説明をGoldstein氏に求めました。「おそらく、この質問や水曜日の議論全体を通したGoldstein氏の最も重要なタスクは、APIと他のコードの間に重要な違いがあり、この違いが法的な意味を持っていることを裁判官に納得させることでした」とArs Technicaは述べています。

日常的にAPIを扱っているプログラマーは一般的なコードとAPIの違いを直感的に理解できますが、50歳以上の裁判官たちにとってこの違いはわかりにくいものです。Goldstein氏はその点をわかりやすく説明することが期待されていましたが、ソフトウェア業界の事柄を明快に示すたとえ話などを用いず、抽象的な法的議論を繰り返すばかりだったとのこと。コーネル大学の法学者であるJames Grimmelmann氏は、「彼はひどい仕事をしました」とGoldstein氏の弁論を酷評しました。

Goldstein氏が説明を行った後に質問したBrett Kavanaugh裁判官は、「それが曲をコピーする唯一の方法だからといって、曲をコピーすることは許されていません。なぜその原則がここでは機能しないのですか?」と述べ、API特有の性質について納得していない姿勢を見せました。また、Clarence Thomas裁判官とNeil Gorsuch裁判官も、Googleの主張に懐疑的な立場を取ったとのこと。


一方、Googleの主張を認める裁判官もいたそうで、Stephen Breyer裁判官は「APIはQWERTY配列のキーボードのようなものです」と指摘。タイプライターが開発された当初はQWERTY配列が必須ではなかったものの、多くの人々がQWERTY配列に慣れてしまった現状では、それ以外の配列のキーボードを出しても売れません。この状態で誰かにQWERTY配列の著作権を持たせると、その人物はキーボード市場を支配する力を持ちます。

QWERTY配列の著作権が多くの人々を特定企業のキーボードに縛り付けるのと同様に、Java APIの著作権についても、Javaを学んだ多くのプログラマーをOracleライセンスのJava実装のみに縛り付けるだろうとBreyer裁判官は主張。Ars TechnicaはBreyer裁判官のたとえ話について、「Googleの弁護士よりもGoogleの立場を明確に表現する、優れた仕事をしました」と評しています。

また、Sonia Sotomayor裁判官は「一般的な実装コードは著作権保護の対象になるものの、APIの宣言部分は保護対象から外れるため、ソフトウェア業界は本当に必要なAPIのみをコピーして開発を行ってきた」とするGoogleの主張に理解を示しました。また、Elena Kagan裁判官もGoogleの立場に共感を示したそうですが、GoogleがOracleに勝利できるかどうかは微妙なところだとArs Technicaは指摘。

by Ryan Quick

なお、Googleの「APIは著作権保護の対象にはならない」とする主張は、すでに連邦巡回区控訴裁判所で争われた2014年の裁判で破棄されています。2016年の裁判では、Java APIの著作権が認められることを前提として、「GoogleによるJava APIの使用は『フェアユース』であり、著作権制限を受けるため権利を侵害しない」と主張したGoogleが勝訴。ところが、2018年の連邦控訴審判決では「本件のGoogleによるJava APIの利用はフェアユースにあたらない」とされ、Googleは再び「APIは著作権保護の対象になる」という主張を掲げて最高裁判所に上告し、今回の口頭弁論にもつれ込んでいました。

当事者のGoogleとOracleだけでなく、MicrosoftやMozillaなど複数の営利企業や、非営利団体のパブリック・ナレッジおよび電子フロンティア財団も注目する裁判の判決は、今後数カ月以内に下される予定となっています。

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in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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