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「テスラの完全自動運転は名ばかり」で80万円超の価値ナシとコンシューマー・レポートが評価


テスラの電気自動車の一部に実装されている完全自動運転機能(FSD)についてレビューしたアメリカの消費者団体Consumers Unionが、完全自動運転と呼ぶには多くの問題が残されていると指摘しました。

Tesla 'Full Self-Driving Capability' Review - Consumer Reports
https://www.consumerreports.org/autonomous-driving/tesla-full-self-driving-capability-review-falls-short-of-its-name/

Consumers Unionが発行する月刊誌コンシューマー・レポートは、FSDに対応した「Model 3(モデル3)」にソフトウェアアップデート「2020.24.6.4」をインストールした状態でテスト走行を実施。その結果、以前から問題が指摘されていた機能のAutoparkLane Changeサモンには改善が見られたものの、最新機能であるSmart Summon(スマートサモン)、Navigate on Autopilot(ナビゲート オン オートパイロット)、Traffic Light、Stop Sign Controlには多くの問題が発生したと報告しています。

コンシューマー・レポートで自動車テスト部門のシニアディレクターを務めるジェイク・フィッシャー氏は、「テスラのFSDはその名にそぐわないものです。ドライバーや他車などを危険にさらさないようにするために、細心の安全性能が求められるべきです」と述べています。

◆Autopark
Autoparkとは、縦列駐車などをボタン1つで行ってくれる自動駐車機能です。コンシューマー・レポートによると、いくつかのテストではAutoparkは宣伝どおりに機能しましたが、たびたび「駐車スペースを認識してくれない」という問題に出くわしたとのこと。この点についてコンシューマー・レポートは「ある車で駐車スペースを通りかかったときには認識したのに、別の車で同じ場所を通っても認識しないというのは一貫性に欠けています。似たような機能はほかのメーカーの車にもずっと前から搭載されており、それらでも同じ問題に悩まされることがあります」と報告しています。

by Eyton Z

また、コンシューマー・レポートの自動運転車テスト責任者であるケリー・ファンクハウザー氏は「駐車スペースに対して真っすぐに駐車してくれないことが多いので、車から降りた時に恥ずかしくなってしまうことがしばしばありました」と話しました。

◆Lane Change
Lane Changeは、高速道路などで車線をキープするのを支援するAutosteer機能を使用中にウィンカーを出すと、自動的に車線変更を行ってくれる機能です。コンシューマー・レポートは「この機能はテスラ固有のものではなく、簡単な機能なので、宣伝どおりに動作します。ドライバーはステアリング操作をせずに車線変更可能で、移動先に既に車がいる場合は無理に車線変更が行われることはありません」と述べて、特段の問題は見られなかったとしています。

ただし、フィッシャー氏は「車線変更の安全性は、最終的にはドライバーの責任です」と述べて、ドライバーによる安全確認は欠かせないことを強調しました。

◆サモン
サモンは、スマートフォンやモバイルキーを使ってリモート駐車を行える機能です。詳細は以下の記事を読むとよく分かります。

スマホでテスラ「モデルS」をリモート駐車できる新機能「サモン」が登場、実際に動く様子を見てきました - GIGAZINE


コンシューマー・レポートによると、サモンにも所定の駐車スペースからはみだしたり、斜めに駐車スペースに入ったりする問題があるとのこと。また、サモンが最も効果を発揮するのは「ドライバーが狭い駐車場に車を出し入れしなくて済むようにすることです」とコンシューマー・レポートは指摘していますが、モデル3のオーナーズマニュアルには「狭いスペースに駐車すると、障害物の位置を正確に検知するセンサーの機能が制限され、車体および周囲の物体に損傷を与えるリスクが高まります」と記載されています。

これについてファンクハウザー氏は、「残念ながら、テスラはサモンの最適なユースケースを提示していません。もし狭いスペースに駐車するための機能ではないとしたら、このシステムが一体何を目的としているのか分かりません」と話しています。

◆スマートサモン
リモートで駐車するサモンとは異なり、駐車場内にいる自分のところまで車が自動で迎えに来てくれる機能がスマートサモンです。実際に、コンシューマー・レポートが自社の駐車場でスマートサモンを使用したところ、車は必要以上に複雑なルートをたどろうとしたり、坂道で立ち往生したり、全く反応しなかったりと、多くの問題を起こしたそうです。無事にドライバーの元にたどり着いた場合でも、駐車場内の反対車線を走ったり、一時停止を無視したり、大回りで曲がりすぎて駐車中の車にぶつかりそうになってからバックして切り返したりと、かなり危険な一幕もありました。

こうした点からコンシューマー・レポートは「スマートサモンはすべての障害物を検知できない可能性があるため、ドライバーは車とその周囲を常に監視し、目線の範囲内で使わなければなりません」と指摘。また、ファンクハウザー氏は「この一貫性のない動作を目撃したドライバーは、2度とスマートサモンを使わないと思います」とコメントしました。


◆ナビゲート オン オートパイロット
ナビゲート オン オートパイロットとは、高速道路などで車線変更を提案したり、トラックなど速度の遅い車の後ろにとどまらないように調節することで目的地までのルートを最適化する機能です。

しかし、コンシューマー・レポートが実際にナビゲート オン オートパイロットを使用したところ、高速道路の出口を完全に無視してルートを外れた揚げ句、1人しか車に乗っていないのに規定人数以上が乗っている車しか走行できないHOVレーンを走ってしまったとのこと。他にも、延々と追い越し車線を走ったり、交通量が多いエリアでシステムが突然解除されてドライバーを困惑させたりといったトラブルにも見舞われました。

フィッシャー氏は、「この機能には、Lane Changeの確認や警告をオフにする設定項目がありますが、これは危険そのものとは言わないまでもかなり心配です。高速道路を走行中に、ドライバーが予期せぬ危険な車線変更に驚いてしまうおそれがあるからです」と指摘しました。


◆Traffic LightとStop Sign Control
「Traffic Light」と「Stop Sign」はそれぞれ「信号機」と「一時停止標識」を認識して自動車を減速させたり停止させたりする機能です。しかし、コンシューマー・レポートがこれらの機能を有効にして走行したところ、青信号で停止してしまったとのこと。青信号でも止まらずに走れたのは、先行車がいた場合か、機能を無効化した場合のみでした。

ほかにも、停止線を認識できずに停止線のかなり前で止まってしまったり、逆に交差点に突っ込みそうになったりするケースもあったそうです。また、ラウンドアバウト式の交差点にも対応できず、本来ならそのまま通過すべき場所でいちいち停止してしまったそうです。

こうしたレビュー結果から、コンシューマー・レポートは「テスラはFSDの機能を改善すると述べていましたが、現時点のFSDオプションは8000ドル(約85万円)という高額な値段に見合う価値はありません」と結論付けました。

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in ソフトウェア,   乗り物, Posted by log1l_ks

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