中国政府が第14次五カ年計画で国内のチップ産業を全面支援しアメリカの規制に対抗

by Craig Nagy

中国は五年ごとに達成するべき目標や手法などの経済戦略である「五カ年計画」を策定しており、第14次五カ年計画(2021年～2025年)を策定するための会議が2020年10月に開催されます。Bloombergによると、中国は第14次五カ年計画において「国内の半導体産業」を発展させることに注力し、アメリカの規制に対抗する予定だとのことです。

China Said to Plan Broad Chip Sector Support to Fight Trump - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-09-03/china-is-said-to-plan-broad-chip-sector-support-to-counter-trump

近年、アメリカは中国企業に対する規制を強めており、2020年6月には大手通信機器メーカーのHuaweiやスマートフォンメーカーのZTEを国家安全保障上の脅威に指定。さらに8月には、Huaweiがアメリカ製テクノロジーにアクセスすることを防ぐため、アメリカ合衆国商務省が38のHuawei関連企業を輸出禁止対象企業に追加しました。

アメリカによるHuaweiおよび関連企業への輸出管理がさらに強化、新たに38の関連企業をリストに追加 - GIGAZINE

アメリカによる輸出規制は中国のテクノロジー産業に大きなダメージを与えており、すでにHuaweiはアメリカによる制裁の影響を受けて、5Gに対応した最新のハイエンドチップセット「Kirin 9000」の生産停止を余儀なくされています。

Huaweiがアメリカの制裁でハイエンドKirinチップの生産中止を余儀なくされる - GIGAZINE

中国は年間3000億ドル(約31兆9000億円)もの半導体を輸入しており、この半導体技術はアメリカ製のチップ設計ツールおよび特許、そしてアメリカの同盟国が持つ製造技術に依存しています。しかし、アメリカと中国の関係が悪化するにつれて、中国のハイテク産業を支える半導体の輸入が難しくなっています。

Bloombergは、中国政府の動きに詳しい匿名希望の人物が伝えた情報として、「中国政府は第14次五カ年計画において、いわゆる第3世代半導体産業への幅広い支援を準備している」と報じました。中国の習近平国家主席は、2025年までにワイヤレスネットワークから人工知能に至るまで、さまざまなテクノロジーに対して推定1兆4000億ドル(約150兆円)もの投資を行うと約束しています。

リサーチ企業のGavekal Dragonomicsでテクノロジーアナリストを務めるDan Wang氏は、「中国の指導者層は半導体が全ての高度な技術を支えていること、そしてもはやアメリカの供給に依存できないことを認識しています」と指摘。アメリカの厳しい規制に直面したため、中国は自国内の半導体産業を発展させる方針になったのだろうと考えています。中国政府が半導体産業に投資するとの報道を受けて、香港証券取引所や中国本土の取引所では半導体企業の株価が上昇しました。

中国が注目する第3世代半導体とは、主に炭化ケイ素や窒化ガリウムなどの材料で作られたチップセットであり、高温および高周波での動作に優れていることに加え、高電圧動作の耐性も高いとのこと。そのため、5G通信用のチップや軍用レーダー、電気自動車など幅広い用途に使用できるとされています。

すでにアメリカのCREEや日本の住友電気工業などが第3世代半導体の開発に乗り出しているそうですが、記事作成時点では第3世代半導体の技術を独占している国はありません。そこで中国は国を挙げて第3世代半導体の研究を加速し、競争に勝とうとしているとBloombergは指摘。福建省に拠点を置く投資ファンドのAn Xin Capitalの運営パートナーであるAlan Zhou氏は、「これは爆発的な成長を遂げようとしているセクターです」と述べ、需要と投資の増加によって中国がチップ産業をリードする可能性もあると主張しました。