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風力発電機のタービンに「色を塗る」だけで鳥の事故死率が70%下がる


風力発電は二酸化炭素や窒素酸化物を出さないクリーンな発電方法として世界でも注目が高まっています。しかし、風の流れに向かって巨大構造の建築物を設置するため、鳥がタービンに衝突して命を落とすという痛ましいケースも報告されています。その対策として、タービンの羽根(ブレード)に色を塗ることで鳥の衝突を避けることができると、ノルウェー国立自然研究所の研究チームが発表しました。

Paint it black: Efficacy of increased wind turbine rotor blade visibility to reduce avian fatalities - May - - Ecology and Evolution - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ece3.6592

Bird deaths down 70 percent after painting wind turbine blades | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2020/08/black-paint-on-wind-turbines-helps-prevent-bird-massacres/

再生可能エネルギーへの注目が高まるとともに、風力発電の利用が急速に拡大しています。しかし、一部の政治家は「鳥やコウモリなどが風力発電機のタービンに激突する事故が発生し、地元の個体数に影響を与える」という理由で風力発電に反対しています。例えばドナルド・トランプ大統領は風力発電のタービンを「鳥の墓地」と呼んだことがあります。

アメリカ魚類野生生物局の推定によると、2015年には約30万羽の鳥が風力発電機のタービンと衝突して死んでいるとのこと。そして、タービンによる鳥の死亡数は、ゆっくり動く大型のタービンが増加するにつれて、減少傾向にあるそうです。


これまでの研究では、鳥は飛行中に障害物を見るのがそれほど得意ではない可能性が示唆されていました。そこで、風力発電機のタービンに色を塗り、風力発電機の存在を視覚的にアピールすることで、鳥が風力発電機を認識する確率を高めるというのが今回のアイデアです。

ノルウェーのスメラ市には合計68基の風力発電機が設置されており、ノルウェー国内の風力発電量の半分以上となる150メガワットを発電しています。その中で長さ40メートルのタービンブレード3枚を持つ、高さ70メートルの4基の風力発電機を定期的に点検した結果、2006年から2013年の間にオジロワシ6羽を含む18羽の鳥が命を落としていたことが判明。また、タービン部分だけではなく、支柱であるタワー部分に衝突して死んだ鳥も見つかったとのこと。


そこで、ノルウェー国立自然研究所の研究チームが3枚のブレードのうち1枚を黒く塗り、3年間の追跡調査を行ったところ、タービンとの衝突による鳥の死亡数は6羽にまで減ったとのこと。対照群となる別の風力発電機4基では18羽の死亡が確認されたことから、研究チームは「タービンのブレードを黒く塗ることで、衝突による鳥の死亡率が71.9%減少した」と報告しています。

また、鳥の死亡率には季節による変動が見られ、春と秋は鳥の死亡数が少なかったものの、夏には増加する傾向がみられることが判明しました。ただし、研究チームは、研究対象となった風力発電機の数が少ないことと、調査期間が比較的短期間だったことに言及し、スメラ市以外の場所でより長期的な研究を行う価値があると述べています。

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in ハードウェア, Posted by log1i_yk

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