レバノンの大爆発で作られたクレーターや被害のすさまじさがわかる比較画像やムービーが公開中

レバノンの首都・ベイルートで現地時間2020年8月4日に発生した爆発事故は、保健省の発表によると死者135人、負傷者5000人以上という大きな被害が出ています。現地を撮影した写真やドローンによる空撮映像で、爆発事故の発生地点に大きなクレーターが誕生していることが捉えられています。

Negligence probed in deadly Beirut blast amid public anger
https://apnews.com/4475998de078a93bbe91b7ac9d43ada2

爆発の発生地点とみられるベイルート港の倉庫には推計2750トンの硝酸アンモニウムが2014年から保管されており、溶接作業の火花が引火して大爆発につながったと考えられています。硝酸アンモニウムは肥料の窒素源として重要な一方、火薬や爆薬の原料にもなる物質で、581人が死亡したテキサスシティ大災害や168人が死亡したオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件でも、硝酸アンモニウムやそれを原料とする爆薬が爆発を引き起こしました。


現場となったベイルート港の衛星画像を、爆発事故の発生前と発生後で比較した画像がこれ。周囲一帯の建物が爆風で吹き飛んでいるだけでなく、倉庫があった地面もえぐれて海が見えています。CNNの分析によると、爆発によって跡地にできたクレーターは直径約124mとのこと。

爆発後のベイルートを上空から撮影した様子は、以下のムービーを見ると確認できます。

Utter devastation after huge explosion in Beirut - YouTube


映像は、市街地から爆発地点に向かってドローンで撮影したとみられる空撮からスタート。

倉庫があった付近を捉えた映像がこれ。赤枠で囲った部分に爆発現場となった倉庫がありましたが、今では倉庫の影は跡形もなく消え去り、地面が不自然にえぐれて海と化していました。

ベイルートの中心街に近い建物にも、屋根に穴が空くなど、上空から見てわかるほどの被害が出ています。なお、今回の爆発ではレバノンに逃亡した日産自動車の元会長であるカルロス・ゴーン容疑者の住宅も被害を受けたと報じられています。

レバノンの経済状態は長らく不安定な状態であり、2020年3月には初のデフォルト(債務不履行)に陥ったほか、新型コロナウイルスのパンデミックも相まって政府への不満が高まっていました。そんな中で発生した大規模な爆発は人々の政府に対する不満をさらに強めており、食料安全保障も問題視されています。

アメリカ国防総省の高官と諜報機関のメンバーはAP通信に対し、爆発が人為的な攻撃によって引き起こされたという兆候はなく、おそらく爆発物の不適切な保管が原因だったと述べました。今回の爆発を引き起こしたとされる2750トンもの硝酸アンモニウムは、2013年に貨物船から押収されて以来、ベイルート港の倉庫に保管されたままだったとのこと。

関税局長であるBadri Daher氏はTV局の取材に対し、「港に保管された硝酸アンモニウムは危険であり、従業員の安全に影響を与えるおそれがある」と司法当局に訴える書簡を2014年から5、6通ほど送付していたと回答。書簡の中では、硝酸アンモニウムを爆発物を取り扱う国内企業に売却することが提案されていたそうです。しかし、Daher氏は当局に危険を警告することが義務であるものの、それ以上のことを実行できる技術的な専門家ではないと述べました。政府は原因究明のため、港湾管理の関係者を自宅軟禁とするよう命じています。

爆発現場の近くには穀物を保管するサイロもあり、ここにはレバノンにある穀物のうち85％が保管されていたと推定されています。しかし、爆発によってサイロは引き裂かれてしまったとのことで、Raoul Nehme経済貿易大臣はサイロの中に保管されていた小麦は全て汚染されてしまったことを認めました。しかし、Nehme大臣はレバノン国内の穀物がすぐに尽きることはなく、足りなくなった場合は輸入を行うと主張しました。

ベイルートのマルワン・アブド知事によると、爆発による損失額は100億ドル(約1兆500億円)～150億ドル(約1兆5800億円)に上ると推定され、30万人近くの人々が家を失ったとTV局の取材に対し答えています。レバノン政府は公立学校やいくつかのホテルが家を失った人々の宿泊場所にしたほか、犠牲者への補償をすると約束したとのことです。