サイエンス

「ストーンヘンジの巨石は一体どこから運ばれて来たのか?」という長年の謎が解明される


ストーンヘンジはイギリス南部のソールズベリー近郊に位置する古代遺跡であり、巨大な石が直立して環状に並ぶ様子は古くから多くの人々を引きつけてきました。イギリスの研究チームがストーンヘンジの巨石について科学的な分析を行った結果、「ストーンヘンジの巨石は一体どこから運ばれてきたのか?」という長年の謎が解明されたとのことです。

Origins of the sarsen megaliths at Stonehenge | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/6/31/eabc0133

Stonehenge: how we revealed the original source of the biggest stones
https://theconversation.com/stonehenge-how-we-revealed-the-original-source-of-the-biggest-stones-143564


We Finally Know Where The Megaliths of Stonehenge Really Came From
https://www.sciencealert.com/scientists-finally-crack-the-mystery-of-the-origins-of-stonehenge-s-boulders

先史時代の人々によって作られたストーンヘンジは年間100万人もの観光客が訪れる人気の観光スポットであり、数百年前からさまざまな学者によって研究されてきました。ところが、依然としてストーンヘンジには謎が多いそうで、「ストーンヘンジに使われた巨大な石はどこから運ばれてきたのか?」という謎も、4世紀にわたって未解明のままだったとのこと。


ストーンヘンジに使われている石は単一のものではなく、主に2種類の石が使われていることがわかっています。そのうちの1つが砂岩である「サルセン石」、そしてもう1つが火成岩と砂岩からなる「ブルーストーン」です。

ストーンヘンジの内側に馬蹄形で配置されたブルーストーンについては、ストーンヘンジから北西におよそ290kmほど離れたプレセリ・ヒルズで採石されたらしいことが、過去の研究から判明しています。その一方で、直立して組み合わされた姿でストーンヘンジの象徴ともいえるサルセン石は、どこから運ばれてきたものか判明していませんでした。

記事作成時点で確認できるサルセン石の構造は紀元前2500年ごろに建てられたといわれており、直立した2個の巨石で1個の巨石を支える高さ7mほどの構造が5組、その周囲に直径約100mの円形に高さ4m~5mの巨石が直立しています。夏至の朝にはストーンヘンジの入り口にあたるヒール・ストーンから太陽が昇り、中心の祭壇石に光りが届くことから、設計者は天文学の知識を有していたと考えられているとのこと。


一般的にストーンヘンジのサルセン石は、ストーンヘンジから北に約30kmほど離れたマールボロ丘陵から運ばれてきたものと考えられています。しかし、マールボロ丘陵はかなり範囲が広いため、先史時代の人々がどのようにサルセン石を利用したのかを知るためには、より精度の高い産出地の特定が必要でした。

ブライトン大学ボーンマス大学レディング大学ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者を含む学際的な研究チームは、ストーンヘンジに使われたサルセン石の出所を調べるために、従来とは違う地球化学的なアプローチを用いました。

研究チームは現存している全てのサルセン石について、ポータブル蛍光X線分光法(PXRF)と呼ばれる非破壊的な方法で分析を行いました。この調査にはストーンヘンジのすぐそばまで近寄る必要があったため、研究チームはストーンヘンジが閉鎖された夜間と早朝にシフトを組み、巨大な石にはしごをかけて調査したとのこと。


PXRF分析の結果、ストーンヘンジのサルセン石はたった2個を除き、ほとんどの石が共通の化学的特徴を持っていたことが判明。この結果は、ストーンヘンジに使われたサルセン石がバラバラに運ばれてきたのではなく、単一の場所から運ばれてきたことを示唆します。

また、研究チームは1958年に行われたストーンヘンジの修復作業中に行方不明となり、2018年に返還された「サルセン石内部の亀裂から取り出された破片」についても誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)と呼ばれる手法で分析しました。

そしてストーンヘンジのサルセン石で見られた化学的特徴を、サルセン石が採石可能な20カ所の候補地で採取されたサンプルの化学的特徴と照合したところ、一致するのはマールボロの南西にあるウェスト・ウッズだけだったとのこと。この結果から、研究チームはストーンヘンジのサルセン石は、ほとんどがウェスト・ウッズから運ばれてきたものだと結論付けました。

今回の研究結果は、人々が巨石を運んだルートやその方法といった考古学的な疑問の解明に役立つ可能性があると、論文の筆頭著者であるデヴィッド・ナッシュ氏は指摘。ブルーストーンがより遠く離れた場所から運ばれてきたことや、最大で30トンにもなる巨石を運ぶ困難さについて触れたナッシュ氏は、「ストーンヘンジの建設には多大な努力が必要だったでしょう」「そこには非常に組織化された社会があったと考えられます」と述べています。

by Andy Powell

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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