サイエンス

日本も参加する国際熱核融合実験炉(ITER)がついに建造開始


2020年7月28日に、日本を含む世界35カ国が開発に参加している国際熱核融合実験炉(ITER)の組み立て開始を記念する式典が、建設地であるフランスで開催されました。太陽の中心部より10倍も高温なプラズマで発電する核融合の実験炉は、2025年までに運転が開始される予定とのことです。

Solar power with a difference as ITER nuclear fusion assembly starts - Reuters
https://www.reuters.com/article/us-nuclear-iter/solar-power-with-a-difference-as-iter-nuclear-fusion-assembly-starts-idUSKCN24T1R3

Assembly begins on ITER, a massive scientific project that seeks to replicate the sun's fusion power here on Earth - CBS News
https://www.cbsnews.com/news/iter-assembly-begins-nuclear-fusion-sun/

ITERは、南フランスのカダラッシュでの建設が予定されている国際的な実験施設です。ITER建設プロジェクトには、日本をはじめEU各国やアメリカ、ロシア、中国、韓国、インドなど合計35カ国が参加し、太陽と同じ核融合反応による発電の実現に向けて取り組んでいます。

世界初となる商業規模の核融合炉が2025年に稼働を始める予定、日本を含む35カ国が協力 - GIGAZ

by IAEA Imagebank

以下のムービーを見ると、ITERがどんなプロジェクトなのかが一発で分かります。

ITER NOW 1.1: The Way of the Sun - YouTube


ITERには、35カ国から参加する3万人以上の人々が携わっています。


そのエネルギー源は、太陽と同じ核融合反応です。


優れた環境性と高い安全性を有し、無尽蔵な燃料資源により半永久的にエネルギーを生産することができる核融合は、「究極のエネルギー」として期待を集めています。


しかし、その実現には高い技術力が求められるため、ラテン語で「道」を意味するITERの道のりは険しいものになると予想されます。


そのため日本、アメリカ、EU、インド、韓国、中国、ロシアから成る7極の協調が欠かせません。


「世界がエネルギーを必要としていることは、疑いの余地がありません」と、ITERの広報担当者を務めるLaban Coblentz氏。


Coblentz氏によると、核融合炉は燃料供給が途絶えると同時に反応が停止するため、核分裂発電とは違ってメルトダウンの心配が一切ないそうです。


そのITERの心臓部となるのが、今回建造がスタートした巨大なトカマク型核融合炉です。


以下の映像は、7月28日にライブ配信された、核融合炉の組み立て開始を記念する式典の模様を収めた映像です。

ITER Live : Start of Machine Assembly - YouTube


フランス・カダラッシュにあるITERの全景はこんな感じ。中心にあるひときわ大きな建物で、ITERの心臓部である核融合炉の組み立てがスタートしました。


建屋を間近で見ると、核融合炉がいかに巨大かが実感できます。


核融合炉の組み立て開始を記念する式典は、建屋の中にある「組み立てライン」と呼ばれる場所で開催されました。


パリからの中継によりスピーチを行ったフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「ITERは間違いなく未来に向けて胸を張れる行いです」と述べて、ITERへの期待感を示しました。


また、日本から配信されたメッセージ映像には、萩生田光一文部科学大臣が出席し、「新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりの中にあっても、強固な国際的連帯により引き続き本計画が力強く進展していくよう祈念いたします」という安倍晋三総理大臣の祝辞を読み上げました。


ITERの心臓部である核融合炉は、約4年半にわたる組み立てを経て2025年12月に完成し、記念すべき初稼働である「ファーストプラズマ」の火が入る予定です。その後、さらに10年近くをかけて試験を重ね、2035年までに完全な出力で稼働し、核融合の実用化に向けた実証実験が行われるとのことです。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by log1l_ks

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