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新型コロナウイルスの影響でどれほど大気汚染が減少したのか一目でわかる「大気汚染マップ」を欧州宇宙機関が公開


2020年に世界中で流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、中国イタリアインドなど世界各地で大気汚染が減少していることが判明しています。そんな中、欧州宇宙機関(ESA)が2017年に打ち上げた地球観測衛星「Sentinel-5P」の観測データを基にして、大気汚染の指標として利用されている二酸化窒素の濃度をチェックできる「大気汚染マップ」を公開しました。

Copernicus Sentinel-5P Mapping Portal
https://maps.s5p-pal.com/

ESA - Global air pollution maps now available
http://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2020/06/Global_air_pollution_maps_now_available

Map uses satellite data to show global air pollution levels - ABC News
https://abcnews.go.com/International/wireStory/map-satellite-data-show-global-air-pollution-levels-71195510


Sentinel-5Pは、欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会(EC)が環境問題に関する政策立案に用いるデータ収集などを目的に、地球観測プロジェクト「コペルニクス計画」の一環として打ち上げられた地球観測衛星の1つです。コペルニクス計画で収集されたデータは農業経営や災害対応、気候変動の予測などに役立てられますが、Sentinel-5Pは特に大気組成やオゾン層の状態、大気汚染などの監視を目的としています。

Sentinel-5Pが観測対象としている物質の1つに、発電所や車両、産業施設などで化石燃料を燃焼させた際に放出される二酸化窒素があります。二酸化窒素の排出量は人類の産業活動に大きく左右されることから、COVID-19のパンデミックによって人の移動や産業活動が減少した影響で、世界各地で排出量が減少していることが報告されています。ESAは大気中の二酸化窒素濃度をSentinel-5Pで継続的に監視しており、その結果をマップにして2020年6月11日(木)に公開しました。

実際に公開されているマップを開くと、大気中の二酸化窒素濃度が赤色の濃淡で表された地図が表示されます。大気中の二酸化窒素量は短期的な天候の変動によって増減するため、ESAは直近2週間のデータの平均を使用することにより、できるだけ変動を抑えたマップを作成しているとのこと。


マップは左上のボタンを操作して拡大・縮小することが可能であり、マップ上でカーソルをドラッグすることにより移動することが可能です。ヨーロッパ北部を見るとイギリスやドイツ、ベルギー、パリ周辺では二酸化窒素濃度が高いことがわかります。


マップの範囲を全世界に広げると、中国や日本周辺の二酸化窒素量が特に多いことがうかがえます。試しに拡大してみると……


中国の沿岸部や韓国、日本の都市部ではかなり赤色が濃くなっていました。


日本では東京・名古屋・大阪といった大都市圏を中心に、瀬戸内海の周辺や九州北部で二酸化窒素濃度が高いことがわかります。


アメリカに目を向けると、西海岸のロサンゼルス周辺やカナダと接する五大湖周辺、東海岸のニューヨーク付近で二酸化窒素の排出量が多い模様。


アフリカでは特に南アフリカのヨハネスブルグ周辺で二酸化窒素排出量が多いことが目に付きます。


マップの下部に表示されている日付の両脇にある矢印ボタンをクリックすることで、データが収集された期間を変更することができます。


試しに、世界中にCOVID-19が広がる以前の2019年12月2日~16日の二酸化窒素量を表示してみました。


日本や中国の二酸化窒素量はこんな感じ。


2020年5月28日~6月11日のデータと比較してみると、二酸化窒素排出量が大幅に減少していることが一目瞭然です。


範囲をヨーロッパにして比較すると……


やはり全体的に二酸化窒素の排出量が激減している模様。


アメリカでも……


同様の変化が見られました。


今回公開されたマップは2018年4月30日~5月14日のデータまでさかのぼることが可能で、COVID-19のパンデミック以前と大気汚染の程度を比較するだけでなく、季節的な大気汚染の変動についても視覚的に調査できるものとなっていました。

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in レビュー,   ネットサービス,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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